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わたしの本棚

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#角川文庫

わたしの本棚78夜~「ジョゼと虎と魚たち」

わたしの本棚78夜~「ジョゼと虎と魚たち」

 田辺聖子さんの作品で、一番感動したのは、「花衣ぬぐやまつわるーわが愛の杉田久女」(集英社文庫)です。俳句を初めてすぐのころに読んで、号泣しました。田辺聖子さんの小説の中では、この短編小説も好きです。今、タムラコータロー監督でアニメ化されて映画公開中です。2003年に犬童一心監督、(主演妻夫木聡、池脇千鶴)で実写化もされ、そちらの方は、劇場で観ました。映画を先に観て感動し、数年たってから小説(原作

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わたしの本棚68夜~「人間失格」

わたしの本棚68夜~「人間失格」

 太宰治の作品は高校から大学にかけて読んで、2010年荒戸源次郎監督、生田斗真主演での映画、2019年蜷川実花監督、小栗旬主演の映画、両方とも観ました。本棚にあったのは、平成22年改訂15刷版の値段です。太宰治は、教科書にあった「走れメロス」も「桜桃」も好きですが、「人間失格」の第一記の「恥の多い生涯を送って来ました」という文章は、失敗したとき、恥をかいたときに、なぜか脳裏にいつもあらわれ、励まし

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わたしの本棚63夜~「アルケミスト」

わたしの本棚63夜~「アルケミスト」

 全世界81カ国に翻訳されている本であり、世界的ベストセラーです。わたしが持っているのは、平成20年32版の文庫本の値段です。パウロ・コエーリョのデビュー作は「星の巡礼」で、日本では黛まどか氏が俳句を読みながら、そのスペインの道、720キロを歩いたことでも有名になりました。この本は、彼の名前を全世界に響かせたベストセラー小説です。

☆「アルケミスト」パウロ・コエ―リヨ著 山川紘矢+山川亜希子訳 

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わたしの本棚62夜~「冷静と情熱のあいだ」

わたしの本棚62夜~「冷静と情熱のあいだ」

 今は、フランス在住でシングルファザーとして、ひとりで息子さんを育て、週刊誌にその成長エッセイを書いている辻仁成氏ですが、芥川賞作家です。辻仁成氏の作品は、すばる文学賞受賞作の「ピアニッシモ」から、「サヨナライツカ」までは、ほとんど読んでいます。いじめを扱った純文学の芥川賞受賞作「海峡の光」や自伝的小説「刀」も良かったですが、やはり、江國香織氏と文通のような連載形式で繰り広げらえたこの小説は深く残

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わたしの本棚53夜~「滑走路」

わたしの本棚53夜~「滑走路」

 歌集も基本的には贈呈しあうので、自費出版です。そんな中、この本は2017年に上梓され、ベストセラーとなり、今年文庫本化され、また大庭功睦監督で映画化もされました。文庫本には、作者のあとがきの他、師である三枝昴之氏の単行本解説、ご両親の「きっとどこかで」、又吉直樹氏の解説が載せてあり、どれも素晴らしく、歌集と合わせて読むと、32歳の短い生涯を思うと、涙がこぼれます。

 しばらく前の読売新聞の人生

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わたしの本棚52夜~「蜜柑」

わたしの本棚52夜~「蜜柑」

 芥川龍之介の短編小説のなかで、一番好きな小説です。わたしが持っている文庫本は、表題作の「舞踏会」と「蜜柑」を含め16の短編を収めています。昭和55年1月発行の第18版で、値段はそのときの価格です。今では文庫本の紙がセピア色に変色してしまいましたが、「蜜柑」は何10回と読んだ小説です。

☆「蜜柑」芥川龍之介著 角川文庫 260円+税

 文庫本で5ページ足らずの短い掌小説です。横須賀発の列車に乗

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わたしの本棚30夜~「夏子の冒険」

わたしの本棚30夜~「夏子の冒険」

 今年は三島由紀夫が死んで50年になるそうです。そのせいか、2020年夏の角川文庫フェア100選のなかで、この作品が含まれており、ジャケ買いしました。1953年には中村登監督、角梨枝子主演で映画にもなった作品で、生まれる前のことで観てないですが、評判だったそうです。「夏子の冒険、読みましたか? 観ましたか?」って年配の方に数回、聞かれることがあったので(わたしの名前が夏子なので)、ようやく文庫本再

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