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わたしの本棚39夜「そしてバトンは渡された」
「MAGMA」烈の巻(幻戯書房、平成30年4月発行)の特集座談会、「二十代の書き手は何を表現したいのか」は、村上先生を司会として日大芸術学部出身の方の座談会ですが、そこで、逆に若者は何を読むのかという談がありました。読書離れした若者が読むのがゲーム感覚のもので、ライトノベル、ファンタジーだという。そして、社会派や純文学と違って、読んだ人が幸せになる小説を好むという。ファンタジー色が強かった2018年「かがみの孤城」に続き、2019年に本屋大賞を受賞したこの作品もその分類に入りそうで、良い人ばかりで、ライトノベル感覚で読める作品でした。
☆「そしてバトンは渡された」瀬尾まいこ著(文藝春秋文庫)814円(税込み)
5人の父と母がいる森宮優子。水戸→田中→泉ヶ原→森宮と父母の離婚によって苗字が変わってしまいましたが、全然不幸せでないという。そんな彼女の日常、学園生活ですが、出てくる人みんな温かい人で、距離の取り方がうまいのか、森宮優子は幸せです。出てくる食事の描写もおいしそうで、葛藤があまりなく、すらすらと読めてしまいました。去年の本屋大賞受賞作品です。文庫本には上白石萌音さんの応援解説もありです。