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dive青色福岡

・あたしは、なぜだか決まってお腹がいっぱいになると幸せだけど悲しいことをたくさん考えてしまう。(なぞなぞ?)それはそれは満たされた状態で終わりにコネクトする贅沢を、君にはありきたりな消費だと笑ってほしい。

・例えば、どんなにお金があっても買えないもののこと。牛丼に豚汁がセットでついてきた時のこと。簡単に宇宙に行けるようになる時代が来たらとか。

・最近一年ぶりくらいにTwitterをインストールした。Xと名乗るこいつをあたしは優しく受け入れる。
去るものを追わない私と、後ろを振り返らないX。
最近になって、一つ分かったことがある。

・大人は一度口に出したことを取り消すのが難しいってこと……

・去年の春に10歳歳上の友だちが亡くなってしまった。頭や心がこんなにも痛みや喪失感を忘れられないままこんなにも早く、一年が経った。私は21歳になった。

・鋭い悲しみが去った後も何か、何か言葉を紡ぐために、過去にこんなに重たいものを背負ったことはなかったと気づいた。一度はまとまった綺麗な言葉で、SNS用の本人以外へ向けたさよならを言ったものの、それ以降2度と更新することができず、私は言葉のマウンドを降りた。

・そのタイミングで同じ悲しみを背負う皆んながいるTwitterから離れ、唯一私に残ったSNSであるInstagramを、Twitterみたいに使うという愚行に及んでいた。若い子の間でこれをやると本当にモテないらしい。

・InstagramとTwitterをうまく使い分ける人間の皆様〜!今はレディースアンドジェントルメンすら大きな声で叫べない時代なのだ。君はさぞかし生きにくいだろう。

・いつまでも恋しかった。
ライブハウスにはあまり行かなくなった。
君がいないとメランコリーで、あぁ、
こんなところでも、金木犀の匂いがする。
彼のバンドの曲も言葉も、こんなにも温度を残しているのが憎くて、何か理由を探すみたいに曲を聞くのも嫌になって、こんな現状をぶち壊すような何かをずっと期待している。

・ロックなのかもしれない。あるいは私が転職して全く違う会社に入ることなのかもしれない。
夏が来るたび、はやく冬にならないかと考えるくらいに、鍵をかけてしまえば、忘れてしまいそうな些細な思い出ばかりだ。


・社会に出てからというか、私が福岡に来てから、いわゆるイベントで出会う友だちがすごく増えた。
生まれて初めての恋人だってDJをしていたくらいだ。同じ音楽を聴く、知らない大人たちと挨拶をして、乾杯をして、フィーリングを確かめて、というのを繰り返して、そうか、友だちができるっていうこと自体が一種の大きなイベントなのだなと気づいた。

・なぜかそこではずっと居心地が悪くて、タバコも吸えない私はフロアの端の方で、緊張で早々に空にしたカップさえも捨てられずにずっと足元を見ていた。田舎で育った私とってライブハウスは決して身近なものではなかったし、そもそも音楽に対してのノリ方みたいなのもあまりわかっていなかった為いつまでも客なのにアウェーみたいな顔をしていた。

・そんな私の生まれて初めて見たライブが、彼のバンドだった。眩しいと、はっきりと思った。

・いわゆる亡くなる直前の彼のことを何も知らなかった。生活のこと、音楽のこと。最後になったライブには、私の昔好きだった男が絡んでいて、当時の恋人に今日は行かないでくれと言われた私はその要求通り、ライブには顔を出さなかった。そのくらいもう私にとってライブは特別なものではなくなっていた。その日の会場へ、あの日と同じ夜を期待して何度も通った。


・お別れの日のことをあれから何度も思い出した。
MVを撮る時みたいに、友だち全員が喪服を着て集まって、みんな衣装みたいにピッタリで、なんなら似合ってるやつとかもいて、涙でグレーな空と喪服の集団が霞んで、漫画の1コマみたいだった。

・当たり前みたいに、死ぬことが決まっていたみたいなクリーンな葬儀のフォーマットが寂しくて馬鹿みたいに泣いた。それは私の拠り所だったライブハウスから最も遠い場所だった。

・初めて泣いたのを見た友だちもいたし、いつも通りの顔をしている大人もたくさんいた。そのまま帰れなくて、朝まで飲んで仕事に行った。あの日出会ったバンドマンの友だちは今も音楽をしている。

・つい先日、その友だちのバンドを見に行った。
プライベートでは何度も会っていたのに、楽器を手にした姿を初めて見た。あんなに楽しそうな顔が見られるなら、なんだかもう全部が良くなるような、ジューシーで、諦められない音がした。過ぎ去っていくものに焦がれるような気持ち。このバンドのこと結構好きだな。私は言うまでもない素人だが、テクニックだって感じたし、あと1時間あったとしても夢中になってフロアにいられただろうと思うようなライブだった。だけどライブを見た感想が、うまいな〜なのが少し寂しいのはなんでなんだろうか。

・一年前のことを書こうとすると、言いたいことがまとめられない。思い出しては書いて、消してを繰り返して、綺麗にまとめられたことがない。

・福岡の音楽シーンは続いていて、彼が作った作品だって残っていて、でも会いたい時が来たら墓に行けばいいって?なんだそれと思う。どうしようもなく悔しい。あの日を未だに諦められない。止まったバンドに執着しているのは私で、もうみんなが前を向いていたとしても、足元を見てばかりの私がまだここにいる。

・友だちのライブのMCを聞いて、なんだか同じ気持ちを、今感じている感情が悲しみなら、皆んなで一緒に抱えて生きていけるんじゃないかと、希望的観測を抱いたので一生懸命にnoteを書いた。本来ならボツになるくらいのクオリティで、正直な話デモくらいに思って読んでほしい。

・悲しかったり、楽しかったり、福岡はいつまでもブルーだと私は思う。反射しあっていつまでも青くて、こうやって歳をとっていったら、若いとか辛いとか、そういう境目がなくなって、なんにもわからなくなってしまいそうなくらい。本当はこんなの一番大嫌いで、抜け出してしまいたいくらい。

・でももう一度ここで潜ろうと思う。音楽をやめないでいていてくれる友だちや、これを当たり前みたいに読んでくれる友だちに何度も出会えたから。たくさん悩んで、この文がようやくおわりに近づいているように、この街には綺麗な終わりがきませんように。

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