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わたしの本棚99夜~「岩下志麻という人生」
著者の立花氏には、女優さんへのインタビュー本が4冊あります。
若尾文子「宿命の女」なればこそ」(ワイズ出版)、吉永小百合「わたしが愛した映画たち」(集英社新書)、香川京子「凛たる人生」(ワイズ出版)。そして、この本です。4冊のなかで、わたしがもっとも好きな本は「岩下志麻という人生」です。生い立ちや「素の私」の考えたことがセキララに語られており、容貌との意外性もあって、好感でした。
☆「岩下志麻という人生」立花珠樹著 共同通信社 1600円+税
幼少時からの写真入りなのも嬉しいですし、岩下志麻さんが「素の私」を表に出してくれています。例えば、午前7時に起床し、目覚めたあと、ベッドで全身屈伸運動をし、窓のカーテンをあけ、空にむかって、「私は今日も元気だ。元気、元気、元気」とこぶしを挙げていう姿など、意外でしたが、親近感でした。こっそり、わたしも起きたときにマネしたりします。
両親も新劇の俳優だったことから、高校時代は医者になりたかったけれど、19歳で映画デビューすることに。武蔵高校時代は学年で1番になり、それを維持するためにガリ勉生活。高校2年のとき、小児リウマチ熱にかかり、1年間の休学。病気のあと、身体を壊してまで勉強することが何になるのか、と思うようになり、父親の知人に頼まれてテレビに出たことから声がかかるようになり、成城大学入学時には松竹と新人契約を結んだそうです。
小学校高学年のころ、若い男の先生にえこひいきされ、同級生の嫉妬を買い、「岩下死んじまえ」と言われ、ひとりで耐えてつかんだ強さの経験が、映画でも生かされたそうです。女優になってからも、いじめや妬みはあり、その都度、負けず嫌いでないのが幸いし、やりすごしてきたそうです。「人間は悲しいときに、悲しい顔をするんじゃないよ」という小津安二郎監督の言葉は、今も宝物だそうです。120本以上の映画に出た彼女が選んだ10本の作品に、彼女自身の言葉と立花氏の取材による解説があります。
「古都」「秋刀魚の味」「五癖の椿」「雪国」「心中天網島」「椀という女」「はなれ瞽女おりん」「鬼畜」「鑓の権三」「極道の女たち」
章末には、夫である篠田正浩監督の「わが戦友」というエッセイあり、いろんな角度から岩下志麻さんを知ることができる1冊でした。
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