【掌編戯曲】後藤を待ちながら
舞台中央には上手から順に宮藤、加藤、伊藤が横一列に並び、それぞれ椅子に座っている。舞台の後ろにはスターバックスに酷似したロゴマークが大きく飾られている。
宮藤「後藤遅くない?」
加藤「後藤、日直の日誌書いてるからもうちょい待ってって」
ほら、と言うようにパントマイムでスマートフォンの画面を宮藤に見せる仕草をする加藤。
伊藤「後藤、最近彼氏できたよね」
加藤「あれでしょ、バイト先の先輩。立教だって言ってたよね」
宮藤「彼氏できた試しねえわ」
伊藤「わたしも」
加藤「同じく」
宮藤「あー、彼氏とサマーランド行きてえ」
伊藤「アフター6したい」
加藤「浴衣デートしたいわあ」
宮藤「妄想ばっか膨らむよね、女子校に入ると」
加藤「ガッコー入ってから逆に男らしくなった気がするし」
伊藤「わたしなんか、うっすらヒゲ生えてきたし」
宮藤、加藤「まじ?」
伊藤の顔面をまじまじと覗く宮藤と加藤
宮藤「あ、まじだ。やべーよ伊藤がオスになっちゃう」
伊藤「いっそわたしが男だったらハーレムなのにな」
加藤「伊藤が男になってもねえ。ねえ?」
宮藤に同意を求める加藤。うなづく宮藤。
伊藤「ちょっとー、わたし男になったら確実イケメンでしょうが」
宮藤「…ねえ、後藤の彼氏に会ったことある?」
加藤、伊藤「なーい」
ぶんぶんと首を横に振る加藤と伊藤。
宮藤「それ嘘でほんとは彼氏いなかったりして」
伊藤「妄想彼氏?」
加藤「それやばない?」
宮藤「でもゲロると、私、妄想彼氏いるわ」
伊藤「わたしもいるわ」
加藤「まったくもって万能彼氏だわ」
宮藤「愚痴りたい時には黙って話聞いてくれて」
伊藤「ざんざん泣いた後に頭ぽんぽん」
加藤「VRで彼氏再生できんかなー」
伊藤「それにしても後藤おそない?」
はあ、とため息をついて3人は同時にスマートフォンの画面に目を移す。
後藤は未だ現れない。