第36回・ちんぷんかんクッキング
冷蔵庫を開け、何があるのかを確認し、どんなモノを作ることが出来るのか、仕上がりはどんなビジュアルでどんな味になるのか、そのほぼ全てを、そこまでの時間を必要とせずに頭の中で組み立てることは、得意な人間であると、自分では思っている。
何もこんな回りくどい書き方をしないでも、同じ内容の話は伝えられるのだが、なんとなく格好付けたかった。
時短料理のようにサクッと書くことも可能だし、逆にじっくり時間も手間もかけて一品を仕上げることだって出来る。
料理も文章も同じだ。
それ以外のことだって、大概のことは当てはまる。
料理は時間をかければ良い、文章は長く書ければ良い、というモノではないことくらいは、わかっている。
その時々で、臨機応変に成せば、それで良い。
ただ今は、なんとなく長く書いた方が、気分が良いと感じた。
自ら、自分に対して臨機応変に対応した結果だ。
ただ、自らの気持ち良さを優先し、前半で余計な文字数を使ってしまったので、おそらく後半は辛くなる可能性が高まった。
まぁ、そこは料理人の腕の見せ所だ。
会話をしたり、文章を書いたり、何をするにせよ、スタートの段階では、結構何も考えていなかったりする。
まさに冷蔵庫を開けた瞬間の状態だ。
自分の頭の中に、どんなネタがあって、どんなワードがあって、何を体験として覚えているか。
それは、日によって目紛しく変化する。
今日入っていたモノでも、明日には気付けなくなっていることだってあるし、随分と時間を経て、再び現れることだってある。
開けた瞬間に、目に飛び込んできたモノ、気になったモノを何個か選び、それらを如何に繋ぎ合わせるかがポイント。
それぞれの材料の特徴は?
相性の良い副材料は?
どこか似ていたり共通している部分はないか、直感と感覚・感性で仕上げる。
素材の味が死なないように、程よい調味料で味を付け、付け合わせも添えて、皿を飾る。
それをよりスムーズに、またスマートに実行するには、ネタを仕留めた瞬間に、しっかりと下処理をしておくことも大事だ。
丁寧に分解し、観察し、他のモノや事柄とイメージを重ねておく。
そうしておくことで、記憶の保存状態が良くなる。
それは本物の狩猟で、仕留めた獲物の命を素早く断ち、血を抜き、綺麗にバラし、保存しやすいように加工処理を施すようなものだ。
と、書いていたら、やはり前半で文字数を使い過ぎたようだ。
間に合わなくなりそうなので、今回の完成品はこちら!といった感じのオチとしよう。
実際は、料理も会話も文章も、大してテクニックなど必要の無いものだと思う。
感覚のままに感性のままに、それぞれの素材のままが良かったりする。
心配ない。
素材のままの味でも、案外美味しかったりするものだ。
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