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#新潮社
わたしの本棚103夜~「空白の天気図」
緻密な調べによる熱量のある本でした。読後、ずっしりと胸に迫るものがあって、読書の幸福感を味わえた本です。
2016年公開の片淵監督「この世界の片隅に」を30分長くした(シーンを増やした)2019年公開の「この世界のさらにいくつもの片隅に」のDVDを借りてみました。そこには、広島原爆のあと、9月17日の枕崎台風による被害も描かれていました。主人公すずさんの住む呉市の北条家も屋根が壊れ、家の浸水
わたしの本棚101夜~「オルタネート」
直木賞候補、本屋大賞候補、吉川英治文学賞新人賞受賞作です。著者がジャニーズの加藤シゲアキ氏というので、話題が先行しましたが、現代の都会の高校生の青春群像劇として、面白く読みました。
オルタネートという高校生限定のアプリを鍵にし、「ワンポーション」というネットでの調理選手権といった今風の環境のなか、ラスト、文化祭での悲喜こもごもへとの加速は、読後感が爽やでした。
☆オルタネート 加藤シゲアキ
わたしの本棚35夜~「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」
34夜の「かがみの孤城」が全くのフィクションでSF的な要素もあるなかで、中学生のいじめを扱ったものでありましたが、この作品は、ノンフィクションでイギリスの格差社会の中での学校生活、いじめなどを扱ったものでした。こちらは主人公である母子がまっすぐで、できすぎ感がありましたが、時に涙しながら、イギリスの格差社会、教育間格差など、知らなかった世界でもあり、興味深く読みました。
☆「ぼくはイエローでホワ
わたしの本棚24夜~「デトロイト美術館の奇跡」
小さいころから成りたい職業があったりする人は稀で、たいがいの人は18歳のとき、ぼんやりと自分の将来を想像するのではないでしょうか。卒業して就職してしまうとそれまでで、日々の生活に追われてしまいます。作者の原田マハさんは関西学院大学文学部を卒業したのち、就職し、美術関係の職業に就いたこともあり、もう一度、早稲田大学第二文学部美術学科を受けなおしたという経歴の持ち主です。美術に関する豊富な知識から紡
もっとみるわたしの本棚21夜~「君がいないと小説は書けない」
表現者は覚悟がいる、と言った女の先輩がいます。自分をさらけだす覚悟がないと良い作品は生まれない。なかでも小説家は、闇の部分をさらけだす覚悟がいる業の深い職業だと思います。白石作品の中では、直木賞受賞作「ほかならぬ人へ」が好きで、恋愛小説の名手と思っていた氏にもこんな辛い体験があったとは、自伝的体験のこの小説を読んで、改めて、書くことの業の深さを感じました。
☆「君がいないと小説は書けない」白石