よっかめ:文章能力向上(できるのか?)週間 ちょっと怪談。
無事に三日坊主を回避して、四日目です!
夏だし、暑いし、ムシムシしているし・・・こんな夜は『怪談』で涼しくなるしかありませんね👻
舞台をしていると、もちろん劇場にいることが多くなります。劇場みたいに人がたくさん集まるところには幽霊も集まるとか。
或る公演の時。
その頃は私の住んでいる福井に某劇団の方が作った小劇場があり、よくお世話になっていました。本番があるときはスケジュールが空いていれば一カ月ほど、稽古や建て込み等で自由に使うことができました。
その作品の演出をしていた私は毎日の稽古と装置の調整に忙しく、でも楽しんでいました。役者さんたちも楽しんでいるようで、少々いたずらをする、やんちゃな役者もいました。
その時の舞台装置は、下手側(客席から見て左の方)の壁が少しスリット(隙間)が上下に何本か入るようにありました。客席からは隙間が分からないようになっていますが、とあるシーンで後ろから光を当てるとそのスリットから光が漏れる仕組みです。
そのやんちゃな役者はある日の通し稽古で、そのスリットから客席からわかるように覗いたり、指を出したりしていたずらしていました。楽しくなっちゃっているのは分かっていたので、「スリットが広がっちゃうから指は出しちゃだめ!」とだけ注意して、数日後、リハーサルを迎えました。
リハーサルは滞りなく進み、私は演出として演技はもちろん、装置の見え方などをチェックして、本番は大丈夫だなと一安心しました。
リハーサルが終わり、カーテンコールも終わったとき、ある役者がやんちゃな役者に「またいたずらしてたでしょ!」とあきれた様子で言いました。
私は全然気づかなかったので「そうなの?」と確認したところ、「いや、なんもしてないよ!リハで変なことはせんよ!」と本当のことを言っている様子。「だって、またスリットから手出してたでしょ!」言い出した役者も真剣です。
いや、まって・・・・・・手?
スリットは細いです。手を入れたらスリットは確実に壊れます。
確認しましたが、スリットはどこも壊れていません。
「本当に?いつ見たの?」「最後のシーンの前・・・」
最後のシーンでは壁の裏から照明をあてて、光がスリットから漏れる演出です。もし人がいたら、陰になってきれいに見えません。客席から見ている私が気づかないはずがありません。それにもし素早く移動したとしても、照明器具の置き場があって複雑で簡単に移動できません。・・・やはり不可能です。
「前の公演で『手が見えた』って言われたことあるんだよね・・・」
客演していた役者がボソッと言いました。
スーっと何かが背中を走りました。
・・・もしかしたら、その小屋の主みたいな人がいるのかもしれない。悪いことはしていないのだから、守り神みたいな、芝居が好きな幽霊かもしれない・・・ということに落ち着きました。
それから私は、その小屋に入るときには「よろしくおねがいします」と言いながら一礼して入り、戸締りするときは「ありがとうございました」と言いながら一礼してかえるようになりました。
本番はもちろん、その後、私の関わる芝居で手を見たということはありませんでした。それどころか、他の人が使った時に聞くような機器のトラブルもほとんどありませんでした。
・・・きっと見守ってくれていたと思います👻
芝居好きの、その小屋の守り神だったんでしょうね。
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