掌編小説 コンドームの正しい使い方
私は、某政府機関から派遣された保健師。
今日は家族計画プロジェクトの一環として、村落の巡回指導に行く。
村の女性たちを集め、家族計画の何たるかを簡単に説明した後、私はおもむろにコンドームを取り出した。
これが、コンドームというものです。
おおっ。
どよめく女たち。
それでは使い方を説明しますね。
私が言ったとおりに正しくコンドームを使用すれば望まない妊娠を防ぐことが出来ます。
まあ、一番重要なのは、性行為の途中でなく最初から使用することですね。
私はコンドームの封を切った。
封を切るときは手で、はさみとかで、中まで切っちゃわないように。
おっと、装着の仕方をどうやって教えようか。
ふと村の集会所の庭に生えているバナナの木が目に入った。
私は、手ごろなサイズのバナナを1本取った。
はい、封を切ったら、裏表を確認します。
このくるくるっとゴムが巻き上がっているほうを外にして、先っちょをつまんで空気を抜きます。ここで空気が入っていると破れちゃうことがありますから、注意してくださいね。
さて、空気が先っちょに入らないように、ゴムをそっと下ろしていきます。根元までしっかり下ろしましょうね。
バナナを使用して実際に装着してみたので、これで間違った使い方をすることはないだろう。
それでは、保健省より無料のコンドームの支給がありましたので、皆さんに差し上げます。
正しく使って、望まない妊娠を防いでくださいね。
2ヶ月ほどして、また巡回健康診断でこの村を訪れた。
シスター、シスター、と1人の女が私を呼び止めた。
シスターというのは婦長に付ける敬称だが、女性の医療職従事者で、役付きのものはシスターと呼ばれる。
腹の辺りを押さえている。
シスター、おら、シスターの言うとおりコンドームっちゅうもんを使ってみたけど、できちまったで。なんでかい?
使い方は間違えなかったの?途中からつけてもあんまり意味ないわよ。
俗に言う我慢汁による妊娠か?
いんや、とーちゃん、もう我慢できねーって襲ってきたところをな、ちょっと待て、シスターが途中からつけても意味ないと言いよるで、始める前にちゃーんとつけた。
じゃあ、どういう風に装着したか、具体的に説明してみて。
女は自信たっぷりに言った。
おらな、とーちゃん押しのけて、台所に行ったさ。果物かごにバナナあったで、それにちゃーんと、空気入らんように、コンドームっちゅうもんをつけた。
そーしたらな、とーちゃん、さあたっぷり可愛がってやるでダーリンとかいいよって、腰巻をおもむろにまくりあげ・・・・・。
(了)
※ 実話をもとにしています。バナナでかすぎるんですけど…。
※ 保健婦 → 保健師 に変更いたしました。