「図説スペインの歴史」で勉強(映画『オッペンハイマー』の背景)

映画『オッペンハイマー』を観ていて、スペイン人民戦線とか国際旅団とかがよくわからなかったものの、雰囲気で意味を掴んでいました。不勉強さを感じたので、図書館でスペインの歴史本を読んでみました。あとウィキペディア。


読んだ本

図解や表など非常に親切で読みやすく、また章末のコラムも興味惹かれる内容が多くて非常に良かったです。
なお、当記事で扱うWWⅠより前の話題のほうがたっぷり書かれています。ザビエルとかも出てきますよ。

WWⅠ以降、揺らぐ政治

『オッペンハイマー』でワードとして出てくる「スペイン人民戦線」、それに関連した「国際旅団」にたどり着くには、第一次世界大戦(WWⅠ)から辿る必要があるそうです。

・スペインはWWⅠで中立に立った結果、特需で潤い、インフレが発生。
インフレに見合った賃金上昇とはならなかったため国民は反発、暗殺等も起きる。

・プリモの独裁。労働連合やスペイン共産党を弾圧することによって反発が強まり、カタルーニャ地域主義運動が台頭。左派勢力に接近する。

・共和主義左派のアサーニャ政権だったが、改革が失敗して右傾化の風潮が起こる。

共和主義左派人民戦線政府の成立を目指す。が、治安はさらに悪化して軍事独裁を樹立する動きがみられるように。この時点で政治を安定化するメカニズムが機能不全になっている。

スペイン内戦

・そしてスペイン内戦へ。この内戦で、ドイツ空軍による歴史上はじめての空爆(都市の無差別爆撃)が行われる。この場所がスペイン北部バスク地方のゲルニカで、あの絵画『ゲルニカ』のモチーフにもなった。

ゲルニカ ピカソ

内戦は、共和政vs反乱軍 の構図。
連合側の反応が鈍かった一方で、ドイツイタリアは反乱軍を支援した。
共和政側の助太刀として「国際旅団」が登場、義勇兵を送る。
支援していたのはソ連。それに加えてアメリカ共産党など各国も支援、またユダヤ人も参加していた。著名人としてはアーネスト・ヘミングウェイが参加しており、『武器よさらば』や『誰がために鐘は鳴る』の題材となった。

結果としては共和政側(国際旅団側)が負けて、反乱軍(ドイツイタリア側)の勝利。フランシスコ・フランコによる長期間の独裁がはじまる。
ドイツイタリアはWWⅡで敗戦するものの、フランコ独裁は国際環境の変化に巧みに適合した。WWⅡ中には同盟側を支持していたが、途中でカトリックを利用して中立に転換、WWⅡを乗り越えた。戦後もいろいろあったそうだがここでは割愛。

映画『オッペンハイマー』での役割

『オッペンハイマー』ではアメリカ共産党の話題が出てきます。国際旅団や義勇軍は、当初は必ずしも共産主義だったわけではなさそうだけれど、結果的にはソ連によるコントロール下に置かれてしまいます。結果的に敗れてしまったものの共産主義の存在が大きくなる出来事でもあり、アメリカ側の対応としての「赤狩り」に影響していきます。
このアメリカ共産党の活動にロバート・オッペンハイマーが少し絡んでいたことが、映画『オッペンハイマー』のドラマを形成する要因となっていました。

スペイン内戦がはじまって歴史上初の空爆があり、それに対抗するための国際旅団に(少し)賛同していたのに、結果として原爆の発明に至ってしまったのは、あまりにも皮肉なことですね。

と、このあたりまで勉強してだいぶ要点が整理できました。本筋とは関係ない…とはちょっと言えないぐらいの要素だったこともわかり、とても勉強になりました。
もう一度観ると味が…って、180分はやっぱり長いよ~~~!!!


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