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頑張れ、吉本興業
吉本興業のゴタゴタをめぐっては業界人も一般の人もそれこそみんな評論家となってあれやこれやと意見を出しています。
どれも見る角度によって正論であったり、暴論であったりします。
情報の洪水に、正直どうでもいいわと思うほどのグダグダぶりです。
フライデーの報道、宮迫さん、亮さんの会見、それを受けてのワイドナショーの生放送、そして岡本社長の長時間記者会見を受けて、これだけはと思うところだけ書き残しておきます。
ワイドショーがそうなのか、それを求める視聴者がいるからなのか(卵が先か鶏が先か)、落ちていく人に石を投げるのが人は大好きです。投げても反論されないと大衆が認識したときのパワーは誰も止めることができません。
法的、倫理的にどうであるかではなく、感情的に大衆は石を投げます。
いわゆる炎上です。
そうなってから声をあげても無駄です。
同じ流れの出来事であっても、対象が180度変わっても、平気で石を投げ続けます。今回がそうです。
一体、何に不満を持っているのかを本人も自覚しないまま、石を投げているのです。
それがとても恐ろしいことだということだけは、これからも言い続けていきます。
テレビやラジオ、さらに雑誌や新聞で吉本興業のお笑いに接してはいても、直接劇場に足を運んで笑ったことのある人は少ないでしょう。
記者会見で質問する記者ですら、劇場の客席に座ったことのない人もいたかもしれません。
なんだかなぁと思い、一昨日の夕刻、大阪・難波にあるNGK(なんばグランド花月)に行ってきました。
夏休みは、なんと9時台から舞台は始まっていて、夜の部と合わせると吉本新喜劇は4回公演です!!!!
さすが吉本、稼げるときには徹底的に稼ごうとします。当たり前です。
夏休みとはいえ、平日(水曜日)の午後でしたから858席が満席ではありませんでしたが、当日券(4700円)を買って、3回目の公演を途中から楽しみました。
中田カウス、テンダラー、メッセンジャー、トミーズの面々が舞台下手から登場し、中央に上がってきた38マイクを前に、それぞれの間で客席を笑いで包みます。
「もおええわ、どうもありがとうございました」と、持ち時間を終えて舞台袖に引き上げるときの歩き方が若手とは違います。
やるべき仕事をした、その自負が表れているやや早足の歩き方。まるでリリーフとしてマウンドに上がり、しっかり相手打線を黙らせてピンチをしのぎ、ベンチに戻る大好きな江夏投手のようでした。
ただテレビカメラに向かって笑わせるのではなく、スタジオにいる内輪の人の反応を見るのではなく、客席とつながっているという実感があるからこその、爽やかなふてぶてしさすら感じました。
新喜劇では、お約束のギャグもあれば、ほろっとさせるところもあり、終演まであっという間でした。
吉本興業はいま社内的にも、世間的にも、解決しなければならない問題は数多くあるでしょうが、劇場という現場で、芸人とお客さんが笑いと時間を共有している間は大丈夫だろうと、希望的観測が持てました。
逆にいうと、放送でも、流通でも、飲食でも、送り手であるプロと受け手であるお客様がキチンと向き合わず、内側の論理や取り繕ったコンプライアンスばかりを気にしていたら、その会社はいずれ退場していくことでしょう。
漫才にしても、落語にしても、新喜劇にしても、ふらっと寄れる場所にいつでも笑いに包まれた場所があることがとてもありがたいし、在京局からの全国ネット番組も万博関連も教育事業も結構ですが、そんな場所をこれからも提供していってほしいと心から思いました。
頑張れ、吉本興業。
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