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コーンスープと秋の始まり

始めようとしなくても、秋は始まる。金木犀の香りの少しあと。「もう夏日にはならないだろう」と感じた日が秋の始まりだ。

秋は勝手に始まるけれど、自分の意思で秋のスイッチを押しておきたい。スイッチを押せば、冷たい顔した秋の始まりも、ちょっとだけ微笑んで、私を迎え入れてくれる。

体温よりも温度の高いものに触れることが、秋のスイッチのひとつになる。カイロ、温泉、ハーブティー。触れたところから身体の輪郭がはっきりと浮き上がり、自分がちゃんと生きてるってことが分かる。寒い季節は、生きてることが分かりやすいから嫌いじゃない。

秋が始まった10月8日の朝、書き物をするためにコメダ珈琲を訪れた。木材がたくさん使われたかわいらしい内装、赤いベロアのソファ、温かいおしぼり、表紙の硬いメニュー表。1年ぶりの訪問だ。

「コメダにはコーンスープがあるらしい」という情報をSNSから仕入れていた私は、人生で初めてコメダのコーンスープを飲んだ。どろっと重く、濃くて、熱い。飲み込むたびにのどの形を感じる。まるでそのまま心臓に流れたのではないかと思うくらい、どくどくどくと、全身に染み渡る。5分も経たずに飲み干した。

「ダメになる前にコメダのコーンスープを飲む」をお守り代わりにして、寒い季節を乗り切ろう。

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伊藤七 | 書く人
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