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『引き算の美学』で送る、美しく洗練された生き方

この記事は2024年4月21日に更新されました。


「美しく在りたい。」


心が、魂が、常にそう在れと望む。私にとって、『美しさ』はそれほどまでに大切な価値観だ。


ここで言う『美しさ』は、なにも外見だけに限った話ではない。しぐさや品格、雰囲気、考え方、人間性などを含めた広い意味を込めている。そのため、この記事で扱う『美しさ』には、単純な美しさに『強かさ』や『高潔さ』をかけ合わせたようなイメージを持っていただけると幸いだ。

さて、これほどまでに『美しさ』に執着する私だ。これまで、美しく在るために必要なことを学び、取り入れながら生きてきた。その中でも、特に『美しさ』に直結する本質的な考え方がある。

それが『引き算の美学』だ。





『不要』をそぎ落とす


引き算の美学とは、『”不要”を徹底的にそぎ落とし、”必要”だけを残すことを”美しさ”と捉える考え方』である。

光り輝く宝石をつくるためには、そのもととなる原石を磨く必要がある。これと同じように、美しさを得るためには不要な部分を削り、必要な部分だけにフォーカスする必要があるというわけだ。


「完璧とは、それ以上加えるものが何もなく、取り除くものも何もない状態のことだ」―――フランスの小説家 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(星の王子さまより)


不要な部分が一つもない、必要な部分だけがある状態というのは、そのものの秩序が保たれ、周囲と調和している『完璧な状態』なのだ。そして、引き算の美学では、この『完璧な状態』を美しいといっている。


「おもわず見入ってしまうほどふつくしい…」


そう感じたものを思い浮かべてみてほしい。それは「完璧以外の何物でもない」と言い切れることだろう。

この引き算の美学の考え方はさまざまな分野で応用されている。アートの分野では、不要な部分をそぎ落とすことで必要な部分だけを強調している。また、和食においては、アクや臭みなどの余分なものを引くことで素材のうまみを最大限に生かしているのだ。

このように、引き算の美学を意識するだけで完璧な状態に近づくことができる。それはすなわち、美しく洗練された生き方ができるということになるのだ。

実は、引き算の美学と類似する考え方は複数個存在している。参考までに、それぞれの違いについて以下で触れていきたい。


ミニマリズム


ミニマリズムとは、『”不要”を排除し、”必要最低限”を貫く考え方』である。そして、この考え方に心臓を捧げ、必要最低限のモノだけで暮らす人をミニマリストと呼ぶ。ミニマリズムは引き算の美学と近しい考え方であり、その違いは『美しさ』に傾倒しているかしていないかだけである。


選択と集中


選択と集中とは、『経営資源を集中させ、最大限の成果を得る経営戦略』である。オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーによって提唱され、世界中の企業が実践している。かのスティーブ・ジョブズ氏も、選択と集中によりApple社を再建した。


Less is More(≒Simple is best)


Less is More とは、『”少ない方がより豊かである”という意味の言葉』である。20世紀の建築家、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886~1969)が遺した言葉だといわれている。必要なモノだけを選び抜くことで、シンプルさがより美しく豊かな空間が生むという信念、美意識にもとづいている。ちなみに、『神は細部に宿る』という有名な言葉を遺したのもローエである。



ほんの少しの『重要』


引き算の美学における重要な考え方はたった一つだ。それは『重要なことはほんの少ししか存在しない』ということ。逆に、ほんの少ししかないから重要だとも言える。


「1~100までのうち、1~99までが重要だ」


何が重要かを理解していないと、こうなってしまう節がある。だが、これでは何が重要なのかわからない。「ん…?どゆこと??」となること間違いなしだ。このように、多くのことを重要だと言うことは、どれも重要でないと言うことと同じなのだ。

これは、パレートの法則からみても説明できる。パレートの法則とは『全体の数値の大部分(8割)は、全体を構成するうちの一部の要素(2割)が生み出している』という経験則だ。具体例として、以下のようなものが挙げられる。

  • 仕事時間の20%で80%の成果を出している

  • 注文の80%が20%のメニューに集中している

  • スマホ利用者の80%が20%の機能しか使っていない


全体のほとんどがノイズであり、不要なごみだと断言できる。ごみに埋もれずに生きるために、美しく洗練された生き方をするために『重要はほんの少し』ということを脳に叩き込んでおきたい。



『引き算の美学』と共に


引き算の美学の本質は『選択』にある。重要な部分だけを残すために、そぎ落とす部分と本当に大切な部分を選び抜く必要があるからだ。

ちなみに、『選ばない』というのも選択肢の一つだ。『選ばない』選択をすると、さまざまなものが勝手に増えていくことになる。勝手にいらないものを押し付けられてしまうからだ。『選ばない』選択肢をとるときには注意が必要である。

さて、それではこの本質を踏まえた上で、引き算の美学を身につけるために必要な、5つの具体的な行動を以下に示していく。行動の参考にしていただければ幸いだ。


①目的を明確にする


「正解かどうかは目的に沿っているかどうかで判断できる」


目的がなければ、不要なものを削ることも、必要なものを選び取ることもできない。目的がその判断の軸となるためだ。

大金持ちを目指すからこそ、ゲームの時間を削って仕事に時間を充てることが正解になる。一方、プロゲーマーを目指すのであれば、仕事の時間を削ってゲームの時間を増やすことが正解になるのだ。

自身の目的を探すためには、拡散的思考をしたのちに収束的思考をするのが良しとされている。多くの選択肢を集めたあと、その中から珠玉の選択肢を選び取るのだ。多くを考え、試行錯誤を繰り返したのちに、やっと目的という名の宝石をみつけることができる。

ゴールにたどり着くために必要なスキルについてまとめた記事をここに置いておく。参考までに目をとおしていただければ幸いだ。



②優先順位をはっきりさせる


「優先順位がわからなければ、正解にたどり着くことはできない。」


優先順位が明確でないと、決断の度にブレが生じてしまう。ゴールまで進む道から、少しずつ逸れていってしまう恐れがあるのだ。

例えば、起業を目指す人が以下のようなやることリストを作ったとする。

  • 読書する

  • お金を稼ぐ

  • 人脈を広げる


読書に時間をとられてしまった場合、お金を稼いだり人脈を広げたりする時間がとれなくなる。起業したいのに、勉強に落ち着いてしまうのだ。これではゴールにたどり着くことはできない。「企業したいのに勉強してるんですか…?」状態になってしまう。

また、何を優先させるべきか明確になっていないと、決断を迫られるたびに足踏みすることになる。この悩む時間が積み重なっていくことで、多くの無駄な時間を浪費してしまうことになるのだ。悩んでいる時間を最小化し、その分の時間をゴールに進むための時間に充てるべきだろう。



③無駄なモノを捨てる


「決断の本質は選択肢を減らすことにある」


不要な意思決定が少なければ少ないほど、そのために使う時間やエネルギーを本当に重要なことに充てることができる。自分の貴重なリソースを必要なことだけに集中投下できるのだ。

モノや人間関係は、所有するだけでそれらを管理するための手間が発生する。モノが多ければ掃除や整理整頓、捨てる際の手間が増える。そして、人間関係が多ければ連絡対応やコミュニケーションの手間が増えるのだ。

使わない、必要のないモノや人間関係は、存在するだけで害だといえる。
そんなものにリソースを充てることのないよう、無駄なものは捨てるべきだろう。捨てるコツは『使わないモノ』を集中的に捨てることだ。1か月使わなければ処分するなど、ルールを決めて容赦なく捨てることで無駄な管理から解放されるようになるだろう。もっともいい状態とは、何もない状態なのだから。



④90点未満に「NO」という


「90点以上は合格、それ以下は不合格だ」


前述したとおり、不要な部分を削り落とすことで、本当に必要な部分だけを残すことができる。そうするために、ほんの少しを残し、多くのものを削るために、多くのことにNOと言う必要があるのだ。

学生時代、赤点は35点未満だった。つまり、35点以上は合格だったということだ。だが、引き算の美学においては、赤点を90点未満に設定する。これは、前述したとおり『重要はほんの少し』であるためだ。

絶対にYESだと言い切れないのであれば、NOと言う。そして、NOと言い続けることに慣れる必要がある。そのコツは『簡単にYESと言わない』ことだ。基本スタンスはNOとし、ゆっくり考えてからYESと言う。そうすることで、合格か不合格かの判断を間違いなく行うことができるだろう。



⑤スペースをつくってから取り入れる


「大いなる選択には大いなる痛みをともなう」


毎日の習慣に、読書を取り入れるとしよう。読書の時間を捻出するためには、他のことに使っていた時間を削る必要が出てくる。睡眠時間なのか、テレビを見る時間なのか、うさぎ跳びをする時間なのか…だ。

このように、何かを得るためには、まずは何かを失う必要がある。これを『トレードオフ(またはノーペイン・ノーゲイン)』という。

選択とは、時間やエネルギーなどのリソースの配分先を決めることだ。引き算の美学においては、重要なほんの少しの何かにリソースを振り分ける必要がある。重要な何かを取り入れる際は、それより重要でない別の何かを捨てることで対応するしかないのだ。

また、その際は一人で考える時間をしっかりと確保したうえで取り入れる何かを決めるべきだろう。取り戻すことができない何かを捨ててしまう危険性があるからだ。



まとめ


これまで、美しく在りたい人のための『引き算の美学』をまとめてきた。

大切なのは、全体のうちに重要なことはほんの少ししかないということ。
そして、引き算の美学を実践するために必要な具体的な5つの行動を示した。

  1. 目的を明確にする

  2. 優先順位をはっきりさせる

  3. 無駄なモノを捨てる

  4. 90点未満に「NO」という

  5. スペースをつくってから取り入れる


これらを無意識レベルに落とし込み、実践することで美しく洗練された生き方ができるはずだ。



「私は大理石の中に天使を見た。石を削ってそれを解き放った。」 ―――彫刻家ミケランジェロ


引き算の美学は彫刻に例えることができる。不要な部分を削り落として、必要な部分だけを残すことで作品をつくる工程が、引き算の美学と重なるからだ。どんな素材を、どのように、何を使って削るかを理解していなければ、彫刻で作品をつくることはできない。引き算の美学を取り入れる人は、自身を作品とする優れた彫刻家を目指して日々精進する必要があるだろう。

自分への理解を深めつつ、試行錯誤しながら引き算の美学を実践していく。そうすることで、徐々に『完全な状態』に近づいていくことだろう。

さいごに、私のように美しく在りたいと望む人が、美しく洗練された生き方を送る一助となることを願って。



参考文献


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