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わたしの本棚15夜~「破局」
ホラーとSF、ファンタジー小説の他は、作者が投影されている方が成功することが多いと思います。体験や等身大の主人公を描くことで、自分をさらけだすことで、活写される文章は魅力的です。この小説は、作者を彷彿させる主人公です。しかも、作者は憂いを帯びたイケメンで、父親はBUCK-TICKのボーカル櫻井敦司氏。今年下半期の芥川賞受賞作。
☆「破局」遠野遥著 (河出書房新社) 1540円(税込み)
いまどきの慶応ボーイの生活、就活ってこんな感じかな、と勝手に想像してしまいます。文章が上手くて、最後まで読ませますが、途中までは二人の女性の間は行き来する主人公に少し呆れます。政治家志望の麻衣子、地方出身の灯、という女子学生はいかにも慶応にいそうだな、と。受賞後のインタビューで作品のパンチラインは灯と一緒に傘に入るところ、とのこと。筋トレ、母校の高校でのラグビー指導、公務員志望など一見堅実な主人公の生活習慣があり、恋愛で見せる戸惑いや自我は、都会に生きる学生ならではなのかもです。