2.生きづらそうな童貞


 【君は生きづらそうだ】

 私は今まで付き合った人に、必ずと言っていいほど、このセリフを言われている。

 その理由は、うすうす自分でも気付いている。

 そう、彼女に甘えているのだ。

 普段は、職場でも遊び場でも、
  コミュニティの最適化が頭にあり、
  立ち回りを考えてピエロを演じる。

 基本的に家の外では、合理性に伴う主張を
  除いた、個人的な意思はあまり展開しない。

 そのため、恋人にはいっちょ前に【居心地の良さ】を求め、
 元来持つ 卑屈さで話題を広げ、同情と共感 を狙っている。

 その上で彼女に、面白い と思って欲しいのである。

 そんな卑屈トークを ユーモア を交えて
  半分本気 で話すのだが、着地するところは、
  「生きづらそう。」と言うのである。

 なんと失礼な。

 これでも、卑屈なりにも、まっすぐ生きているというのに。

 彼女は加えて言う。「そんなに考える必要ない」と。

 私は、この世の 不条理さ を話したくて仕方がないのである。

 楽に学生時代を充実させる陽キャ や 
 努力をせずに男を見下す一部の港区女子
  などを、私は許せないのである。

 苦労を評価して欲しいのではない。
 陽キャ や 港区女子 になりたい訳でもない。

 ただ、羨ましくて、妬ましいのだ。
 しかし、それらが消えて欲しいのでは無い。
 それらを利用して、笑いを取ってやりたいのだ。

 つまり、マウントを取られに行った上で、
 スモールパッケージホールド で 勝ち逃げ したいのである。

 あわよくば、そんなレスラーを世間が愛して欲しいのだ。

 そして、恥を忍んで言うならば、
 彼女には そんな選手を 一番応援する ファン になってほしい。


 まずはさっそく、彼女に新日本プロレスの観戦を勧めるとしよう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?