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ミュージカル『太平洋序曲』感想②

ミュージカル『太平洋序曲』感想①|朱夏|note
こちらの続きです。

《Attention》
・立石万次郎と香山中心に書きます(ほぼ香山…の話)
・語尾統一はあまりしていません
・過去ツイートしてる内容と重複部分があります
・意見には個人差がありますので生ぬるい目でお読みください
・頭に浮かんだことをつらつら書いていきます

こちらではもう8割くらいボウラーハットの話になる予感がいたします。あとは光と影、月と太陽、身分意識について、この国が得たものと失ったもの他、それぞれ簡単に備忘録として書いていく予定です。意外と多いな終わるのかなこれ…。

It's called a bowler hat.

このボウラーハット…。これだけで永遠に語れる。見どころ満載で何度見ても目が足りませんでした。とても敗北。

そして、この曲を語るには英文歌詞を読むのが手っ取り早い。きっとこれを読めば、香山がどのように、どうして変わっていったのか。すっと理解が進む気がします。もうこれが全てといってもいい…。
Bowler Hat Lyrics - Pacific Overtures musical (allmusicals.com)
DeepL翻訳:高精度な翻訳ツール

さて、舞台のほうに話を戻しますが、香山は西洋文化に、万次郎は武士道に傾倒していきます。これ、とても書き方が難しいので香山から書いていくと、最初は質素な部屋の様子だったところから、アンティークな机やインクペン、ティーセット、西洋の書物やら段々と増えていき、装いもまるで上流階級のような衣装に変化していく。(洋装した香山さん最高に素敵だった)そうして、すっかりと西洋の装いに包まれ、身分も財産も地位も手に入れた香山。でも、英文歌詞を読むとよくわかるのですが、すべてを手にしたかのように見えて全く”心が満たされていない”気がします。こういうタイプの男よく居ますよね。すべてを持っているのに、何かが足りない。そう、そういう男好き!!

あと何度でも言うけど、海宝香山さんが使用人に紅茶注いでもらう時に絶対に「紅茶の前にミルクね!」って笑顔で言ってた。影芝居で言ってたと思う!双眼鏡で口の動き見てたけどきっと言ってました。きっと。

話を戻しますが、何を手にしても彼は満足しないので、新しいものを手にしては次、さぁ次は?という感じで歌は続いていきます。ここは廣瀬さんの虚無感がとても美味しかったな~と思います。あと香山が味わい深いのは途中で「どこだ、ボウラーハット?」っていうところ。ここが本当に良い。かつて、大切にしていたものを失ったことの暗喩と言っていいのか微妙ですが。この言葉は香山が持っていた「たまてへの想い」だったり、「万次郎との友情」だったり、「彼本来の優しさ、寛容さ、柔軟性」を失ったということなのかな~と思います。そして新しい妻に手を引かれて新しい装いに身を包む。とても残酷で好き。

ぶっ飛びますが、ボウラーハット英文歌詞では「They send me wine.~We serve white wine.」という箇所があります。本作品冒頭、美術コレクターのギャラリーで、万次郎ウエイターがワインボトルをお客様(正確には前世お世話になった南国の武士おじさまですが)にボトルを持ちながらワインの紹介しています。これは、この辺りの描写なのかな~と思ったりしています。

あとは、ボウラーハット終わりに差し掛かると香山は拳銃を取り出して、いじったりしてますよね。確か何処か遠くを見ながら。これは、この後にくる場面への伏線だったりするのでしょうが、今思えば、きっと香山はすでに尊王攘夷派ほか西洋反対勢力から命を狙われることが常日頃からあったのだろうなとも思います。あと印象的なのは歌終わりで胸の前で十字きるところ。彼はついにキリスト教徒になったんだ…。と分かります。

「人は時代に順応しなければならない。」香山が歌うこの曲は、地位と権力、そして富によって人は変化していくものだ、という点と、それなしにしても人というものは良いようにも悪いようにも、木の葉のように移り変わるものなのだと再認識させられます。その人生を受け入れて、流されて、彼が行きついた場所なのだとしたら…はやくたまてさん迎えに来て!!となる。語彙が足りなくてまとめられないので次!香山のこと書きすぎ!

万次郎ですが、もう武士の装いですね。もう顔が良かったのと照明が青白い印象が強すぎるのですが。この青白さは、香山を照らしていた温かみのある照明と真逆でこれも面白いです。そして万次郎側は終始とても質素、余計なもの一切を取り払ったような印象でその照明の青白さが彼の研ぎ澄まされていく様子を一層に際立たせていると思います。なんていうか、日本刀の鋭さ…かな。(フォロワさんも言ってたような…?)ここでは居候していたお屋敷のお嬢様である千代ちゃんとの絡みがあって、初日でわたし、この2人は想い合っている!!と敏感に察しました。これがprettyladyに続くの…良くできたお話ですな狂言回しさん…。

あと印象に残っているのは、日本刀を手にした万次郎が抜き身のその刀身を掲げてじっと見つめている表情。これは、決闘場面を暗示させる演出だと思いますが、とても良かった。香山さんは拳銃を取り出してじっと見つめる箇所もありましたね。

で!!ここで書いておきたいのは、この居候生活をしていく中で、万次郎は西洋人が入ってきたことによって引き起こされた多大なる弊害に気が付いたのではないでしょうか。万次郎は当初、アメリカはすごい国だ、自由で、圧倒的に進んだ文明国だ。だから日本も開国してそれを受け入れ、前に進むべきだ、といった簡単にいうと良い面、光の部分しか見えていなかったのではないか。それが、この武士道を歩んだことによって、その影の部分を知ることになる。だから香山の照明は明るくて、万次郎は薄暗く青白く照明になっているのかな~。

そして、香山と万次郎の決闘シーン。言いたいことは山ほどあるけど、まず刺客が万次郎だと気が付いた香山、狼狽えたように彼を責めます「そなたが一番に西洋人を迎え入れた張本人じゃないか」とてもつらい。万次郎「あの時の自分は愚かで、獣以下の存在だった」(うろ覚え)このあたりの立石万次郎なんというか最高でしたね。語彙どうした。

といっても大切な千代ちゃんが海兵たちに襲われて、南国の武士であるお世話になった人は罪人みたいになっている。それはあんな表情になりますよね。系統でいうと黒執事のセバスチャンみたいな…温かい人の感情を全部捨てて復讐にきました。みたいな。とても好きだった。老中万次郎(仮)からの大変化。つよい。この作品で良かったな~と思うのは万次郎という役だけど時の流れに沿って、万次郎の人間性や表情、台詞感などが変わっているのが観られたこと。1役で3役観られた!最高!的な感じ。語彙どうした。

脱線しましたが重要ワードは香山の感情が高ぶり最骨頂で苦しそうに絞り出し、万次郎に言い放った「漁師…!!!」という台詞です。これ『ただの漁師だったお前がこんなことしていいのか?元来、武士でもなんでもないお前が???』というニュアンスを含んでいると思います。ここで思い出したい。香山と万次郎に友情が生まれた瞬間に交わした言葉。

万次郎「漁師であるわたしを”友”と呼んでくださるとは」

言わずもがな当時、武士と漁師では身分が全く違います。けれど、香山はそれを気にしない男だった。だからこそ、あの時、万次郎はここは日本じゃない、アメリカだ…といった。香山が少なからずも、そういう思考の持ち主だったから。
しかし、こういった身分に対する香山の意識変化はすでに、帝が功績を讃えて万次郎へ「武士」にするねって身分を授けたときの香山の反応があれっと感じで違和感がありました。友と呼んだ彼が出世するのは喜ぶべきことなのに、ちょっと訝しげにしてた気がします。(なんで?みたいな。)万次郎も「は?」って言ってたけど。
あとはボウラーハットでもそうで、これは狂言回しが、香山から将軍への手紙を読んでいる箇所ですが「社交場には、それなりの服装をしていかねばなりません。いける人はそれなりの身分がないと駄目です」とかなんとか…。つまり、自分は上流階級の特別な人間だという香山の強い意志を感じます。将軍に対してあと結構強めにいうよね・・。こういった背景を考えて・・・また、ちょっと戻るんですが、香山という男は元々・・・魚を釣って暮らしていた平凡な男だったわけです。

つまり、生まれながらにして漁師だった万次郎と何ら変わりない。ただ、武士という身分があっただけで、自分もほぼ漁師だったわけです。これが最高に皮肉でイギリス…を感じますね。これがミソといっていい…。(言い過ぎ)

あと覚えておきたいのは香山が万次郎に切られたあとの倒れ方かな。海宝香山は結構がっつり切られた感あって、上半身もぐらりと倒してた感じする。廣瀬さんは膝たちして首だけがガクッと下がっている印象。あと忘れられないムーンゲートで待つ、たまてさんに近いて、その頬に手を伸ばす香山…。ほんとに良かった…。

あとはつらつらと書いていきますが、将軍が退場してドバーンと煌びやか将校軍服きている狂言回し。我こそは明治天皇なりって言われた瞬間「そんなことある?????」って感じだった。あります。

結局のところ、これは将軍の支配下にあった、帝の逆転劇だった。狂言回しはずっと、この時を待っていた。万次郎という異物が、西洋人を引き入れ、幕府を混乱させて、トップを引きずり下ろす。そして日本の象徴である帝=天皇をトップにする役割を担っている。うーん良いように使われた万次郎…。なので、なのでというか、香山を切ったあとの万次郎の表情はとても難しくて…。難しいし観た人にはそれぞれの感想があると思いますので言及はしません。ただ、彼もほかに道はなかったのだろうか…とは思っていそうだなと感じました。

そのあとの狂言回しの台詞やNextについて語るとまた違う話になりそうですし、ここはかなりセンシティブな感じになりそうなのでこのあたりので終わりたいと思います。

ただ、1点だけ…。すべてを手に入れたかのように思えるけど、それってほんとに必要なものだったのか、何かを犠牲にして、失ってまで得る必要があったのだろうか。とか考えさせられます。ボウラーハットが心に刺さるのって誰しもがそう香山みたいに、新しい物ことを手にしてもずっと、満足できない飢餓感というか、そういう虚無感を抱えているからなのではないか?とか思ったりですね。()

そして、狂言回し最後の演説を聞いたり、パワフルなNextを聞いた後に西洋の建物が壮観と建ち並ぶ日比谷、有楽町を歩くと香山や万次郎たちが歩んだその道を思うと、いかんせん胸がざわついて、少しだけ切なくなったりする日生劇場通いでした。

海宝さんだっけ…。インタビューで香山が一番、感情移入しやすい人だとおっしゃっていた意味がなんとなく分かる気がしました。人っていつの間にか人を見下したり、驕り高ぶったりしてしまう生き物だと思うから。そして新しいことや物に夢中になって、大切にしていたものを忘れ捨て置いてしまう。

そんな感じで書いておりましたが、パンフレットは月がモチーフなんですね。なんか作品ビジュアルが海に沈む太陽でパンフレットが月っていいな・・。この揺れ動く日本とかそういう観点で考察書いたらまた楽しいと思いますが、かなり重いことになりそうなのでやりません!

ミュージカル『太平洋序曲』わたしはほんとに好きでした。あと書き足りないこともたくさんありますが、これにて終わりにします。

明日からも米を食べて、推しを愛でて、Twitterで詩を詠んで生きていくオタク。

end

やばいなんか下に書き足しあった、、ので面倒だからそのまま残します、、。

ここで好きだった演出の話する。太平洋序曲、FCでご用意されたのはありがたいことに前方のお席だった。そして、追加購入したうちの1回は2階の最後方座席。これを買って本当に良かったと思っています。何故ならば照明の影、そして海の波の揺らめき、揺れる人影、扇の影絵、そのすべてが芸術性が高かった!!!!

ボウラーハットに熱量を使ってしまったので、あとはさらっと考察とまとめ書いていきたい。まず、月と太陽について。

太陽:天照大御神の子孫?である帝=天皇。絶対的な存在。不変。日の丸。
月:刻一刻と移り変わる象徴。

あと面白いのは、poemsの最後、単語だけを言い合う部分があるのですが、香山は「moon」万次郎は「sun」っていうんですよね。怖い。

香山は将軍のそばで西洋人を優遇する存在なので、帝、というか狂言回し(明治天皇)には邪魔な存在。というか将軍と一緒に一掃したかった。んで、万次郎は彼らを纏めて一掃してくれた。太陽(帝)を引っ張り出してきた存在。的な。ここもリンクしているのではないかなと思います。

はい、おわり!

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