話しかけられる女
マスクが手放せない生活で、仕事もプライベートもオンラインでのやり取りになった昨今、それでも無くならないのがリアルな店舗での買い物中の温かなやり取り。
関西出身者は、レジで「ありがとう」、飲食店から出る時に「ごちそうさま」と言う人が多いと聞くが、私も漏れなくそうだ。それゆえか、話しかけやすいオーラのようなものをまとっているのか(会社ではどちらかというとクールキャラなのだが)、買い物時、店員さん(特に年上女性)に話しかけて頂くことがある。
冬物を持ってクリーニング店に行くとこうだ。
「あら~素敵なブルゾン~」『ありがとうございます』「軽いわね~あったかかったでしょう?」『あったかかったですね~』「お高いんじゃない?」『いえいえ羽毛じゃなく化繊なのでそれほどでも』「すっかりあったかくなってコートいらないわね~」『本当ですね~今日は天気が良くて暑いくらい』「すぐに夏がきちゃうわ」
地域密着型の小さな本屋に行くとこうだ。
「あ!これ新刊じゃないけどいいの?」『はい、新刊は買ったんですけど、ひとつ前を買い忘れてて』「なんだ~そういうこと~」『気が付いたら新刊が出てて』「すぐに新しいのが入荷してくるよ。今は、呪術廻戦と鬼滅の刃と憂国のモリアーティが人気よ」『アニメやってますからね』「そうだ!余ってるこのおまけいる?」『いる~嬉しい~』
宮城県のアンテナショップに行くとこうだ。
「このおだし美味しいよね~人気よ~」『美味しい~何に使っても美味しい~』「あれしたことある?ご飯にかけるやつ」『ご飯?』「そう、袋開けて中身をかけて混ぜて食べるの」『ほっかほかのご飯に?絶対美味しい!』「おにぎりにしてもいいよ。夏は冷茶漬けもいいって他のお客さんから教えてもらったよ」『それもかけるんです?』「おだしを冷やしてかけるの」『あ~それは!間違いなく美味しい!』「私もまだやったことないんだけど食欲がない時にもいいんだって」
人とリアルで話さなくても生きていけるなって思うこともあるけれど、相手のリアクションを画面越しでなく目の前に感じて話をすることは、オンラインのコミュニケーションとは種類の違うもので、人間が人間であるために必要だなと思う。今はマスクをしていて鼻より上の表情しか分からないので、早く、にこにこした顔をお互い見せながら話せる日がきてほしい。店員さんに話しかけられる度、マスクの下でにっこりしているから。
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