第9回 ロードサイドの競合店の影響度を計測する
来店客の重複を知る為の車の共通比率
自店と競合店との商圏の重なりは、来店客が周辺に住む人や働く人が中心のお店であれば電子地図システムや統計データ、住宅地図等を使って商圏の重なる部分の世帯数や人口、就業者数等を調べる事で算出が可能ですが、車客が中心の場合は調べる事が不可能です。
その代わりに『お店の前を通る車のうち、何%が競合店に向かうか?』『お店の前を通る車のうち、何%が競合店から来るか?』を車の走り方から調べれば競合店との車客の重なりがわかります。
しかしお店の前を通る車の1台1台の軌跡を辿ることは、競合店までの途中の交差点で流れが逐一変わっていくため現実的ではありません。
そこで車の流れが変わる場所である交差点毎に車の流れの変化を調べる事で自店と競合店の車の共通比率がわかります。この交差点毎の共通比率を積算し『累積共通比率』を算出する事で自店と競合店の車客の重なりが見えてきます。今月の内容は少し難解なので、計測方法を覚えていただく事よりも、このように論理的に証明する方法があるということをこの場でまずご理解いただければ幸いです。
計測方法のポイント
正確な調査には厳密なルールがありますが、ここでは考え方を理解していただく為に簡略化した方法での計測方法をご紹介します。
調査時に大事な点は二つあります。一つ目は必ず自店から出発し、交差点で自店側に立って計測すること。二つ目は5分とか10分という決められた時間では無く、目の前の信号が青になったら計測スタートし、赤が終わるまでを1セットとし3セット程計測します。その結果交差点毎に計測した台数のムラが生じることがありますが『比率』を出す為の計測なので共通・非共通の台数の合計が概ね30台以上あれば交差点毎の台数の多少は問題にはなりません。この二つを守らないと計測方法を誤ったり、正しい共通比率の算出ができません。
それでは自店と競合店の位置関係の違いによる計測方法についてご説明します。
①1本道の場合
自店と競合店との間に計測する交差点がひとつも無いため『お店の前を通る車のうち』競合Aに向かう車は100%、『お店の前を通る車のうち』競合Bから来る車も100%です。すべての車が共通しています。この考え方がベースになります。
②先にある競合店の場合
自店の先に競合Aがある場合、お店から歩いて交差点に向かい『自店を背にして交差点の手前に立ちます』その位置で自分の横を通り競合店の方へ向かう車の流れ(赤矢印)を『共通の流れ』、自分の横を通り競合店以外の方向に向かう車の流れ(青矢印)を『非共通の流れ』としてカウントします。それ以外の車の流れは計測対象外です。
③手前にある競合店の場合
自店の手前に競合Bがある場合、お店から歩いて交差点に向かい『自店を背にして交差点の手前に立ちます』その位置で競合店から来て自分の横を通り自店に向かう車の流れ(赤矢印)を『共通の流れ』、競合店以外の方向から来て自分の横を通り自店に向かう車の流れ(青矢印)を『非共通の流れ』とします。それ以外の車の流れは計測対象外です。
④各交差点での共通比率の計算方法と累積共通比率の計算方法
まず各交差点での共通比率を計算します。計算方法は『共通比率=共通台数÷(共通台数+非共通台数)』です。もし自店と競合店の間に交差点が一箇所しかなく、共通比率が50%という答えが出た場合、お店の前を通る車のうち、競合店に向かう(来る)比率は50%ということが出来ます。
自店と競合店の間に複数の交差点がある場合は、交差点毎に算出した共通比率を最後に積算し累積共通比率を算出することで途中の交差点が何カ所あったとしても競合店に向かう(競合店から来る)比率がわかります。
累積共通比率と影響度
お店の前を通る車のうち何%の車が競合店と重複しているのかがわかりました。その重複が全て自店に影響する訳ではありません。例えば累積共通比率が100%だったとしても、競合店に駐車場がなかったら自店への影響は殆どありません。このように累積共通比率に対しその他の要素要因が加わることで影響度が変わります。
①距離による影響力の減衰
平均的な一般道の車速、時速40km/hではコンビニエンスストアの商圏とされる5分間走行すると約3km以上離れます。故に最も影響度の高い0mから3kmを最も影響度が低い距離としてその間を影響力が減衰するイメージです。ただし周辺に全く何もない山道のような場所で10km以上に渡って1本道がつづくような場合、例え10kmでも影響が出ることがあります。
②位置関係による影響力の強さ
自店と競合店との位置関係によってその影響の受け方が変わります。一般的に自店の手前にある競合の影響を最も受けやすく、続いて先の位置の影響をうけ、反対車線の影響は受けにくいとされます。
③駐車場の使い易さ等
前述の通り、駐車場面積の他、進入口の使い易さ、店舗視界性、免許品の有無等について自店と競合店の彼我の関係性により影響の度合いが変わります。
累積共通比率からみた角地の優位性
もし自店が活きた側道を持つ角地にあって、その先の中地に競合店がある場合、お店の前を通る車のうち、競合店に向かう車は30%~70%程度の低い共通比率になりますが、中地の競合店側から見た自店の共通比は100%となります。このような事からも角地の優位性は明確でロードサイド立地における中地の危険性を証明する例となります。
最後に
今回は難解になりすぎないように計測方法について簡略化した解説となっています。また競合店までの途中で道路の車線数が変わったり中央分離帯が発生する場合等は計測方法が複雑になりますが、すべて上記の考え方の拡張で理論的に説明する事が出来ます。ご自分で判断が付かない場合は弊社で調査する事も可能です。是非競合出店の事前対策にご活用下さい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?