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「ブランドはもはや不要になったのか」/川島蓉子

結論

消費者意識の変化により、アパレルブランドのビジネスモデルの在り方には変化が求められている。
現状、半年ワンサイクル、バーゲンでの売切りが一般的だが、独自のサイクルを構築し、値下げ販売の前提を廃止すべきだ。なぜなら、消費者の意識はサプライチェーンの透明性や効率性、廃棄の実態へ広がっているからだ。
これからは、共感できる志、実のある独自性、心動かす創造力、抜きんでた先見性、上質な日常性の5点を兼ね備えたブランドに勝機がある。

本論

ブランドの現状

  • 半年ワンサイクル
    【店頭に並ぶ一年半前】トレンドセッターがトレンド情報を発信する
    【約一年半前~約一年前】糸や布のメーカーが製作する
    【約一年前】布の展示会が開かれる
    【約一年前~約半年前】デザイナーが展示会で買い付けた布を服に仕立てる
    【約半年前】各ブランドがコレクションショーを開催する
    【約半年前~】トレンド情報が雑誌や新聞を通じて消費者に伝わる
    【店頭に並び始める】S/S, A/Wコレクションと銘打って販売する
    【シーズン終盤】売れ残りをセールで値下げして販売(店頭セール/ファミリーセール/オフプライスストア/アウトレット販売)
    【セール後】それでも売れ残ったものは焼却などで廃棄処理

  • バーゲン早期化
    1990年代、小売店の売り上げが落ち込む中、需要喚起のためにセールの前倒しの動きあり。
    やがてシーズン最中の服を値下げすることとなり、客はセールを待ってから服を買うように。結果、正価で売れない➡バーゲン早期化の悪循環

  • セール販売前提の価格設定
    商品コストにセールや廃棄分のコストを組み込み

消費者意識の変化

  • 時代背景
    2018年、国連がファッション業界へ指摘「二番目に水を使う産業であり、二酸化炭素の10%を排出している」
    環境問題への意識高まり

  • 消費者意識
    生産現場における人権問題に配慮しているか
    物流コストは過剰ではないか
    廃棄する服はもったいなくないか

ブランドに求められる変化

  • 独自サイクルの構築
    個々のブランドにとっての最適で快適な循環を回す(大規模*短サイクル、小規模*緩やかなサイクル)

  • セール商品生産の廃止
    セールやアウトレット専用の商品を作るのは消費者への偽りともいえる。透明性の観点から、徐々にでも良いから廃止すべき

注意すべき課題

  • サステナビリティに関する取り組みを美談で終わらせてはいけない
    「サスティナブルブック」のようなものを作ったり、自社の活動を喧伝したりすることに終始してはいけない。社員が社会と直接かかわってつくりあげること、そのファクト通じて誰かが喜ぶ姿を目の当たりにすることを通じ、笑顔や楽しさの浮かぶ、謙虚な活動であることが重要

  • 質の追求を忘れてはいけない
    サスティナブル=清貧 ではない。丁寧な手仕事、ハイテクを駆使した機能性、感性に彩られた美しさ、使い勝手に配慮したきめ細かさ が含まれる

ブランドが重視すべき5つのポイント

  • 共感できる志
    人や企業の本質的な価値が問われていくなかで、ブランド理念=志はますます重要になる。思想や哲学といったものがこれまで以上に求められる
    ➡過去の蓄積を見直し、未来に向けた希望を見出す、といった作業を通じブランドの核心を鍛える

  • 実のある独自性
    良質な国内生産への回帰/「好き」という感情で独自性を磨く/独自性を表現した店を最適な場(※)に出す

  • 心動かす創造力
    これからのファッションの果たす役割には大きく2つの方向があり、どちらも人間が豊に暮らすためには必要である

  1. 理論合理価値
    寒暖の調節や可動性に優れた機能。機能に見合った値段、使い手にとって役割が明快で、生活必需品となりうる。ユニクロ、ノースフェイス、スノーピークに代表される

  2. 感覚創造価値
    感性的な表現に価値あり。表現に相応する値段、身につけることで自己表現ができ、自己探求や自己認識にもつながりうる。デザイナーズブランドに代表される

  • 抜きんでた先見性
    デジタルに対して何を目的にどう取り組んでいくか、度合いとスピードが問われている。各企業の過去事例にみる先見性の成功

  • 上質な日常性
    人々の暮らしの変化にかかわっていくためには、〈上質な日常性〉を備え、伝えていくことが肝要。自分の主観に基づいた暮らしを実現させてくれるか、作り手の顔が見え、思いが伝わってくるか、ハードルが低く開かれているか、五感を刺激してくれる心地よさがあり、愛用できるかどうか。


(※)
①商店街・マルシェ型
飲食・雑貨店との集合やポップアップショップの集合のような、個性が立ち並び、歩くだけで楽しい場。売り手との交流ができる
②体験型
ラグジュアリーブランドに代表される。世界観を五感で体験できる場
③コンシェルジュ型
独自の品ぞろえをもとに、客の嗜好にあった思いもかけない提案をしてもらえる場

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