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わたしの本棚

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2021年9月の記事一覧

わたしの本棚124夜~「<あの絵>の前で」

わたしの本棚124夜~「<あの絵>の前で」

 原田マハさんの小説が好きです。美術の知識に裏打ちされた作品は、小説を読む楽しさとともに、絵画を知り、絵の作者を知り、行間から豊穣な作品世界を教えてくれます。この本は、6枚の絵に因む物語です。それは、帯にあるように、人生の脇道に佇む人々が<あの絵>と出合い、再び動き出す。どこかの街の美術館で、小さな奇跡が今日も、きっと起こる、そんな6編の市井の人びとの物語でした。史実に基づいた「デトロイト美術館の

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わたしの本棚123夜~「傾山」

わたしの本棚123夜~「傾山」

 船団の先輩の第一句集です。静岡県にお住まいで、「逢」で12年、「船団」で8年、現在は「海原」に所属されています。句歴22年だそうです。扉の絵を弟の後藤秀宣氏、帯文と跋文を坪内稔典氏が書かれています。(写真はふらんす堂hpの編集日記さんより借りました)

☆「傾山」 後藤雅文著 ふらんす堂 2750円(税込み)

 句集名の「傾山」は山口青邨の「祖母山も傾山も夕立かな」の大分県の傾山で、著者の故郷

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わたしの本棚122夜~「レースの村」

わたしの本棚122夜~「レースの村」

 紅茶とマードレーヌを用意して読みたくなるような、お菓子缶のような素敵な装丁に、小説の不思議な内容を彷彿させ、うっとりしました。著者の片島麦子さんは、第28回大阪女性文芸賞佳作受賞者で、受賞作の「透明になった犬の話」を含む4つの短編小説からなっています。どれも不思議な設定なのですが、読後感が良くて、はかなさと切なさと哀愁がありました。帯は、翻訳家で早稲田大学教授の松永美穂氏で「幽霊の世話する人々、

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わたしの本棚121夜~「鬣第80号」

わたしの本棚121夜~「鬣第80号」

 8月から9月にかけて、友人が数人SNSをやめたりしたので気落ちしてしまい、すっかり更新が遅くなりました。毎日更新できる人はやはり凄いエネルギーだと思います。

 俳句誌の鬣第80号は、創刊20周年記念号です。おめでとうございます。記念号として、特集坪内稔典100句を読む、です。初めて、この俳句誌を読ませていただき、散文(論考・鑑賞文)が多くびっくりし、読み応えありました。鬣の林桂氏が選んだ100

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