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また君と、海に行けたなら。

私はよく、写真や映像等の作品制作を海で行います。
私の好きな季節は冬と春です。
極寒の風と荒々しい波がバチバチにハジける季節。
何より人が少ない。
ほぼ貸し切り状態。
最高!

しかし実際のところ作品を制作している身からすれば。
高い機材を持って行っても潮風に吹かれて、まんべんなく塩だらけになったり。
気がつくとカメラがベタベタしてきたり。
なんなら髪もバキバキになってワックスいらずになったり。
ワォ!って感じです。
帰り道の髪型はオールバックです。

海は、とても沢山の表情を見せてくれます。
穏やかだったり荒れていたり。
嬉しかったり悲しかったり、時に恐ろしかったり。
自然への畏敬。なんて書くと難しいですが、コントロールができない自然は受け入れることしかできなくて。
主に海で撮影している私はテンパったり楽しんだりしています。
そして、海の表情で作品の表情も変わってくるように思います。

穏やかな海

海にまつわる話ですが、例えば。
海水浴で真っ黒になった思い出。
着衣泳をして車内を塩だらけにした思い出。
潮干狩りで砂浜を掘りまくった思い出。
クラゲに刺された思い出。
上司と秋ごろ一緒に船釣りに行って早朝の海上でガタガタ震えた思い出。

海には、いろいろな感情、思い出が沢山あります。
きっと、これまでも、これからも。
たくさんの想いや感情が潮流に乗って世界へ流れていくのでしょう。
「なんだかロックンロールですなぁ!」
そうやって荒れた海に向かって叫んでしまいます。

夜の海

さて、思い出というモノは美化されやすいですが、大したオチが無い、なんとなくの思い出こそ、思い返して切なくなりやすい気がします。

オチの無い話で思い出した話があります。

知人と海へ撮影に行った時のことです。
季節は2月頃だったでしょうか。
その日は昼まで、ずっと土砂降りでした。
昼過ぎからは運が良く晴れ間が出てきました。

「よっしゃ、ぼちぼち行きますか!」
私は車内で声を上げ2人で車外へ。
直後2人で「さっむ!」と、声を揃えて叫んだ覚えがあります。
海は雨が降らない代わりに波が荒れていました。
私は砂浜ということもあり、革ジャンを着て動きまわっていました。
髪の毛はすぐにバキバキのワックスいらずになり、2人で変な髪型を作って笑い合いました。

「ピントが合わねぇ!レンズが塩で真っ白だ!!」
「海水、飛んでくるよねぇ!」
「あ、陽が出てきた!」
「夕陽っていいよね」
「あ、天使の梯子が出てるじゃん!」
「あ、すごい!撮って撮って!」

なんてことのない会話です。
それでも、そんな時間がずっと続けばいいのにな。と漠然と思っていました。
しかし太陽が水平線に沈み、薄暗くなってきた頃。
帰りたくねぇなぁ。
撮影でテンパっていた私はそんな事を思いはじめました。
ずっと笑いながら楽しく撮影をしていたい。
この時間も思い出になってしまうんだろうか。
太陽が沈まなければいいのに。
私はなんだか切なくなりました。

このエピソードは特にオチはありません。
思い出って、やはりオチが無い方が心に波を立てませんか?
凪のように、ささやかな波を。
ゆっくりと波が引いていくように。
なんとなくなのですが、私はそう思います。
思い出はオチが無いからこそ、美化されていくように思います。

もしも。
また君と、海に行けたなら。
こんなに楽しいことはないでしょう。
あの日撮影した写真はまだ現像に出していないけれど、いつか、どこかで渡せる日が来たら。
それはとっても嬉しいのでしょう。
そして、また一緒に海で撮影をしましょう。
そうして未現像の写真を増やしましょう。
それまで、どうかお元気で。
では。

#わたしと海

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