文学フリマ前日の気持ち
明日開催される文学フリマ東京39に出店予定の伊藤七です。D-30で出店します。
文フリに出店するのは3回目。過去2回はエッセイ集を販売し、今回は歌集を販売する。
そもそも元気がないので、楽しみな気持ちよりは「家で眠っていたいな」という気持ちの方が強いのが正直なところ。どれだけ楽しみだった予定も、どれだけ気合を入れた仕事も、直前になるとすべて「面倒くさいな……」と思ってしまう癖がある。
そのことを、隠すことなく言える仕事をしたいものだ。「やりますけど、面倒くさいです、やりますけどね」「元気がないのでダラダラやりますね」と、ハッキリ言いながら仕事をしたいものだ。
今回つくった本は、歌集だ。57577からなる短歌をまとめた本である。1ページあたり3〜4首の短歌を載せた。全部で54ページ。文字数は少なめだから、一般的な本に比べるとスカスカに感じるだろう。歌集とは、そういうものだ。
なぜ歌集をつくったかといえば、6年ほど前から短歌を読むのが好きで、いつか自分も歌集をつくることに憧れていたから。
文フリ初出店の2023年から、本当は歌集をつくりたかった。でも素人の歌集なんて売れるわけがないと思い、「働きたくない人間の働き方研究」というキャッチーなエッセイ集をつくって販売した。
キャッチーだからだろう。想定よりも買ってもらえた。嬉しかった。本をきっかけに交流も生まれた。
だけどわたしは自分に対して疑問を感じた。なぜ何をやっても許されるフィールドで、「そこそこ無難に売れるであろうテーマのエッセイ」をつくったのか。誰に頼まれたわけでもなく、ルールのない場所にもかかわらず、「書きたいもの」ではなく「そこそこ無難に売れるであろうもの」をつくる自分の姿勢がちょっと嫌になった。
だから今回は歌集。
過去につくった短歌を引っ張り出したり、新たにつくったりと頑張ってみた。「いい歌集ができたぞ」という気持ちのときもあれば、「こんなのただの恥さらしじゃないか……」と潜りたくなるときもある。
1冊でも売れるといいな。今回の出店をきっかけに、いつかどこか遠くへ行けたらいいな。いや、つくりたいものをつくった時点でわたしはもう満足したのかもしれない。
社会のレールからはとっくに外れているくせに、意味のないところで無難な方を選びがちな性格だ。やりたいことをやったらいいのに。わかっているのに流される。そんな自分の姿勢に「違うでしょ!」とつっこんだのが、歌集という形になったんだと思う。
歌集のテーマは自分にも分からない。書きたいことを書いただけだから。
小さい頃を思い出すと、けっこう幸せな暮らしをしてたと思う。恋愛が始まってからは、ずっと疲弊していたと思う。ちょっとだけ可哀想な感じ。そういう普通の人間の記憶を書いてみた。
D-30でお待ちしています。