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棒アイドル(ショートショート)
取調室。男はデスクの上のライトを顔に向けられ、反射的に顔を背けた。
「で、ストーカーをしていたことは認めるんだな?」
刑事が高圧的にそう言う。
「ストーカーではなく追っかけなんですけどね」
男もそこは譲れない感じだ。
「被害届が出れば立派なストーカーだよ。ったく、相手は子供向け番組のお姉さん?いい歳してそんなTV見てんのか」
「彼女は僕にとってアイドルです。別名、棒姉さん。棒を使った諺を自ら演じて子供たちに教えてくれるんです」
「これがお前さんが彼女の事務所のゴミ箱からパクった棒の写真だが?」
「はい、犬のコスプレをした彼女がこの棒を持って(犬も歩けば棒に当たる)を演じてくれました」
「こっちの棒は?」
「藪からその棒を持って飛び出して(藪から棒)です」
刑事は呆れていた。
「で?最後は彼女の雇ったボディーガードに捕まったと」
「はい、彼女は言ってました。この人は私の用心棒、私も空手をやってるけど、これで鬼に金棒、運の尽きだと・・・」