鍵っ子小学生の夕ごはん①置き手紙
『かわい子たちちゃんへ、
これで仲良くごはん食べて下さいね』
置き手紙とともに千円札が1枚テーブルに置いてある。
母は夕方からの仕事に出かける前に時々こんな風にした。
……千円か。私はこれで何が買えるか頭を巡らす。母を除いた家族、六人分と猫1匹の夕飯をこしらえるからには頭を使わなきゃいけない。小学生だってやらなければならないと生活力は付いてくる。私は妹、弟を連れてスーパーへと向かった。
今日は野菜炒めにするか?ではお肉は何にしようか?豚こま100gいくらかな?500gは欲しいけど、鶏肉とどっちが安いかな?野菜はまずもやしね!だんとつ安いし栄養あるから。あとはキャベツがいるな…味付けは砂糖醤油で甘辛にするか、ソース味もいい。ならとんかつソース買えるかな?あ、そうそう猫のご飯にちくわを忘れずに!これでギリギリかえるかな?
暗算が得意な妹がいて助かる!ドキドキしながらレジの支払いを済ませた。
さぁて、これからみんなのご飯を作ろう!食材を持った私たちのお腹はぺったんこでも、足取りは軽やかだった。
※鍵っ子とは、両親が共働きのため自宅の鍵を持っており、学校から帰宅すると子供だけで留守番をしている様子からそう言われていたが、今は使われていない言葉。