
現代に生きる原始の名残り:噂とSNSの関係
現代のSNSで見られる「他人の評価に対する過剰な反応」は、実は承認欲求だけではなく、私たちの進化の歴史に深く根ざしていると岡田氏は言います。
人間がする会話の中身は自分の話と人のうわさが6割だと言われています。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』によれば、噂話は人間の社会的ネットワークを構築し維持するために重要な役割を果たしてきたと述べています。
狩猟採集時代には、噂を通じて他者が信頼できるかどうか、危険な人物が誰かを共有することでグループ内の協力や生存が促進されました。この時代の10~15%の頭蓋骨の左側にくぼみがあるのが発見されています。これは右利きの人間に石で殴られた後なのです。この時代、役に立たない人間を排除することで、グループの進化が促進されてきたのです。
狩猟採集時代には、知り合いによる殺人が一般的でありましたが、農耕時代になると仲間による殺人が増え、その数は20%に高まったとされています。集団で生活するようになると、人間関係のトラブルが頻繁に発生し、しばしば「仲間内での殺人」が起きたと考えられています。こうした事実から、人々は有益な人間として認められなければ生き残れない社会構造の中で生きていました。そこで自分をアピールし、他人に噂話をするようになったのです。
人間の脳が多くの人々の情報を処理するのには限界があると述べています。人間が本来知り合いとして交流できるのは「ダンバー数」として知られる150人が上限とされ、これを超えると脳は過剰なストレスを感じます。現代のSNSは、私たちにとって本来の交流人数を超えた100万人、1億人という、知らない人からの情報や噂話が入ってくるために、脳の対応能力をはるかに超えた負荷をかけています。結果として、SNS上での自己アピールや、他人への攻撃が止まらなくなってしまうのです。
美味しい食べ物の写真をシェアしたり、自分の価値を証明するための投稿を行う行動も、かつては仲間内での地位を確保するための手段でした。その結果、現代人は過剰な自己承認欲求や承認への不安に駆られやすく、SNSでの批判や噂が脳内の警報装置を鳴らし続けてしまうのです。
こうした人間の機能を理解することで、現代のSNSにおける過剰な評価や噂話の拡散に振り回されず、本当に大切なつながりや自己評価に目を向けることができるようになるかもしれません。
いいなと思ったら応援しよう!
