第17回 お店の前を走る自転車に目を向けよう
移動手段としての自転車
日頃から街中で見かけることが多い自転車ですが、どのような特徴があるのでしょうか。まずは当然の事ながら移動距離が歩行者に較べると長く、1km以上の距離を走る利用者が8割を超えます(平成27年国土交通省全国都市交通特性調査)このことから自転車はかなり広い範囲から集まってくることが想像出来ます。また電動アシスト自転車やスポーツタイプの自転車販売は好調で、健康増進や環境保全等の意識の高まりもあり自転車の利用は多様化する傾向にあります。今回は自転車で来店するお客様のお店の使い方について考えてゆきましょう。
地域や場所によって大きく変わる、歩行者に占める自転車の割合
実は自転車の割合は地域や場所によって大きく変わります。
その要因としてあげられるのは以下の要因です。
①住んでいる場所から駅、学校までの距離が徒歩では遠い。
②バス等の交通機関がない、又は本数が少なかったり、需要に対し供給が追いついていない(混雑で乗れない等)などの場合、自転車は最適な交通手段になります。更に地形的に見て高低差による坂道の少ない地域では自転車の利用度が高く、走行距離がより長くなる傾向にあります。また単に最短距離の駅を目指すのでは無く、目的地により早く到着する急行、特急電車の停車駅やゆっくり座って通える始発駅等、利用者の意図によっても目指す駅が変わる事があります。
※自転車の計測方法:お店の前を通過する歩行者数を調べる時、一緒に自転車の通過台数も計測します。そしてトータルの歩行者に対して自転車の比率が何パーセントあるかを算出します。自転車比率が50パーセントを超えるような立地の場合は自転車比率が高い、と言って良いでしょう。
どんな場所でも自転車比率が高ければ注意が必要なのか?
その自転車がどこ(住宅)から来てどこ(駅、職場等)と結ばれているのか?そして自分のお店はその流れの中でどこに位置するのか?によってお店の使われ方は大きく異なります。
以下の3つのパターンからお店の使われ方を確認してゆきましょう。
図表①駅に近い場合
自転車客の来店はあまり見込めず駅に近いお店の場合、当然の事ながら様々な場所から歩行者が集まってきます。お店の最寄り商圏からの歩行者が中心であれば問題無く売れるお店になるでしょう。
ただし、自転車比率が高い場合はその自転車がどこから来ているか?をしっかりとリサーチする事が大事です。
殆どの自転車が1km以上離れた場所から来ているのであればその住宅地の最寄りにはコンビニエンスストアがあると思って良いでしょう。その場合、自転車客の来店はあまり見込めない事が予想されます。
図表②中間(通過性が非常に高い)
住んでいる場所と駅の中間地点あたりにあるお店は自転車比率に最も注意が必要な立地です。
特に最寄りに住宅が少ないのに不釣り合いな程自転車の通行が多い場合は、そのお店の最寄りには住んでおらず、遠方の商圏からの自転車である可能性が高いです。
その場合、このような立地のお店に立ち寄り買物をするシーンはあまり考えられません。もし、あなたが冬の寒い日に家まで10分以上かかるような遠方のお店でお弁当を温めて貰いますか?きっと再び自転車に乗って帰宅した時にはお弁当はすっかり冷めてしまっているでしょう。
このような場所でお店が成り立つ為には、ターゲットとなる商圏、つまり自転車で通過する方達が住んでいる商圏の入口までの間に競合店がない事、そして今後も出店の可能性が無いことをきちんと確認出来ていればコンビニエンスストアの希少性から来店が見込めるでしょう。
図表③発生地点に近い
図表②の場所で立ち寄らなかった自転車客も、この場所では普通の歩行者と同様に来店してくれます。なぜなら自転車客にとって近くて便利な場所だからです。
つまり出店すべきポイントとなる場所は、このようなターゲット商圏の出入口に位置する場所です。
歩行者数が売上と直接の相関が無い理由
図①~③のお店では売上が全く変わることを説明しました。言い方を変えると、全く同じ自転車の台数が通過していてもお店の売上が全く変わるということです。つまり自転車数の多さは売上と直接の相関がありません。
これは歩行者数や自動車の通過台数にも同じ事が言えます。この連載で何度もお話している通り、単なる数値基準による出店可否の判断では無く、ターゲットを明確にした仮説に基づく出店戦略が何よりも大事なのです。
その他、自転車にまつわる注意事項
ここまで自転車が来店客になり得るか?という視点でお話してきましたが、別の視点から見た自転車の注意点についてお話しします。
①来店客用自転車置き場の設置
自転車で来店して頂く為には使いやすい自転車置き場が必要です。駐車場がある場合は特に車の導線と自転車の導線が交わらないように注意し、安全で使いやすい駐輪場を設置しましょう。
②違法駐車による「障害物化」に注意
駅近くで歩道上に自転車が駐められる場所があると、ズラッと違法駐輪の自転車が並んでいる場所があります。このような場所にお店ができると自転車が歩行者とお店を分断する植樹帯と同じような役目を果たしてしまい、歩行者のお客様の来店を妨げる例があるので違法駐輪対策に気をつけましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?