『面白さ』とはなにか
小さいころから”面白いコト”が大好きだった。
秘密基地を作ったり、カブトムシを捕まえにいったり。やることなすこと「面白ければそれでいいのだ!」とすら思っていた。
それほどまでに大好きだった”面白いコト”。なのに、「面白さ」がなんなのかを説明できない自分がいた。
「あれ?好きなことを説明できないのは変だな…」
ふとそんな考えが頭をよぎり、本やネットでしっぽり調べてみることにした。ここ3カ月ほど調べた結果を、自らの経験・考察を交えてこの記事にまとめていく。
「面白さ」の正体
コトバンクによると「面白さ」という言葉には以下のような意味があるそうだ。
「面白い」の度合いということなので、「面白い」の意味を調べてみる。
「ほう…。」
という感じ。
抽象的過ぎて、求めている答えとはちょっと違う。
もっとこう「あーね」ってなる感じのがほしかった。ということで、ネット記事を漁り、ヒントになりそうな本を読んで考えてみた。いろんな情報を頭の中に詰め込んで、答えひねり出してみた。
【面白さ=(変化)=気づき×驚き×ストーリー】
これが「面白さ」の正体(公式)である。そう結論付けた。
※ちなみに、この公式は【「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ】を大いに参考にしている。超おすすめ。
「面白さ」の前提
前述した「面白さ」の正体(公式)の各要素については次の章で解説していく。この章では、各要素の解説をするにあたり、前提となる知識を共有しておきたい。
①共感細胞「ミラーニューロン」
人の脳にはミラーニューロンと呼ばれる神経細胞が存在する。
ミラーニューロンとは、”ほかの人の行動を見たり聞いたりすることで、あたかも自分がその行動を体験しているかのように感じ取る細胞”である。
脳はミラーニューロンを介すことで、他者の行動をシュミレーションし、そのイメージを脳内につくり出す。これはつまり、ドラマや映画に登場する人物の行動を追体験し、あたかも自分がストーリーの中に存在していて、そのストーリーを体験しているかのように感じられるということだ。
漫画を読むのは自分が物語の中にダイブすることと同じであり、スポーツ観戦は自分がスポーツをやっていることと同じなのだ。
②人の感じ方は千差万別
「面白さ」は相対的なものであり、絶対的なものではない。というのも、面白いと感じるかどうかは人によるからだ。
『電車で急に「オラァ!!」と叫びだし、筋肉の膨張でYシャツのボタンをふき飛ばすヤバいマッチョを見た』という話があるとする。
A氏は面白いと感じても、B氏は面白みを感じない、なんてことは往々にしてあり得る。逆もまた然り。これは、その人がいる環境、現状、過去の経験などが影響している。
物事の感じ方は人によって異なるのだ。
「面白さ」を構成する3要素
さて、この章では以下の公式の右辺の3要素について解説していく。
面白さ=(変化)=気づき×驚き×ストーリー
①気づき
「気づき」とは、仮説検証から得られる結果である。また、それは「わからない→わかる」への変化である。
「ハッ…気付いてしまった。ワイ天才。」
推理物のドラマで画面の端っこに一瞬だけ写った腕時計、容疑者たちの発言、主人公が見つけ出す証拠の数々…「あれ…?ってことはつまり…」と犯人を推測する。ドラマの最終回でその仮説がドンピシャで当たっていると「やはりな(ニヤリ)」と思う。
このように、「気づき」には「面白さ」が内包されている。
しかし、仮説検証の回数が増えれば増えるほど疲れるし、飽きる。だんだんと弱っていく脳の機能を活性化させるには②「驚き」が必要になってくる。
②驚き
「驚き」とは、信じていた未来を覆すことである。また、それは「予想どおり→予想が外れる」への変化である。
「エッ…マジか…。ありえんやろ…。」
とあるSF小説の中盤、主人公の父親が主人公をかばって死んだ。今まで誰も死ぬことなく進んできた物語で、これは大きなインパクトだ。しかも、主人公にとって大切な人であり、自分が好きなキャラクターだったらなおさらだ。より主人公に感情移入し、その物語や主人公の虜になってしまう。
このように、「驚き」にも「面白さ」が内包されている。
「驚き」は、前提や日常の思い込みをうまく外すことで与えることができる。疲れて飽きさせないようにするために、①「気づき」と②「驚き」を車の両輪のように、二つで一つとして捉える必要がある。
③ストーリー
「ストーリー」とは人生の隠喩である。また、それは「今までの自分→ストーリーを体験した自分」への変化である。
「…なるほど。うんうん、わかるわかる。エッ…。あ”~~~!あれ?もう終わり…?」
前述したとおり、ストーリーを見たり聞いたりすると、ミラーニューロンによってストーリーをそのまま追体験することになる。
ストーリー上の出来事、登場人物の行動、感情変化、葛藤、対立などだ。
ドラマ「半沢直樹」はとても面白かった。銀行に殺された(自殺)した父親をもつ銀行員が、銀行内外問わず強大な組織や理不尽な体制に挑み、奮闘する姿を描いている勧善懲悪のドラマだ。自分よりも強大な敵からの猛攻を正面から迎え撃ち、全力で叩き潰す。すると、また次の敵が現れ…そういったストーリー構成になっている。
お互い全力を出して戦うのでとてもアツい。アツすぎると言ってもいい。
毎週、見るたびに心をアツくしたものだ。
「あーーー、これはヤバいわ…。めちゃくちゃ面白かった!!」
ドラマを見た人の中には、私と同じような感情がこみあげてきた人もいるだろう。
「ストーリー」は、「気づき」と「驚き」の要素を連続的に内包し、追体験によってさらなる「面白さ」を感じさせてくれる最も重要な要素である。
「面白さ」とは「変化」である
前述してきたすべての要素に共通するキーワードが「変化」だ。「ある要素のプラス・マイナスの変化」と言った方がわかりやすいかもしれない。
理解:わからない→わかる(マイナス→プラス)
知識:知らない→知っている(マイナス→プラス)
成長:できない→できる(マイナス→プラス)
これらは単発でも「面白さ」を生み出せる要素だ。一方で、ストーリーなどの特定の文脈の中でないと「面白さ」を生み出せない要素もある。
富:大金持ち→借金生活を送る(プラス→マイナス)
魅力:イケメン→顔に大きな傷跡が残る(プラス→マイナス)
食欲:満たされていない→満たされる(マイナス→プラス)
特に、マイナスへの変化は自分自身に直接的にかかるのではなく、ストーリーなどで間接的にかからなければ「面白さ」は感じ得ない。ただし、時の経過によって他人事のように感じられるようになれば、ストーリーとしての「面白さ」を語ることもできる。
「スノボをしていて、急に木と戦いたくなったんだ。でも戦ったら負けちゃったんだよね。意外と強くてさ。おかげで2カ月くらい入院するはめになったよ。HAHAHA。」
骨折当時は最悪だったが、今では笑い話にできるものだ。
ドラマや映画、井戸端会議などの特定の文脈のなかで、ある要素がプラス方向またはマイナス方向へ変化することで、「面白さ」を生み出すことができるのだ。
まとめ
ここまでの話をまとめてみる。
「面白さ」とは「変化」である。そして、「面白さ」の主要な3要素である「気づき」と「驚き」と「ストーリー」を掛け合わせることで「面白さ」が生まれる。
これまで細かく説明してきたが、まとめるとこれだけだ。現時点では「面白さの正体はこれだ!」と思っているが、またこれから先、様々な考え方や「面白さ」に触れていくにつれ、私自身の考え方も変化していくことだろう。
この記事は定期的に修正を加え、自分の中にある”面白さ”をどんどんアップデートしていきたい。