2023/3/27 日本のお金の話(2)
前回、日銀の金融緩和政策について、ダボス会議での各人の発言と絡めて話しましたが、、今回は日銀の国債買い入れと絡めてお話しを。
日本のお金の話(2)
どうやら金利の上限引き上げによって、市場と日銀の「攻防」なるものが繰り広げられてるらしい。
それがなにを意味するのか、国債って何?というところから掘り下げてみました。
かなり長文なので、飛ばし飛ばしどうぞ。
【用語解説1】国債とは
国が発行する債券のことで、大きく2種類、①普通国債と②財政投融資特別会計国債がある。
※①②は合体して発行されており、金融商品としては違いがない
①普通国債
税によって利払いと償還財源(債権が満期を迎えたときに払い戻される額面金額のこと)がまかなわれている。
a. 建設国債
:一般会計において発行され、一般会計の歳入の一部になる。公共事業、出資金および貸付金の財源調達が目的。
b. 特例国債
:一般会計において発行され、一般会計の歳入の一部になる。建設国債を発行してもなお歳入が不足すると見込まれる場合に発行。公共事業費以外の歳出の財源調達が目的。
c. 復興債
:東日本大震災特別会計において発行され、東日本大震災特別会計の歳入の一部になる。平成23年度から令和7年度まで発行される。震災復興のために必要な財源(税収等)が入るまでの財源調達が目的。
d. 借換債(かりかえさい)
:国債整理基金特別会計において発行され、国債整理基金特別会計の歳入の一部になる。普通国債の償還額の一部を借り換えるための資金調達が目的。
※借換とはつまり、借りたお金を返すためにさらに新たな借金をすること。1973年に初めて発行された借換債では、国債の償還期限を60年後に設定しており、10年満期の国債600億円を発行したとしても、満期となる1年後の返済は10/60年の100億で良い。残りの500億は「借換債」の発行で借り換える。その500億の借換債の返済も同様に、10年後に10/50年の100億を返済して残りの400億は「借換債」に・・・とやっていく。これを繰り返して60年間で国債を返済する予定、とのこと。
②財政投融資特別会計国債(財投債)
財政投融資資金における運用の財源に充てることが目的。財政投融資特別会計の歳入の一部になる
・・・財政投融資とは、政策的に必要だが、民間では対応が困難な長期・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施のための投資・融資のこと。
(投融資の事例:みなとみらい再開発、羽田空港の拡張、リーマンショックやコロナの影響を受けた企業への融資など)
参考:
国債とは : 財務省 (mof.go.jp)
日本を破綻に追いこむ「60年償還ルール」 -井上悦義 | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)
FILP_overview2022.pdf (mof.go.jp)
財政投融資(国からの資金の貸付・投資) : 財務省 (mof.go.jp)
【用語解説2】投機とは
短期的な利益を得るチャンスを捉えること。
「投資」が、中長期的に将来の資産を増やすために、収益性があるという分析に基づいて現在の資本を投じることを指すのに対し、投機では分析を重視せず短期的な利益を求め、ギャンブル性が高い。
参考:
「投資」と「投機」の違いとは? [株・株式投資] All About
【用語解説3】国債の投機とは
ここで言う国債の投機とは、国債の価格が将来下がる=金利が上がる(この関係は次項目へ…)予想に基づいて、国債を空売りすることによって利益を上げようとする取引のこと。
※空売り:国債を借りて、売却すること。借りた分の国債は、借りた額に利子を加えただけの価値の国債を購入して返す
【前提】金利と国債の関係について
★ここ重要!
・国債は、国債自体の価格変動によって利回りが変動する
★① 国債が売られる→値下がりする→金利が上がる
★② 国債が買われる→値上がりする→金利が下がる
・長期金利は、満期までの期間が10年以下の国債の利回りを代表的指標としている
参考:
長期金利の上昇なぜ? 金利と国債の関係をわかりやすく解説|サクサク経済Q&A|NHK
【本題】海外ファンドの利益のために日銀が損をしている
ではこの国債が一体なんだっていうのか。
簡単に言うと、市場VS日銀で国債を売買交戦が繰り広げられているのである。そして、どうやらそれは、日本にとって嬉しいことではないようだ、ということ。
国債に何が起きているのか
日銀はこれまで、★②を実施し金利を下げてきた。しかし日銀が12月、長期金利の上限を修正したことで、市場における国債の投機の動き(★①)が活発になった。
具体的には、将来国債の利回りが上昇することを予想している海外投資家が増えており、彼らは国債の空売りを仕掛け、国債の利回りが上がったときに買い戻して利益を得ようとしているのです。(このからくりについては複雑なので割愛、、参考記事を読んでなんとなーーーく分かったような、という感じ)
結果、金利が一時上限の0.5%を超える勢いとなったため、日銀はこれに対抗して国債を買い入れ。これが売買交戦の中身。(1月の話)
国債の売買交戦は日本にどんな影響がもたらすのか
これだけ多くの国債が売られている、それほど、国債の値下がり見通しは確定的ということだ。国債の価値は将来下がるのだ。すなわち日銀が金利抑制のために必死に買い入れている国債は、将来価値が下がる。そうすれば日銀は損をする。なんということか、その分だけ、海外ファンドは利益を得ているのだ。
さらに問題なのが、この損失が日銀の決算には計上されないということ。日銀では国債を時価評価しない方法をとっており(民間の銀行には国債の時価評価を求めている)、国債の市場価格変動にかかわらず額面で計上される。日銀のバランスシート上で資産に計上される国債の価値が、市場と乖離した状態となっているため、日銀の損失が目に見えない状態となっている。
東洋経済の参考記事の執筆者、野口悠紀雄氏はこれについて、日本国民として許容できない、無視してはいけない問題だ、と指摘している。
参考:
日銀、16日も国債買い入れへ 空売り対抗で攻防激しく - 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本人は国債の投機で誰が損するかわかってない | 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
今回調べて見えたポイント
①借換債という闇のような国債が存在していること
②日銀は国債購入により、バランスシートに反映されない巨額の損失を出しているかもしれないということ
今後のウォッチポイント
①国債発行、特に借換債の膨張について
金利変動のリスクを負う借換債は縮減することが国債管理政策上の大きな課題となっている、とのこと。
以下、引用…
所感
安定的で透明性の高い国債発行、それはぜひともである。
国債も借換債も増えていくと、いったいどうなってしまうのだろう、いつどのように返すのか???財源はどこからくるのか??借金も嫌だし、増税も嫌。
そうとなればみんなでリスキリングして産業復興していくしかないのか、、
②植田新総裁の金利かじ取りの方向性について
最近の報道では、急激な金融引き締めへの動きはなく、植田氏は金融緩和の継続が妥当だとの考えである。一方、YCC(日銀が金利維持のために国債を買い入れる記入緩和策のこと)については修正の動きをにおわせている。
4月9日の就任を目前に、過去の事例や発言から様々な憶測が飛び交っているが、確実なところはまだ明らかではない、というのが現状のようだ。
日銀の異次元緩和には、実は日本の財政にとって重大なメリットがあった。
国債の価値低下が抑えられるため国債を買ってもらいやすいこと、そして低金利維持によって政府の国債利払い費を抑制できることだ。
財務省は先日の委員会で、「金融政策においては『市場との対話』が重要」だと、黒田総裁の言葉を強調し、金融引き締めによる国債の安定消化への影響を危惧した。「独立性のある」日銀に向けて念押しをせねばならないほど、重要な問題だということだ。
所感
前回の記事では、金融緩和は企業の淘汰が行われず、イノベーションが生まれない要因になっている、いかん!と認識したが、なるほど国家財政の面からみれば、金融引き締めはちょっと待ってくれ案件なのだ。
非常に勉強になりました。。そしてまた、これをどう動かしていくかが、植田新総裁の腕の見せ所というわけだ。。大変だね、と他人事のごとくつぶやきたくなった。やはりみんなでリスキリングしてイノベーションを起こして限界突破するしかないのか、、(結局)
参考:
令和4年度国債発行計画について : 財務省 (mof.go.jp)
財務省、日銀に異例の念押し 国債安定消化に気をもむ - 日本経済新聞 (nikkei.com)
総括
結局リスキリング、と連呼したけれど、まあ個人としてできることなんて本当にそんなもんなのではないか。そしてそんなもん、といったけれど、これが難しいよね。
そんなもん、に立ち向かう一環としてやっているこのnote、記事を書くためにあれこれ自分で調べるのがとにかく勉強になる。
(さっき見ていたNewsPicksで平野未来さんが、インプットありきではなく、アウトプットありきの勉強が良い、とおっしゃっていた。たしかにnoteに書こうと思わなければ面倒くさくて絶対調べない)
さて、また新しい動きが見えたら日本のお金シリーズの続きを書こうと思います、お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
次は環境問題にいきたいです。。!
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