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【OAK】もしソニー・グレイをトレードしていなければ?
メジャーリーグの楽しみ方は千差万別、様々な角度から楽しむことができますが、時には過去を振り返ってみてあれこれ「もしも...」を考えてみるのもその王道のひとつでしょう。
ということで今回はもしもシリーズ「もしソニー・グレイがトレードされていなかったら...」です。
2017年7月
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2017年7月31日、トレードデッドラインの最終日にソニー・グレイはニューヨーク・ヤンキースへとトレードされました。
当時27歳のグレイはA'sの虎の子の若手エース。2016年からは故障と不振に苦しむ時期もありましたが、2015年にはサイ・ヤング賞投票で3位に入るなど実績も十分、残り2年半の契約が残る点も彼のバリューを押し上げていました。
さらに当時のA'sは地区最下位に沈み、グレイのトレード前にも長期契約の残るクローザーのショーン・ドゥーリトルとベテランリリーバーのライアン・マドソンをWSHに放出したばかりでした。
つまりソニー・グレイを売る完璧なタイミングが訪れていたわけです。
そして賽は投げられました。
Full trade: Sonny Gray and $1.5M in int’l bonus money to #Yankees; Fowler, Kaprelian, Mateo to #Athletics. On it: @JackCurryYES, @JeffPassan
— Ken Rosenthal (@Ken_Rosenthal) July 31, 2017
見返りとなったのは外野手ダスティン・ファウラー(#4)、内野手ホルヘ・マテオ(#8)、先発投手ジェームズ・キャプレリアン(#12)の3名。いずれも高い評価を受けるプロスペクトで、カッコ内に示した当時のNYY球団内でのランキングからもそのポテンシャルが窺い知れることでしょう。
契約を複数年残すバリューの高い若手エースが強豪に移り、それに見合うだけの対価である3人のダイヤの原石がやってくる.......
そう、そして、このトレードは、、、
このトレードは失敗に終わった
このトレードは目も当てられないLoss-Lossに終わりました。
まずグレイはといえば、NYYに所属した1年半で防御率4.51とエースとは程遠いパフォーマンスを見せ、2018年後半にはブルペン降格も経験しました。
どうやらNYYのスライダーを多投させるコーチングが肌に合わなかったらしく、2019年から移籍したCINでは一転、自分に合うスタイルを構築し、見事にエースに返り咲いています。
そしてA'sにやってきた対価も開花に至りませんでした。
ダスティン・ファウラーは2018年の前半戦に昇格し、一時はセンターのレギュラーを勝ち取りましたが、ラモン・ローレアーノの台頭によって立場を失いました。そして2021年のシーズン前にDFAされ、PITにトレードされました。
韋駄天として鳴らしたホルヘ・マテオは昇格前にマイナーオプションが切れ、2020年前のロスター争いに敗れたのち、SDにトレードされました。
残る1人はジェームズ・キャプレリアンですが、彼は今でもA'sに在籍しています。故障に悩まされながら懸命なリハビリを進め、ついに21年にローテーションの椅子を勝ち取りました。彼の今後にはまだまだ期待できますね。
NYYはその後にグレイを転売できたとはいえ、当時の対価3人のバリューに比べればそれはなけなしのものに過ぎないといえるでしょう。
このトレードにおいてはNYYもA'sも敗者なのです。
もしグレイをトレードしていなかったら?
もしA'sがグレイをトレードせず、キープしていたとしたらどうなっていたでしょうか?
こう問いかける背景にはグレイをトレードした翌2018年の大躍進があります。
生え抜きでコントローラブルなグレイ(とドゥーリトル)を放出したことでA'sは再建モードに突入するかに思われましたが、夏場以降にマット・オルソンとマット・チャップマンの生え抜き有望株コンビがメジャーに定着。未来への布石も着々と固まってきていました。
そして迎えた2018年、チャップマンとオルソンの攻守にわたる活躍、本塁打王に輝いたクリス・デービス、ドゥーリトルの対価としてやってきたクローザーのブレイク・トライネンの"大ブレイク"に牽引され、A'sはなんとプレーオフに進出します。
そして、迎えたワイルドカードゲーム、A'sの前に立ちはだかったのは1年前にグレイをトレードした先のNYYでした。A'sはエース格のショーン・マナエアを肩の故障で失ったこともあり、一発勝負を任せ得る支配的な先発投手が不在だったため、自慢のブルペンを初回から投入するブルペンゲームを行います。しかし、オープナーのリアム・ヘンドリクスが被弾したのを皮切りにじわじわとNYYに差をつけられ、打線も完全に沈黙。力負けを喫しました。
この敗戦の時にこう思ったファンも少なくないはずです。
「もしグレイのようなエースがいれば…」
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さらにその思いを強めるのはソニー・グレイがトレードされた際の裏事情にもあります。
実績も十分で残り契約も2年半残すグレイは引き手数多の人気物件のはずでした。2017年のデッドラインではスターターの人気も例年並みに高く、ホセ・キンターナがイーロイ・ヒメネスとディラン・シーズを含むパッケージで放出されています。
しかし、その予想とは裏腹にグレイの人気はさほど加熱してはいませんでした。The Athleticのケン・ローゼンタールによれば、真剣にトレード交渉を行っていたのはNYYとそしてMILの2球団のみだったと言います。
また、ローゼンタールによれば「A'sはパッケージの3選手の故障・プレースタイル的なリスクを承知していた」とのこと。
つまり、A'sはコントローラブルなエースを市場人気が煮え切らない内に無理にトレードし、そして失敗した、という見方をすることもできます。
Sources: #Yankees, #Athletics have had contact about a deal that would send Sonny Gray back to Oakland, but there is no present momentum in talks. Oakland is looking for pitching and clearly comfortable bringing back former A’s (Cahill, Anderson, et al). @MLB @MLBNetwork
— Jon Morosi (@jonmorosi) November 16, 2018
ワイルドカードゲームに敗れた後、A'sはソニー・グレイの呼び戻しを検討したとも伝えられています。
再び: もしソニー・グレイをトレードしていなかったら?
もしソニー・グレイをトレードしていなかったらどうなっていたでしょうか?最も理想的なシナリオからいけばこうなります。
グレイはかつてのエースの輝きを取り戻し、台頭したマナエアと共にチームのローテーションを牽引。チームもじわじわと調子を上げ、無事にプレーオフ進出(もしかしたらワイルドカード1位、あわよくば夏場には1ゲーム差に迫っていたHOUの牙城を崩す所まで行ったかもしれません)を果たし、グレイの好投でワイルドカードゲームを突破。その後、最高勝率を誇るBOS相手に撃沈し、シーズンを終える(マナエアのノーノー達成もあってシーズン中は比較的分の良かったBOSでしたが、流石にあの年のBOSは強すぎた)。
そして、トレードバリューが疑いようもなく上がったソニー・グレイはオフにトレードとなる…。
という感じです。「グレイと新生アスレチックスの冒険はまだ始まったばかりだ…!」というオチに見せかけ、最後はトレードというオチですが、トレードバリューが上がったならグレイを手放さない手はありません。2018年終了後にはArb3となり、恐らくサラリーもA'sの手に負えるものではないでしょうから。
逆に最悪のシナリオはこのようになるでしょう。
2016年以降の不安定なパフォーマンスを引き摺り、IL入りと炎上を繰り返すばかりのグレイ。2017夏にキープした手前、バウンスバックを待たないわけにもいかず、2019年もチームに残ったもののパフォーマンスは上向かず…NYM晩年のマット・ハービーのようにDFAとなり、球団を去る。
ちょっと酷すぎる顛末ではありますが、ここに2017夏のA'sの決断を擁護できる要素があります。2016以降のグレイは不安定で、FA前に選手を必ずトレードして次世代の戦力を調達しなければならないA'sにとってはその売り時の判断は非常に難しいものだったと思います。
2017のグレイも開幕当初は不安定だったものの、6月後半から調子を上げて6登板連続QSを記録。ここで復活を印象付けて、やっと保有期間の長さを売りにまともなトレードができるとA'sは思っていたのかもしれません。
A'sの立場からいえば、NYYから受け取るパッケージよりも、グレイの放出に失敗することの方がはるかにリスキーだったということです。
終わりに
今回はグレイがいたあの頃に思いを馳せて妄想を捗らせてみました。今でもグレイのことは大好きなので、いつの日かグリーン&ゴールドに身を包んで躍動するグレイをまた見たいものです。
そして書きながら、このオフの情勢も頭をよぎりました。グレイが去った後に芽を出したコアたちがついに放出される番になったかと思うと、感慨すら覚えますね。これからのトレードは規模の大きなものになる可能性も高く、またここから新しい"If"の分岐が生まれることでしょう。
それではまた。
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