音楽を「視る」
今日は久しぶりに晴れたので溜まっていた洗濯物したり、部屋の掃除をしてちょっとだけいい気分になっている僕です。
おはこんばんちは。
やらなきゃやらなきゃと思いつつ出来てなかったことが一気に片付くと何だか充実感がありますね。
今日は夜まで予定が無かったので、諸々済ませた後に「百円の恋」という映画を見ていました。
見終わってから知ったけど、これ一応R-15指定だったんかい。
八円で変わる恋と愛
映画の内容はそこまで深掘りしませんが、32歳処女ニート自称百円の女、斎藤一子(安藤サクラ)が、中年ボクサー狩野祐二(新井浩文)との出会いをきっかけに、恋してみたりボクシングを始めたり、まぁ何やかんやあって色んなことが変わっていくみたいな感じです。
そんな「百円の恋」の主題歌になっているのが、映画のために描き下ろされた、クリープハイプの「百八円の恋」。
映画が公開されたのが、ちょうど消費税が8%に引き上げられた2014年で、主題歌のタイトルはその消費税分高くなっているわけですね。
何で消費税つけたんだよ8%計算しづらだろとか思ってたんですが、歌詞の中にヒントが書いてありました。
誰かを好きになる事にも
消費税がかかっていて
百円の恋に八円の愛
ってわかってるけど
100円って、簡単ですよね。
キリがいいから難しく考えなくても計算できるし、財布から出すときも枚数を数えればいいくらい。
だけどそこに8%の消費税が乗っかると、うーんうーんって言いながら計算しないといけなくなるし、小銭が足りないとピッタリ払えないしで、一気に面倒になってしまう。
恋は100円みたいに、難しく考えなくてもいいし、割と簡単に手に入ったりする。
けれど愛には8%の消費税がかかっていて、8円分の面倒臭さを背負っていかないといけない。
「百円の恋」と「八円の愛」
つまりこの曲で云うところの8円に含まれるのは、消費税じゃなく「愛の重み」ということなんでしょうね。
世界観の世界観まじパない。
痛い でも 居たい
僕は正直クリープハイプについてそこまで詳しいわけではないのですが、ボーカルの「尾崎世界観」の声、そして前述の通り、彼が作り出す「世界観」が特徴的なバンドだと思っています。
今回取り上げた「百八円の恋」については、特に後者が印象的でした。
映画の終わり、エンドロールに入る手前からゆったりとしたテンポで曲が始まる。
その後バスドラムの2カウントから一気に曲調が変わり、気付くと彼は何度も「いたい」を連呼。
何だ何だと思いながら歌詞を見るとこう書いてありました。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
でも
居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい居たい
(やだめっちゃメンヘラ...)
この映画のクライマックスで、主役である斎藤一子がボクシングの試合に出場し、ボコスカ殴られながらも必死に戦うというシーンがあります。
もう多分めっちゃ痛いんでしょうね。すごいし顔とか。
それでも斎藤一子は立ち上がって最後まで戦うのです。
理由は一つ、ここに居たいから。
自堕落な自分を変える一つのきっかけとなったボクシング。
何の価値もないと思っていた人生の中で、唯一見つけた自分の居場所。
だから、「痛い」 でも 「居たい」
映画の中で彼女の口からは語られなかった気持ちが、尾崎の歌詞によって届けられたんですね。
世界観の世界観まじパない。
始まりはトマトから
前半でも載せていますが、「百八円の恋」はジャケットも非常に印象的なものになっています。
何やらビニール袋をかぶった人物にトマトが投げつけられ、見るも無残な姿になっていますね。
これ実は、映画の冒頭にある姉妹喧嘩のシーンのオマージュになっているんだそう。
「え、姉妹喧嘩のシーン?オマージュにするならもっと他にいいシーンあったんじゃない?」とも思ったんですが、この姉妹喧嘩がトリガーとなり、その後の斎藤一子の人生が大きく変わっていったという意味では、映画にとって非常に重要なシーンの一つ。
ここを切り取るセンス。
世界観の世界観まじパない。
ちなみにビニール袋をかぶっているのは尾崎世界観本人らしいです。
視る音楽
音楽は「音を楽しむ」と書くので、当たり前に耳で楽しむものだと思っていたけれど、音楽に関わる「音以外」の部分、例えばジャケット、歌詞、今回のように映画や小説のための描き下ろしであれば、作品。
それ等をみる。
見る、観る、視る。
つまり「視覚を使う」ということが、音楽をより深く解釈する上でとても大切であるなと感じました。
目から耳から、視て聴いて楽しむ音楽。
視覚から捉えてみると、これまで聴いてきた曲の違った顔が見れるかもしれませんね。