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スライディングあご
携帯電話をまたコンクリに落とした。
また、と言うのは駅で歩きスマホをしていたら後ろの人にタックルされ、勢いで落としてスマホの画面がバキバキになったのが今年2月のおはなし。池袋の非正規店で6000円でガラス交換をしてもらった。
今回はマンションの出入り口でこけて、あごを打ちその勢いで携帯電話がぴょーいと空を飛んでから地面に落下した。
人間こけたとき反射的に「いでっ」と声を出すことを三十代後半にして知る。
圧倒的な痛さに泣けてくるがもう歳も歳なので涙も出てこない。顔を守ろうととっさに出した両手が擦りむいていて痛い。しかもあまり顔が地面から守られずただただ痛い。
ポツポツと雨が降り出す天気、誰も手を差し伸べてくれない中で渋々携帯電話を拾おうとすると、ふわりと灰色の鳩が携帯電話の真上に着地した。
え、や、着地しないで。その上で暖を取らないで。
そう思ってアラレちゃんがうんこを突くようにその辺で拾った棒でえいえい突いたけれどなかなか鳥は動かない。なぜ手で触らない?だって野鳥には信じられない数の菌が潜むと聞いたことがあるから。
鳥は一瞬ムッとした顔をした後、携帯電話をガッチリと脚でホールドしたまま羽ばたき、私の手の届かない神棚のところまで飛んで行ってしまった。
神棚?そんなことあるー?と強く思ったけどこのツッコミは最近テレビでよく見るので言わないことにした。
暗転
ねえアリサ最近寝言がすごいのよ、遠くで母の声がする。気づくと実家のソファーの上であと一歩で覚醒をする状態の私でいた。父は何がと言う。
「アリサ、寝言でイイネ!とか言うのよ」
……思ったよりマシな寝言で良かったと安堵する。えげつない下ネタを寝言で言うようになったら今後生きづらさを感じながら実家に帰らねばならぬ。
そして肉体の痛みが徐々に広がる。会社のマダムが言っていた「交通事故にあったらなんともなくても病院に行くのよ」って交通事故ではないけれど顔面からスライディングするように突っ込んで私はあごを負傷した。
左側のあごが少し腫れているように感じる。このまま片方のあごが腫れ、あごが2つに割れ、さらに私が分身したらどうなってしまうのか。
割とまじめに働くタイプだから分身が生まれたら普通にインカムが倍に増えていいかもしれない。インカムが増えていんかも。驚きの寒さ。
ひとまず最寄駅の整骨院にお世話になることにする。以前、舌の呂律が回らないという理由で訪れたとき、鍼治療と電気マッサージと整体を40分の間にすべて行って頂き、みごと腰痛が改善した医院である。
今回は鍼治療の際は指定されたスウェット、電気マッサージの際にはバスタルのみを私は着用して、整体の時はなぜか肌一貫で挑んでいた。
男性の先生は私の頭を腕で抱え「はいっ、ではー首の歪みをですねハイっ、これからハイ、直しますからねハイ!」と自身を鼓舞したあと一気に腕を曲げその度に私の首はコキっと小気味良い音がなった。
今日はどこが治るのだろう音痴が治ったらいいなと淡い期待を抱く。
もうご存知かと思われるがこれは現実と夢の混ぜこぜの文章で、本当はこのあと先生が盛大なる勃起をし、背中でそれを感じる流れがあり、整骨院長との壮大なバトルが繰り広げられるのだが、勃起あたりの表現がクリーンな大人の集まるnoteで書くにはふさわしくないと思われるのでこのへんでやめておきます。
ヤスタニアリサ先生の次回作にご期待ください。
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