「カーボンニュートラルの経済学」/小林光・岩田一政 日本経済センター
素人のざっくりした理解を収めた読書記録。
ざっっっくり知りたい方は、「内容」-「目標」まで飛んじゃってくださいね。
前提
選書経緯
GXへの取り組みの現状を知りたいと思ったとき、家にあったので。
フォーカスポイント
①日本でのカーボンニュートラル施策の方向性
②カーボンニュートラル政策立案における論点
読む前の認識
カーボンニュートラルやDXの必要性についての疑念はなし。進めるべき。
特に欧州と比較すると、日本のカーボンニュートラルへの姿勢は遅れているのだろう。
著者について
日本経済センターとは、公益社団法人のシンクタンク。
経済分野を中心にや省庁や新聞社・研究機関でキャリアを積んだ人材が、経済予測や政策提言を行っている。
内容
目標
2030年までに炭素排出量半減、2050年までに実質ゼロにする。
現行の企業努力は大きな貢献を果たすが、さらにDXを加速させるような制度整備、炭素税の導入が必要。それでも排出される分については、地下貯蓄でゼロにし、カーボンニュートラル社会を実現。
-2015年のCO2排出量を基準とした削減見込みの内訳は下記の通り。
50%:企業主導の脱炭素・DX
30%:DX加速(先端技術の社会実装や制度未整備分野でのDX実現)
20%:炭素税の導入とCO2の地下貯蓄
アクションプラン
【企業】
-省エネ・脱炭素への努力/DX加速
そもそも、DXとは
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」(経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」より)DX効果の例
可能なものがすべてオンライン化し、紙生産が大幅に減少
炭素排出量の多い産業が縮小
【政府】
-炭素税導入・CCS
実現のロードマップ
現在「外部不経済」
炭素を排出しても納税の必要がなく、温暖化というコストが発生。
↓炭素税導入
ステップ1「税制グリーン化」
炭素排出量の少ない製品が選ばれ、炭素排出量減少へ。
特に年間5兆円の税収源であるエネルギー業界において、税収を維持しながら課税の対象を炭素排出量にすれば、増税に頼らない税収維持が実現される。
↓CCS(CO2の地下貯蓄。Carbon Capture Strage)
ステップ2「カーボンニュートラル社会」
CCSト炭素税導入と合わせ技で効かせることで、実質ゼロを実現する。苫小牧で実証実験が行われており、2030年代半ばに実用化を見込む。
課題
企業の脱炭素は物価を押し上げ、家計を苦しめる可能性があり、この副作用は、ポリシーミックスでクリアする必要がある。(生活保護・子ども手当・家電エコポイントなど)
国家
↓↓福祉的支援
消費者
家計圧迫↑↓脱炭素の選択
企業
フォーカスポイント
①日本でのカーボンニュートラル実現の方向性
アクションプランは上記の通り。では、2050年の我々の生活は、いったいどうなるのか。
専門家の見方に拠るものとして、たとえばこんなものがあるという。
【エネルギー】
40%が火力に、60%が再生可能エネルギーに。石油・石炭は全廃。家庭では電化がすすみ、ガス・ガソリンの利用はゼロに。
【交通】
-自動車
すべてEVか燃料電池車に。シェアリングの普及で必要台数は1/10に減少。ボディは鉄からプラスチックに。
-鉄道・飛行機
在宅ワークの浸透により、ともに80%減。
【買い物】
-銀行
支店はほぼゼロに。
-小売店
無人化。
②カーボンニュートラル政策立案における論点
炭素税の負担義務者の選定
すでに導入済みの欧州では、実際の排出者とするケースや、燃料生産事業者・燃料供給事業者とするケースがある。税収の用途
すでに導入済みの欧州では、炭素税徴収の分で、保険料率の引下げや、低所得者の所得税軽減を実施。既存の税制の扱い
石油石炭税・電源開発促進税などのエネルギー税がすでに存在している。税率の設定
炭素税率は毎年徐々に引き上げていくなど。
ふりかえり
かなり粗い粒度感でまとめあげてしまったが、自分の言葉でまとめるにはこれくらいが限界。前半は結構がんばって調べた。地下貯蓄、とか、炭素税とか、なんとなく聞いたことはある、というレベルの用語もこれだけ自分でまとめれば自分の言葉になってくる。そういう、専門用語の習得という狙いもあって、記録を書いているので。
では、読む前の認識と照らし合わせて振り返る。
日本政府の環境問題への姿勢について、2020年10月当時の菅義偉首相の所信表明演説によって方針が大きく動き、正面から向き合うようになったようだ。欧州に追いつこう、というところだろうか。というか欧州がルールメイキングしているから、ルール遵守しようとすると必然的に追いかけることになる。
また、パンデミックについて、「グリーン・スワン・リスク」という用語が出てきた。気候変動によって起こる、予測不可能な金融リスクのことで、新型コロナウイルスによるパンデミックはこの「グリーン・スワン・リスク」に含まれるという考え方。実際に、2006年公開のドキュメンタリー映画「不都合な真実」では、コロナウイルスも脅威として挙げられていたようだ。
さいごに、noteでは端折ったが、本書は政策視点での沿革解説や他国事例などが充実している。そこら辺をしっかり読み込めば、グローバル、現代社会という大きな枠組みのなかで日本のカーボンニュートラルへの向き合い方をとらえられる一冊になるだろう。
以上!
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