いちびりとは?
昨日、なにわ大賞の選考会に行ってきました。自薦他薦を問わず、なにわの「いちびり」を表彰してきたこの賞も22回を数えます。楽しみ、苦しみながら運営してきたなにわ名物開発研究会の皆さんに敬意を評します。
幼少期からいちびりだった私は、スケジュールの関係で抜けた年もありましたが、ここ数年審査員を務めさせていただいています。
7月28日(なにわ)に行われる贈呈式は「も〜て〜式」と呼ばれています。蛇足ですが、賞をもらってくださいという精神ですね。
これまでの受賞で印象的だったのは、三津屋商店街が地域振興のために始めたやかんを使ったカーリング「ヤカーリング」(第18回準大賞)。あまりにもバカバカしくて、真剣に取り組んでいる表情に吹き出してしまいそうでした。
なにわ大賞のHPから、いちびりについて引用します。
いちびり=いちびりの語源は、せり市で手を振って値の決定をとりしきること、また人のことをいう「市振り」から起こったと言われ、転じて物事のリーダーシップをとることや、その人のことをいう。
大辞林では、(主に大阪地方で)出しゃばったり、つけあがったり、図に乗ること。また、そのような人。
Wikipediaに掲載された文例は、以下の通りです。
「いちびってんと、ちゃんとせえよ」(ふざけて調子に乗っていないで、ちゃんとしろよ)
「お前はほんまにいちびりやな」(お前は本当にお調子者だな)
「あの人はなかなかのいちびりやで」(あの人はなかなか人と違う工夫ができる人だよ)
「いちびり癖があんねん」(すぐ調子に乗る癖があるんだ)
ただふざけた、お調子者というだけではなく、いちびりは、ポジティブもネガティブも併せ持っていますよね。
自分自身を含めて、その辺にいちびりがあふれている土地で育ったので、あらためていちびりの定義を考えることもなかったのですが、言葉で言葉の意味を伝えるのは本当に難しいです。
たまたま昨日は、三重から来られた方に「これからなにわ大賞の審査員として、いちびりを選んでくるんです」と伝えたら、キョトンとされました。妙齢の女性にとって、いちびりは初めて聞いた言葉だったそうで、「びり?」「1ビル?」「ちびり?」と返され、まさにいちから説明しないといけませんでした。
「いちびり」
アクセントも重要です。3音節目の「び」だけが高くなるので、平板でも頭高でも中高でもない、共通語ではあり得ないアクセントです。他の言い方はありません。
言葉の意味が時代によって変化するのは仕方ないことで、だからこそ面白いのだと思いますが、昭和36年生まれの私にとって、いちびりは生活そのものとリンクしているものなので、言葉の定義だけでは伝えきれない深くて、一方で軽〜い単語です。
つまり、小学生の頃、土曜日は半ドンの授業を終えたら団地の5階にあった家に飛んで帰って「吉本新喜劇」を見て、親戚が集まると嬉しくて意味もなく「シェー」をしたり、空き地で真っ暗になるまで三角ベースの野球をしたり、キャッチボールの球がそれて近所の家の窓ガラスを割って謝りに行ったり、悪戯をして押入れに放り込まれたり、秘密基地を作って隠れたり、叱られたことに腹が立って家出したもののお腹が空いて帰って泣いたり。そんなことすべてが、いちびりを構成しています。
番組でもお話ししましたが、日本国憲法前文の暗唱という宿題を翌日にしていったり、夏休みの読書感想文を40本書いていったり、アナウンサーになってからも、十日えびすの中継をすべて違うパターンでやったり、湾岸危機やソビエト崩壊取材にいったりしたもの、全部いちびり精神のなせる技だと思います。
大阪出身の私にとって、「いちびり」であることは自分自身であり、誇れる資質であることをここに高らかに宣言します。もちろん他人に無理強いはしませんが。