【エッセイ】秋がはじまるよ
夏が好きだ。
日の出が早く、日の入りの遅い夏が好きだ。
幸せがめいいっぱい詰まったような入道雲や、
燃えるような真っ赤な夕焼けを見せてくれる夏が好きだ。
それからお気に入りのワンピースをたくさん着られる夏が好きだ。
ベストオブベストは白と青の細いストライプの模様で10年選手のワンピース。
裏の裾にシミをつけてしまって、花柄の白いレースのアップリケで隠しているけれど、それも含めて気に入っている。
このストライプのワンピースはたまによその人から褒めてもらうことがある。
いつもはそんなそんな、と褒められてもちょっと引いてしまうのだけど、この服の時だけは
「このワンピース、気に入ってるんです。だから褒めてもらって嬉しいです」
と素直に言うようにしている。
よく似合ってるよ、私もそのワンピースいいと思うよ。にっこり笑ってくれるとあたたかな気持ちになる。
夏は衣服が軽く済むから肩が凝らなくていい。
Tシャツジーパンにスニーカーを突っかければどこまでも歩いていける気になる。
反対に冬は苦手だ。
なかなか日が昇らず、雲は上空高い場所に幸が薄そうにうっすらとしか浮かばないし、あれよあれよと言う間に日が落ち、身につける衣服は重くてずんぐりむっくりになる。
一度外に出たらささっと用事を片付けてまたうちに篭りたくなる。それが冬。
今年も秋の気配を感じる季節がやってきて、また少し体調が悪くなるかなと思いきや、少し体調は傾いたけど、そこまでひどくならずに済んでいる。
酷暑と違い、外出中に汗をかかないのは不快にならないことを今更になって発見したからかもしれない。
ジムまでの道のりで、精一杯羽を震わせる蝉の声を聞きながら、きらほしさんが以前ラジオで言っていたことを思い出す。
「私は冬が好きです。
だって寒ければ着込めばいいし、
もっと寒ければお風呂に入ればいいでしょ?
それから雪が降るのを見るのも大好きです。」
そんな感じの言葉だった気がする。
今まで私は真逆のことを考えて生きていた。
夏は暑ければ脱げばいいし、
もっと暑ければシャワーを浴びればいいし
いちばん暑い時期に海に入るのが好きだ。
正反対の意見を聞いてそういう考えもあるよなあ、とすんなり受け入れることができたのは、きらほしさんのことがすごく好きだということもある。好きな人の話はすっと頭に入ってくる。
それだけではなくて、頭のどこかでは冬(そして秋)を受け入れたい自分がいたからかもしれない。
出来るだけ物事の良い面を見つけたいと思うけど、年々視野が狭まっている気もする。
嫌いなものより好きなものが多い方がきっと楽しいし、生きていて楽なはずだ。
あれが嫌いこれが嫌いと言っていたらいつか、本当に一人ぽっちになってしまう。
こんなセンチな記事を書くようになったのだから、確実に秋がこちらへと手を伸ばしている。
今年こそは彼らの手をぎゅっと握って、あなたのこと、そんなに嫌いじゃないよって言えたらいいな。