駒澤大学投手陣の課題
毎度お騒がせしております、次世代の逸材発掘です。
東都の開幕が迫ってきている中、秋のリーグ戦も非常に楽しみにしている今日この頃です。一部リーグ戦をはじめ、二部三部のリーグも実力が拮抗し激戦が繰り広げられる事が予想されます。その戦国東都に於いて投手力という要素は非常に重要で、リーグ戦ではその差が顕著になります。
そこで今回挙げさせて頂く内容は
「駒澤大学の投手陣」
についてです。
春のリーグ戦も入れ替え戦も完了し最終的には残留を決めた駒澤大学ですが7チーム中の4位、最終節まで東洋大学と入れ替え戦回避を争っていました。
春リーグ戦で駒澤大学は序盤からかなり苦戦し、打線もチーム打率が1割台後半と低迷。4〜6位あたりを彷徨い続け上位に食い込むどころか常に降格の危機が付き纏っていました。それでも残留を決めたのはエースの福山優希選手の奮闘があったからこそだと言えます。
その福山選手は昨季主戦投手だった竹本選手から引き継ぐ形でエースの座を掴むと全12試合に登板。チームの大黒柱として押しも押されもせぬ存在感と活躍ぶりを見せつけました。
しかし主軸の1人として期待されていた4年生の村越選手が故障した事や2番手がいない事も相まって福山選手への依存度が非常に高くなり12試合中11試合が彼による先発登板で占め、大きく偏った起用になりました。
また1人の投手で勝ち切る世界は限界が来ています。
今や高校野球でも2番手で先発出来る投手やリリーフを作っていなければ勝ち切るのは難しい現状にあります。
ましてや1シーズンに10試合もある長丁場で有れば尚更複数の投手は必要となってくる為、投手陣の層の厚さは最重要要素の1つとして挙げられます。
そこで今回このテーマを提示させて頂きました。
駒澤大学投手陣の現状
春のリーグ戦を観ていて分かった事は
①福山選手頼りの極端な先発起用
②長いイニング投げられる投手の不在
③アクシデントが有るとやり繰りが難しくなる
④リリーフも確固たる選手が居ない
という事です。
近年偏った投手起用の傾向がある駒澤大学ですが例年と比較しても今年の春はかなり極端な内容になっていました。
昨年は絶対的エースの竹本選手(現JR東日本東北)を敢えて後ろで待機させ、先発で村越選手ら複数の選手を起用。先発を行けるところまで行かせて苦しくなってきたところで満を辞して竹本選手を登板させるスタイルでした。
今年はその逆でスターターで福山選手を徹底起用、投げられるところまで投げさせて調子が良いなら完投させるのがスタイルを取っています。
しかし全12試合中11試合で福山選手が先発していたのは極端すぎる傾向にあります。リーグ戦を通して全体的にゲームをしっかり作れていましたが中盤戦は4回あたりで降りるシーンも見受けられ、これ以上の順位を望むならもう1人先発投手が欲しいと思うシーンが何度か見受けられました。
また福山選手が先発で起用され続ける事によって生まれたもう一つの問題が2つ目の長いイニングを投げられる投手の不在です。
下記は駒澤大学の投手陣が消化したイニング数です。
福山優希 12試合 84回 先発11試合
谷藤大成 6試合 10回 先発1試合
東田健臣 3試合 3回
村越祐野 1試合 2回2/3
佐藤翔 5試合 2回2/3
染谷康友 3試合 1回
米山魁乙 1試合 1回
松村青 1試合 1回
高井駿丞 1試合 2/3
川名晴大 1試合 1/3
以上の表を見て頂くと一目瞭然なんですが二桁投球回をクリアしたのが福山選手と谷藤選手しかいない状態になっています。
福山選手が全イニング中84イニングを消化しているのでその他の投手は必然的に投球回が減るのですがチーム内3位のイニング数が東田選手の3イニングはあまりにも少なすぎます。
松本健吾選手が12試合中10試合に登板、計61回1/3を投げた亜細亜大学でも市川選手が12回1/3、岡留選手が12回2/3、加藤選手が5回を投げており、その少なさが窺えます。
これでは他の投手が実戦経験を積めない。
また長いイニングを投げれる投手の不在は複数の点で問題が出て来ます。それが3つ目の福山選手のアクシデントがあった際の対応と4つ目のリリーフに確固たる選手がいないと言うところです。
4/20の立正大学戦では谷藤選手が6失点した福山選手の後を受けて4回1失点の好リリーフを見せてゲームを立て直していますが翌4月21日の立正大学第2回戦では5回に福山選手に打球が直撃するアクシデントが発生、緊急降板となると続く谷藤選手が1/3で打者7人に被安打3、2四球。桂川選手に満塁弾を浴びてこの回だけで計5失点、ゲームが完全に決着してしまいました。その後東田選手、佐藤翔選手、米山選手が0に抑えたものの反撃及ばず敗戦しています。
また勝ちパターンのリリーフやロングで対応できる選手がほぼいないので福山選手が降りるとワンポイントや短いイニングで繋いで行く必要が出てきます。幸いにもリリーフした投手で大崩れした投手は少なかったものの福山選手がマウンドから降りると何人も投手を用意し細かく細かく繋いでいかざるを得ず、その結果今回の中継ぎの運用では明確な起用法が定まりませんでした。
どこで誰を出してどう勝利に繋げるのか、頼れるリリーフ投手が1人いるのといないのでは大きく違ってくるだけに先発だけでなく勝ちに繋げられるリリーフの存在も同時に必要となってくると感じました。
ここまでリーグ戦や試合展開を見てきて先発中継ぎともに課題は散見されています。ただ幸運にもエースとして確立出来た福山選手はまだ3年生であと1年在籍します。先発リリーフを整える時間は来年の秋まであり、経験を積んできた福山選手がいる間に早めにあと2枚先発可能な選手を確立し、同時にリリーフの整備を進めていきたいところです。そのためには1人を極端に起用するのではなく一定のバランスを取った起用法が求められてくるでしょう。
次の代を担う先発候補は揃っている
福山選手が先発起用され続けてきた駒澤大学の投手陣。
もう1人先発に耐えうる選手が居ないのかと言われると実は居ます。確かに現状、東都の舞台で先発や長いイニングを投げた投手は少ないものの村越選手(4年)は昨年先発の経験がある他、ここ2年程で高校時代にドラフト候補と呼ばれスターターとして活躍してきたスター選手が数多く入ってきており駒は揃いつつあります。
まずその候補の1人が米山魁乙選手(2年)です。
昌平高校では1年生から主戦級の一角を担っており完投できる能力も兼ね備えています。
また高校3年夏は先発よりリリーフで出る事が多かったものの長いイニング跨いで抑える事ができるセンスがあり、ゲームメイキング力にもロングリリーフでも期待が持てます。ストレートも最速144km/hを計測していて左腕の中では中々出力の高い選手。先発でも中継ぎでも期待に応えられるでしょう。
春のリーグ戦ではデビューも果たしており、1イニングでランナー2人を出しましたが0に抑えています。注目している選手であり春は実際に登板する姿を観れなかったので秋一度、生で確認したい選手です。
加えて1年生でも好投手が多数入ってきており、
その中でも注目なのが下記の5人。
三方陽登選手(創志学園) 146km/h右腕
東田健臣選手(西脇工) 141km/h左腕
高井駿丞選手(広島商) 142km/h左腕
松村青選手(向上) 143km/h右腕
エーアン・リン選手(向上) 143km/h右腕
三方陽登選手は春のリーグ戦でデビューこそしなかったものの岡山屈指の強豪、創志学園ではエースとして活躍。6回7回投げ切れる力を持っている投手で球速に関しても最速は146km/hを計測。全試合先発して中国地区でベスト4まで行った事があり勝つ方法も勝利の味もよく知っている投手です。身長はチーム内トップの187cm、長身ゆえに更に筋力及び出力を上げていけそうな気配があります。
加えて西純矢選手(現阪神)を追い創志学園へ入学しており、その背中を見続けていたのも大きな財産となっています。その憧れの先輩に負けないピッチングを期待したいところです。
東田健臣選手は左の好投手。
キレのあるストレートとスライダーを武器にする選手で春のリーグ戦では早くもデビューを飾っています。
この東田選手、高校3年時には甲子園にこそ出られなかったものの4回戦まで圧巻のピッチングを披露。初戦を13K完封で飾ると2回戦の洲本高校戦では延長11回で15K完封をマーク、3回戦の社高校もシャットアウトし3試合連続完封を記録しています。4回戦はリリーフでしたが2回を無失点。5回戦の神戸国際大附属高校に破れるまで無失点をキープしていました。
やや四球が多いものの完投能力と奪三振率の高い選手でプロ数球団から注目された逸材です。
春季リーグ戦では3試合で3イニングに登板、与四球を5つ出したもののノーヒットで3奪三振。自責点0の防御率0.00で最初のシーズンを終えています。
春季リーグ戦で登板した東田健臣選手。
広島商出身の高井駿丞選手は186cmの高身長左腕。
2020年夏の予選では先発した全ての試合で7回以上を投げ切りクオリティースタートを記録。4回戦の熊野高校戦では8回参考ながらノーヒットノーランを記録しています。四球も全体的に少なく、直球でも変化球でもストライクを取れて安定したピッチングを展開できるのが武器。MAX142km/hの出力が更に上がればベースとなる制球力と変化球があるのでより驚異になると考えられます。
春のリーグ戦では青山学院大学ほ佐藤英雄選手に本塁打を浴びて僅か2/3で降板するほろ苦いデビューとなりましたが実力はあるだけに非常に楽しみな選手です。
4人目が松村青選手。
この選手も春のリーグ戦で早くもデビューを飾っています。神奈川で近年調子が上向きで、140km/hを超える様な投手を次々と輩出し始めている向上高校の出身。その向上高校ではエースを張ってMAX143km/hを記録。身長は182cmと上背もあり、本格派の右投手として楽しみな選手です。この春は1試合のみの登板でしたが1イニングを0に抑えて好スタートを切っています。
そしてその松村青選手と共に向上高校を支えてきたのが5人目のエーアン・リン選手。この選手は駒澤大学にとって切り札的存在になれるのではと期待しています。
まず期待が持てるのがそのスケールの大きさ。チーム内でも三方選手と並んで最も長身の187cm、更に高校3年時に体重10kg増量した事で急速に成長しています。同学年で共に戦ってきた松村選手と同じく最速143km/hの速球を誇り、エース級2枚を擁して激戦の神奈川を4回戦まで進みました。
右の長身投手でここから先、出力を上げて行けるのであれば先発抑えの両面でも活躍が期待できます。
潜在能力が非常に高く注目していきたい選手の1人です。
以上の5人が主な先発候補の選手です。
既にデビューを果たしている選手が多く、米山選手や東田選手、高井選手と言ったプロからも注目されていた左投手達を中心に次々と初登板を果たしています。
またこの5人以外でも身長183cm、体重90kgの堂々とした体格を誇る川名選手が1試合で1/3のみでしたが打者1人を三振に抑えるなどこの春はルーキーが多く起用されていました。
秋は少しでも登板数を増やして長いイニングを任される事を期待しています。彼らの成長がこれからの駒澤大学を大きく変える事になるでしょう。
鍵を握る村越選手と谷藤選手の起用法
キーとなる上級生投手が村越祐野選手(4年)と谷藤大成選手(3年)の2人。この2人の出来もかなりチームを左右させます。
まず村越選手ですが昨年秋を経て大幅に成長しており、苦しんでいた一年前とは雲泥の差、最速141km/hを記録し開幕ゲームでは2回2/3を0に抑える好投を見せています。開幕直後に肩の怪我もありその後は登板がありませんでしたが生で観た印象としては十二分に活躍出来ると感じています。
怪我から復帰すれば先発中継ぎ両面で活躍が期待され福山選手との二本柱が形成する事も可能。
故障の影響や長いイニングに耐えられるか不安要素はありますが、来季の駒澤大学を浮上させるか否かは村越選手に懸かってくると言っても過言ではなく、キーとなる事が予想されます。
そしてその村越選手とともに重要な役割を担いそうなのが谷藤選手です。
2年生までは全く登板機会がありませんでしたが3年に初登板を果たすと6試合に登板、防御率こそ5.40だったものの福山選手に次いで10イニングを投げ切り先発も一度経験。ロングリリーフで勝ちに繋げる好投を見せたりワンポイントで勝ち投手になったりと重要な場面では結果を残せる選手。縁の下の力持ち的存在で現状投手陣の中では福山選手に次いでに頼れる投手となっています。
谷藤選手の活躍が順位を左右させる要素になってくるでしょう。
キーマンとして挙げられる右サイドハンドの谷藤選手。
ロングもワンポイントも先発も経験している貴重な人材。
テーマは2試合目をどう乗り切るか
初戦はアクシデントが無ければ福山選手はほぼ確実だと思います。ゲームも上手く作れるので万全の状態ならある程度計算できるでしょう。
となると問題となるのが2戦目をどう乗り切るかが主題になってきます。前述した通り、現在の駒澤大学にはロングリリーフの経験や先発で長いイニングを投げた経験のある投手が非常に少なく、また10試合の長丁場となるためペース配分や試合毎の好不調の影響は非常に出ると考えられます。
1人抜け出してくればその選手を固定するのも1つの手だと思いますが候補が乱立する中で多くの投手に経験を積ませるのであれば敢えて2番手を固定せず調子の良い投手を対戦相手に合わせた上で先発させるという形も有りだと思います。
またショートスターターという方式で1イニングから3イニングで複数投手を繋いでいくのも案として挙げられます。スタミナやペース配分の感覚がついたところで少しずつイニングを伸ばし適性を見極めて行くのも方法でしょう。
また、先発・リリーフのどちらにせよ多くの投手に経験を積ませる必要があるので複数の投手の起用というのは避けては通れないところになってきます。
その場合にはブルペンでの準備のタイミングや球数の問題が出てくると思いますが第一に投げ過ぎは禁物。特に身体が出来てきている途中の段階の選手に関してはケアが必要とされます。
ともあれ第2戦というのは駒澤大学にとってかなり重要視されるべきポイント。どう対処していかに価値ある勝ちに繋げられるかが注目です。
最後に
駒澤大学のエース級はタフネスな選手が多く、辻本選手から上野選手・竹本選手そして福山選手とハードな起用をされても期待に応える投手が名を連ねています。エース級の投手を育て、確立させるのは非常に上手です。
しかし最早、エース1人で勝てる様な環境では無くなりつつあり首都大学や東京六大学、全日本大学野球選手権を観ていると勝てるチームには2戦目にもう1人先発としてしっかり戦える投手を用意しています(慶應大学・森田・増居両投手など)。
全国の舞台から少しずつ遠ざかっている駒澤大学が復権を果たすためには投手陣の強化は避けては通れない課題、勝負の秋を迎えて駒澤大学の投手陣がどう変化するか非常に楽しみにしています。
終
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