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わたしの本棚

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2020年11月の記事一覧

わたしの本棚58夜~「朗読句集・チンピラ」

わたしの本棚58夜~「朗読句集・チンピラ」

 11月も終わります。心配しましたが、更新できており、とりあえずは60夜までは行けそうです。小西昭夫氏の第4句集です。今年の1月に発行されました。あとがきによると居酒屋での四方山話の中で、この朗読句集をつくる話は生まれたとあります。文庫本サイズの手軽感のある句集です。

☆「朗読句集・チンピラ」小西昭夫著 マルコボ・コム 1000円+税

 四国松山を拠点として、俳句を発信している「子規新報」(創

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わたしの本棚57夜~「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」

わたしの本棚57夜~「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」

☆「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」山口周著 光文社新書 760円+税

 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が叫ばれ、世界のエリート、経営者は感性を鍛える傾向にあるといいます。論理的に白黒のはっきりつかない問題について答えを出さなければならないとき、最終的に頼れるのは個人の美意識しかない。そのため、哲学を鍛えられた欧州エリートやアートスクールに幹部を送り込んだり、早朝のギャラリー

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わたしの本棚56夜~「道ありき」<青春編>

わたしの本棚56夜~「道ありき」<青春編>

 幼少期に、近くの教会に通った経験は、わたしにとって「死」の考え、とりわけ自殺は絶対してはいけないという考えを植え付けました。社会人になって、仲のよかった友人が信仰を受け入れたとき、わたし自身に迷いもありましたが、なぜか三浦綾子さんの本を読み続けました。「塩狩峠」や「氷点」といった小説に涙しましたが、やはり自伝的小説である「道ありき」三部作は大きな感動をもたらしてくれ、当時、悩めるときに読み返し、

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わたしの本棚55夜~「月の落とし子」

わたしの本棚55夜~「月の落とし子」

☆「月の落とし子」穂波了作 早川書房 1800円+税

 面白く一気に読みました。発想というか、ありえそうな話から入り、今、現在を予測したような展開は、ページをめくる手がとまりませんでした。

 人間の進歩を証明するための有人月探査「オリオン計画」で、月面に立った宇宙飛行士が、未知のウイルスに感染する、という設定。近未来、ありえそうです。宇宙とインターネットはまだまだ未知の部分の多い領域であり、人

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わたしの本棚54夜~「読みたいことを、書けばいい。」

わたしの本棚54夜~「読みたいことを、書けばいい。」

☆読みたいことを、書けばいい。田中泰造著 ダイヤモンド社 1500円+税

 元電通マンの田中泰延氏が47歳で青年失業家となり、フリーランスで働くうちに気づいたこと。文章の書き方、どんな文章がバズるか、支持されるかを就活のエントリーシートの書き方も絡めて書いてくださっています。

 シンプルです。「自分が読んで面白い文章を書こう」につきる話です。

文章は、随筆やSNSの短文からして、「何を書くか

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わたしの本棚53夜~「滑走路」

わたしの本棚53夜~「滑走路」

 歌集も基本的には贈呈しあうので、自費出版です。そんな中、この本は2017年に上梓され、ベストセラーとなり、今年文庫本化され、また大庭功睦監督で映画化もされました。文庫本には、作者のあとがきの他、師である三枝昴之氏の単行本解説、ご両親の「きっとどこかで」、又吉直樹氏の解説が載せてあり、どれも素晴らしく、歌集と合わせて読むと、32歳の短い生涯を思うと、涙がこぼれます。

 しばらく前の読売新聞の人生

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わたしの本棚52夜~「蜜柑」

わたしの本棚52夜~「蜜柑」

 芥川龍之介の短編小説のなかで、一番好きな小説です。わたしが持っている文庫本は、表題作の「舞踏会」と「蜜柑」を含め16の短編を収めています。昭和55年1月発行の第18版で、値段はそのときの価格です。今では文庫本の紙がセピア色に変色してしまいましたが、「蜜柑」は何10回と読んだ小説です。

☆「蜜柑」芥川龍之介著 角川文庫 260円+税

 文庫本で5ページ足らずの短い掌小説です。横須賀発の列車に乗

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わたしの本棚51夜~「シネマ落語」

わたしの本棚51夜~「シネマ落語」

今では、テレビのMCやコメンテーターとして有名な立川志らく師匠ですが、劇団を立ち上げたり、シネマ落語を創作したり、一門の俳句の宗匠をされたり、多方面で活躍される方です。映画と落語をドッキングさせたシネマ落語は師匠の創作落語で、映画を知って聴くと古典落語を知りたくなり、古典落語を知って聴くと映画を観たくなり、両方を知っていると、その世界にはまってしまいます。わたしが購入したのは、2010年1月18日

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わたしの本棚50夜~「ネット興亡記」

わたしの本棚50夜~「ネット興亡記」

☆「ネット興亡記」敗れざる者たち 杉本貴司著 日本経済新聞出版 2000円+税

 わたしのように市井の普通の主婦が読んでも面白かったです。あとがきに著者が記されているように、インターネットの興亡記を検証することは大切で、そこに熱烈な人間ドラマがあったことを知ることにもなります。挫折や裏切りを知って胸を痛めたり、成功や希望を願ったり、わくわくする瞬間をたどって共有することもできました。

 今、イ

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わたしの本棚49夜~「焼身」

わたしの本棚49夜~「焼身」

 宮内勝典さんや藤原信也さんの担当がしたい、と言って、編集者になった友人がいました。出版社に入社したけれど、結局、担当できたのかな、と本を取り出し、思い出しました。2000年から2010年にかけて、インターネットが急速に発達し、世界と通じあえる世の中に激変しましたが、それまでの世間はバブル後で停滞しており、そんな中、世界を歩いて、さまざまな問題意識を宮内先生たちは発してくれました。「宮内は筋金入り

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わたしの本棚48夜~「錦繡」

わたしの本棚48夜~「錦繡」

 宮本輝さんの小説は、河(泥の河・蛍河・道頓堀河)の三部作も好きですが、やはり「錦繡」が一番好きです。紅葉の蔵王に行ってみたくなります。書簡形式は、インターネットやSNSが発達した今では珍しいことですが、抒情豊かで、想像力が膨らんで好きです。わたしのなかでは、連城三紀彦氏の「北京の恋」という短編小説と双璧をなす書簡形式の傑作です。文庫本の値段は、平成二年十七刷のときのものです。

☆「錦繡」宮本輝

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わたしの本棚47夜~「新とどのまつり」

わたしの本棚47夜~「新とどのまつり」

 坪内稔典先生の大学のころからの友人で、船団の本や雑誌に関わってくださり、その縁で贈呈していただいた著者の第3句集です。面白がる、言葉遊び、言葉の必然性・・・。広告代理店におられたそうで、言葉自体に重きをおいたつくりが楽しい句集です。

☆「新とどのまつり」松山たかし著 象の森書房 1500円+税

帯に坪内先生が書かれているように、「俳人のなかには、言葉遊びを否定するか、程度の低いものとして蔑視

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わたしの本棚46夜~「樹勢」

わたしの本棚46夜~「樹勢」

名村早智子先生と初めて会ったとき、僭越ながら、亡くなった母を思いだしました。容姿が似ており、声と話し方も似ています。凛とした芯の強さと大きな優しさのある人で、俳句に関する熱い情熱は、討論となっても引かない姿勢にも通じると思いました。

京都を中心とした「玉梓」という俳句結社の主宰であり、会員は300人を超え、10の句会があるそうです。今年15周年を迎えるそうです。

☆「樹勢」 名村早智子著 角川

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わたしの本棚45夜~「戻り川心中」

わたしの本棚45夜~「戻り川心中」

 学生のころ、連城三紀彦さんの小説に出会って、その流麗な文体と謎解きの多い展開に酔って、感動したことが度々ありました。臆病だったせいもあり、恋に恋するような感じで連城さんの小説は愛読しました。エッセイも面白く、そこにカッコイイ友人として描かれる荒井晴彦さんたち映画人の話とか楽しく読みました。彼ほど、作家仲間から尊敬され愛された作家も少ないのでは。65歳で亡くなったせいもあり、偲ぶ会はもちろん、綾辻

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