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還暦は、二度目のハタチ。


2024年3月 毎週カカカ、独特の宝庫へ。


カーブスとはそういうところ

 肩からの石灰は、肩からの善きお節介となって私を覚醒させた。

「いい機会ですから受けてみてはいかがですか?
50代以上の女性には皆さんお勧めしています」

 激痛から救ってくれた医師にそう言われて受けた骨粗鬆症検診で、私は「予備軍」と判定されてしまったのだ。

 年中無休の安定した食欲を誇り、何でも美味しく食べられる自分が、骨粗鬆症予備軍だなんて。背丈は低いが体型も骨格も割としっかりしているタイプだと思っていたので、骨密度が低めと知って驚いた。

 同じくらい驚かされたのは、体組成検査で “軽度肥満” に分類されてしまったことだ。禍々しき四文字。軽度とは言え、まさか肥満とは。洋梨体型になってきていることは薄々感じていたが、そこまでの自覚はなかっただけに衝撃だった。
 しかし今にして思えば、特茶のCMで初めて「腹部全脂肪」というワードを耳にした時、えらく反応していた自分がいた。私に自覚はなくとも、黙々と肥満道を歩み始めていた私の身体は、先に反応していたのかもしれない。

 身体測定の結果も私を震撼とさせるものだった。
 ただでさえ貴重な身長が、若かりし頃より1cm以上縮んでいる。縮んだのは胴体か? いや、たぶん首か脚だ。そして体重。きっちり8kgも増えているではないか。末広がりを連想させる数値が恐怖を増幅させる。

 8kgとは、どういうことか。モジモジくんのようなボディスーツを着て、首元から少しずつ米を流し込んでいく様子を想像してみる。
 10kg入り米袋の中身がボディスーツの中にザザ、ザッと注ぎ込まれていく。腰周り、詰め終わった。腹周り、1本2本と浮き輪が積み上がっていく。米、まだまだある。腕を少し上げてみよう。入る入る。脇から肩甲骨の辺りまで。二の腕の下には隠しポケットでもあるのか、面白いほど入っていく。

 8割がた詰め終わったら、米袋を床に置き、ジッパーを静かに引き上げて鏡の前へ。そこにいるのは究極のボディコンシャスな私。つまり、黒いミシュランマンだ。

 思えばかれこれ5年以上、体重を量っていなかったと思う。加齢とともに、増えた減ったで一喜一憂するのが面倒くさくなったのと、流行のファッションとも完全に縁が切れたからだ。
 その結果が、体脂肪率33%。見た目ぽってり、中はスカスカ。いつのまにか自分はかなり危険なゾーンの一歩手前まで来ていたことになる。

 まずい・・・こんなからだでハタチだなんて。次の還暦まであと40年、達者でなくちゃいけないのに。
 私は、数日の逡巡を経て、ついにカーブス入会を決意した。
 筋骨強化のため、体脂肪を減らすため。動画を真似ての自己流ではなく、継続して結果を出し、健康を維持していける運動習慣を、との一念発起からである。

 カーブスは以前から姉に勧められていた。ちなみに姉はカーブス歴8年、体脂肪率24%だ。
 無料体験を申し込み、指定の日時に運動靴を持って出向く。間仕切りのないカーペット敷きの大空間で私を迎えてくれたのは、腰を下ろし、上半身をひねって小ぶりのトドのようなシルエットでこちらに真顔を向けている、シニアなご婦人達であった。

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