One minute in heaven
僕は時間能力者になった。雑だけど他に言いようがない。と言っても、せいぜい2秒ほど時間を止められる程度だ。
2秒でできること。何かできそうだけど、何もできなさそう。まずはお金を稼ぐことを考えた。普通の男子高校生でも大金を手にできる方法を考えたけど、何をするにも2秒では短い。
自分が人間ではなくなっていく不安も薄々とあった。この能力で法に触れることなく何かができるし、したくなるだろう。しかし倫理的に人の道から外れてしまうだろうし、その時に何も感じないのなら、僕は人間と言えるのか。そんな漠然とした不安だ。
家族にも友達にも相談はできない。変な目で見られたくない。でもそれが真実だとみんなが知った時、どう思われるだろう。考えたくもない。
ひとつだけ言えるのは、この能力を映画のような派手な戦闘で使うことは避けたかった。正確には、そんな厄介ごとに巻き込まれるのは避けたかった、が正しい。
それは残念ながら過去形だ。
【続く】