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わたしの本棚88夜~「MIDNIGHT SWAN」ミッドナイトスワン
映画と小説。映画を観たら、原作を読んでみたくなります。小説が映画化されると、映画も観たくなります。わたしのなかでは、映画と原作小説はリンクしています。ただ、全くの別物として鑑賞した方がいいとは思っています。どうしても小説を先に読むと映画に矛盾をみつけてしまいがちになるからです。この作品、去年、映画を観て、今年に入って、小説を読みました。
☆「ミッドナイトスワン」 内田英治著 文春文庫 700円+税
映画は草なぎ剛主演で、トランジェスター役とともに話題になりました。
わたしは、草なぎ氏の熱演は認めるものの、映画の成功は一果を演じた新人の服部樹咲さんだと思いました。長い手足とともに、バレエを演じる容姿の美しさ、実際にバレエコンクールでの入賞経験に基づく演技だと思いました。
小説では、冒頭から「少女は眩しい太陽をただ見つめているのが好きだった」という感じで主人公凪沙の心理描写がかなり書き込まれいて、トランジェスターとして生きる彼女の苦しみ、孤独がわかりやすかったです。
故郷の東広島市を離れ、新宿のニューハーフショークラブで働くトランジェスターの凪沙。育児放棄された、中学生の一果を預かることになります。都会の片隅で暮らし始めたふたり。一果は故郷の西公園でギエム先生からバレエを教わったことがあり、母親の虐待生活のなか、その思いでは楽しいものでした。
叔父と思っていた凪沙が女装しており、知り合いもいない都会で、彼女を慰めてくれるのは、学校帰りにみかけたバレエ教室でした。小説では凪沙の同僚瑞貴が行政書士をとり、区会議員を目指していたり、一果のバレエとの出会いの部分、ギエム先生のことが書かれていたりしました。バレエを習いだした一果は、りんという友人もでき、コンクールに出るようになります。一方で凪沙は、一果を娘のように思うようになり・・・。
映画も小説もラストは切なかったです。白鳥のシーン、白鳥にこめられた思いは・・・。内田英治氏の原作、脚本、監督のせいか、かなり小説と映画重なっていました。トランジェスターの役は海外ではカミングアウトしている俳優さんが演じること多いそうですが、日本はまだまだ後進国であり、おらず、草なぎ氏に頼んだと内田氏がインタビューで答えておられました。ジェンダーについて、いろいろとかんがえさせらる部分のある小説でした。
#ミッドナイトスワン #内田英治 #トランジェスター #文春文庫