【OAK】プロスペクトランキング【2022シーズン前】
1. タイラー・ソダーストロム
打撃に関する心配はほとんどなく、弱冠19歳にしてカリフォルニアリーグで残したスラッシュラインをMLBでも再現すると見る向きは多い。ただ、K%は24%と特段優秀な数字ではなく、今後クラスが上がるにつれて三振数の問題が噴出する可能性がある(フランクリン・バレトの最初のAのシーズンは19.5%)。
ソダーストロムのアキレス腱は長らく捕手守備であった。コンバートが既定路線とドラフト時から言われ、最近では打撃の順調な成長から昇格を早めるためにコンバートをするべきという意見も多い。ただ、本人は捕手へのこだわりが強く、守備力向上を目指している。昨年はスローイングスキルの進境著しく、ブロッキング・レシービングスキルにも改善を見せた。来る自動判定の導入で捕手守備の負担は減ることが予期されることはソダーストロムにとって追い風になるかもしれない。大方の予想に反して、捕手ソダーストロムは順調に成長している。
2. シェア・ランガリアーズ
高い評価を受ける守備面では強肩が最大の武器で、盗塁阻止率は42%に達した。フレーミング面は課題と言われながらもレシービングの柔らかさは備わっており、デビュー当初のショーン・マーフィーのように上向く余地はある。また、投手とのコミュニケーションが巧みでリーダーシップの評価も高い、天性の捕手でもある。
打撃面は昨年22HRを放ったようにパンチ力が持ち味の一つだ。しかし、AAでK%26.0ポイントを記録した粗さは懸念点。MLBでも平均以上の打者になるためにはさらに磨かれる必要があるが、既にAAAに達しており、はや24歳。今後の伸びしろには疑問も残り、結局控え捕手に落ち着く可能性も低くはない。
プロスペクトとしてのバリューは今が恐らく最高潮であるため、再びランガリアーズをトレードしてコントローラブルな選手の獲得に動くのも、A'sにとっては悪くない選択だろう。
3. ガンナー・ホグランド
ドラフトイヤーにTJ手術を受けながら、2021ドラフトでは1巡目指名を勝ち取ったホグランドは、TJ手術さえなければ全体10位以内かつジャック・ライターに次ぐ評価を受けていた可能性もある当クラス屈指の実力者である。
最速97mphまで球威を伸ばした4シームは、スピンレートも2400超・アクティブスピンも豊富で、縦変化を生み出すことに長けている。また横変化の鋭い80mph半ばのスライダーもキレる。
大柄な体躯から球速の伸びしろを見込む声もあり、もともとコマンドが優秀で球速を伸ばしたウォーカー・ビューラーやジョージ・カービーは比較対象に上がる。
唯一の懸念は健康面。ひとまずはTJ手術のリハビリを無事に終わらせ、今年後半からの実戦復帰を目指している。ひょっとするとAFLで見られるかも。
4. クリスチャン・パチェ
どの要素をとっても一級品のCF守備を誇る守備型プロスペクト。MLBでも少ない出場機会ながら、指標は優秀であり、何個もハイライトプレーを生み出している。
一方で課題は打撃。20HR可能なローパワー(生来のパワー)の持ち主とされながら、スキルが追い付かず粗削りな成績しか残せていない。データを参照すると、MLBレベルの速球系に対応できておらず、ストライクからボールになる変化球も見えていないようである。
ラモン・ローレアーノの出場停止期間中にCFのレギュラーを務めることが予想されるため、何とかその期間でメジャーレベルへの対応を図りたい。
トータルで見れば、昨年AAAで記録したようなスラッシュラインを残せれば、ダブルプラスのCF守備を併せて十分価値の高い選手になれるだろう。
5. JT ギン
高校時代にも1巡目指名を受けた、長年嘱望されてきた右腕。2020ドラフトではもしTJ手術を受けていなければTop10ピックになっていた可能性もあっただろう。
投球の軸は最速97mphのターボシンカー。横変化が豊富でゴロを量産できる。プロレベルでも十分に通用している印象だ。アウトピッチはドラフト時20-80スケールで70ともいわれた縦スライダーだが、プラスとは言えてもダブルプラスとまでは言えないクオリティに留まっているように思える。80mph台半ばで大きな変化を描くギンのスライダーだが、スピンレートが低いようで空振りをなかなか誘えていない。よりタイトに変化するスライダーに仕様変更するのもありだろう。また、去年約9%の割合でしか投じなかったチェンジアップの向上が今後のカギと見る向きも多い。スピンを殺すのは巧みだが、縦への変化が足りていないのは気になるところだ。
6. ライアン・キューシック
キューシックのベストピッチは最速102mphで、常に90mph台後半を叩き出す4シームだ。スピンレートも優秀で、容易に空振りを奪うことができる。
大学ではスラーブ系のブレーキングボールを投じていたが、プロでは小さいスライダーに決め球を変更。コンパクトで扱いやすいスライダーを用いることで、より多くの球をゾーンに集められるようにという意図かもしれない。少なくとも現状ではその変更はハマっており、制球が課題と言われながら去年のBB/9はわずか2.2だった。
A'sが今冬にトレードした投手の中では異彩を放つ本格派タイプのキューシックだが、今後どのように育成されるかは注目したい。同じように本格派でリリーフ転向が既定路線と言われながら我慢して先発させ続けたフランキー・モンタスのように大きく花開いてほしい好素材である。
7. ニック・アレン
アレンの守備についてはもはや称賛する必要もない。言い過ぎかもしれないが、問題はもはやゴールドグラブを取れるかではなく、キャリアを通して何個のゴールドグラブを取れるかということにある。
守備型プロスペクトとして知られるアレンだが、攻撃面も成長著しい。
昨年はAAで活躍、その後オリンピックでもアメリカの正SSを務め銀メダルに貢献、帰国後はAAAに昇格し時間をかけながらも適応してみせた。
非力と言われ続けながらも優れたバレルのフィールを示しており、ラインドライブ性の打球を量産することに長けている。よくデビッド・フレッチャーと比較されるが、フレッチャーほどコンタクトツールにとがっているわけではなく、パンチ力もある。そのため、どちらかといえばフランシスコ・リンドーアやホセ・ラミレスといったアンダーサイズの強打者との比較が適切なように思われる。
8. ザック・ゲロフ
2021ドラフト2巡目で入団すると、Aでいきなり好成績を残して一躍注目株に。大学時代はチーム方針もあり、三振を避けインプレーを増やすスタイルに徹し、打球に角度がつけられていなかった。しかし、プロ入り後は36試合で7HRを放ち、大学時代から成績以上に評価されてきたパワーツールを見事に発揮した形となった。一時的に昇格したAAAでも打率5割と滅多打ちを見せ、高い対応力もアピールした。
強打のホットコーナータイプでありながら2ケタ盗塁も可能な運動能力を兼ね備えていることもゲロフの特徴のひとつである。送球難の問題から3Bに残れるか疑問視する声もあるが、むしろ2Bなど他ポジションにもチャレンジした方がバリューを高められるだろう。
9. マックス・マンシー
粗削りだが大ぶりな原石。強みがないと言い換えることもできるが、全てのツールにおいて50~55相当のポテンシャルを秘めている。
打撃面で最大の売りはパワー。ドラフト前のワークアウトでは力感ないスイングで広大なコロシアムのスタンドに何本も放り込み、A'sのスカウトの目を引いたエピソードが示す通り、細身の体に大きなパワーを秘めている。一方で課題とされるのがアプローチであり、空振りの多さは懸念されている。ストライクゾーンへの理解も発展途上にある。
元メジャーリーガーのジャック・ウィルソンに薫陶を受けたSS守備は早くもプロで高評価を得ている。インスティンクト、柔らかいグラブさばき、肩ともにコーチのボビー・クロスビーから太鼓判を得ており、SSに残れるポテンシャルは十分にある。
また、ハードワーカーであり、自信にあふれたメイクアップもプラス。フルシーズンデビューとなる今年はオフ中に増量に成功し、プロへの適応を図る。
*10. ユーリビエル・アンヘルス
"55"評価を得るヒットツールが持ち味のプロスペクト。昨年は19歳ながらA,A+で打率.330を記録した。
ヒットツールを下支えするのはずば抜けたコンタクトスキルで、三振を喫することは滅多にない。アグレッシブなアプローチながら選球眼も悪くない。
一方、A+でPull% 60.3%を記録したプルクレイジーなスタイルは賛否どちらにも取れるだろう。個人的には5'11の小柄な体格で効率よくパワーを発揮していると解釈したい。シフト規制の導入が現実味を帯びていることもあり、さしたる問題にはならないはずだ。
守備は2B/3B/SSを経験している。アジリティーの高さからSSに残れる友いわれるが、守備に優れたSSプロスペクトは他にもいるため、将来的には2Bに収まる可能性が高いだろう。同じ元SDのプロスペクトであるルイス・ウリアスのような成長曲線を描くことを期待したい。
10. コリン・ペルース
2020年のシャットダウン中に最速98mphまで球速を伸ばし、一躍プロスペクトの仲間入り。昨年はA+,AAで好成績を残し、球団のマイナー最優秀投手にも選ばれた。
最速98mph、平均93-95mphの速球をコマンドよく投じられる所がペルースの生命線である。速球は利き手側にホップするように動き、高めのゾーンに好んで投じる。
80mph台半ばのスライダーもプラスピッチ。チェンジアップは課題とされてきたが、改善傾向にある。
AAでの開幕が濃厚だが、AAAでの昇格は間近で、今期中のデビューもあり得る。ここまでに登場した投手プロスペクトの中で最も早く戦力になるのはこのペルースのはずだ。
11. ローレンス・バトラー
2019年にA-で打率.177、K% 40.7%と大きく躓いたが、昨年は急成長を遂げた。
バスケットボール選手のような恵まれた体格を存分に活かし、全方向にHRを飛ばす。29盗塁を決めた走力とも併せて、全体的にジャズ・チゾムを思わせるものがある。また、三振の多さもチゾム似で、昨年は打席の3分の1で三振を喫した。最も四球はよく選べており、我慢強いアプローチを見せているため、改善の余地は大いに残されている。
守備は元々の一塁に加えて、外野にも本格的に挑戦し始めた。当初は拙かっただが、徐々にルート取りや送球が成長し、CFとして見られるレベルになってきている。
12. ブレイヤン・ブエルバズ
フルシーズンデビューとなった昨年は年上の多いリーグで苦戦し、持ち味のヒットツールも打率.219と低迷。しかし、16HR・17盗塁とポテンシャルの高さは示した。
ブエルバズのベストツールはヒットツールで、若くしてアプローチに高い評価を得ている。昨年も四球率9.4%を記録しており、将来的に打率3割を打っても不思議ではない。懸念とされていたパワーでも16HRを放ち、ポテンシャルの高さを覗かせた。
両翼に移るリスクもあると言われていたが、CF守備にも高い評価を得ている。今年のA+でのプレーぶり次第ではTop100に近づく可能性も。
13. メイソン・ミラー
Ⅰ型糖尿病を患っている苦労人だが、病を契機に食とトレーニングを見直し増量に成功。球速は100mphに達するまでになった。
スペックの高さは文句なし。試合終盤まで90mph台後半を維持できるスタミナを持ち、スライダーの威力も上々。4シームは球速こそあれ空振りを奪うタイプの速球ではないため、スライダーに加えて何かしらの新しい武器が必要になるだろう。
そしてこの手のタイプには珍しくコマンドも優秀。リリーフ転向のリスクは少なく、先発としての大成に期待がかかる。フルシーズンデビューとなる今季は早くもAAへのアサインが予想される。ひとまずは健康に一年投げ抜くことが最低限の目標か。
14. ジョーダン・ディアス
天才肌の打撃センスを誇るプロスペクト。ややフリースインガーのきらいはあるが、bat-to-ballにかけては傘下No.1と言われ、拙いアプローチをカバーしている。弱冠20歳のシーズンながらパワーも十分に発揮し、特に逆方向へのパワーは目を引いた。
唯一にして最大の問題は守備が壊滅的である点。オリジナルポジションの3Bに留まれる望みはもはや風前の灯で、昨年は1BやLFにも挑戦したがコンバート先でも何とも言えないレベル。得意の打撃を伸長して、なんとかメジャーに辿り着くしかない。
15. ジョーイ・エステス
マット・オルソンのトレードで加入。指名自体は16巡目だが、オーバースロットでATLに入団。19年のルーキーリーグでは苦戦したが、昨年のフルシーズンデビューは10代とは思えないほどの出来だった。
投球の主体は低めのアングルから投じる4シーム。球威はまだまだ平凡だが、出所が低い分ホップするような軌道を描く。変化球が未発達な点を含め、ジョー・ライアンとの比較がしっくりくる。
未だに20歳のため、伸びしろにも期待できる。ライアン同様、どのように変化球を磨くかは注目したい。
16. ペドロ・ピネダ
備えているツールのダイナミックさは特筆もので、強肩強打俊足のCFになれる逸材。体格の成熟次第で両翼転向の可能性もあるが、両翼に移っても強肩でプラスのバリューをもたらせるだろう。
InFA上がりの選手にしてはアプローチが成熟しているとの評判で、昨年のアリゾナ教育リーグでは16.9%のBB%を記録した。驚異的とも評されるバットスピードとも併せて、25HR超は見込めそうである。
InFAでは連敗続きのA'sだが、アプローチが成熟している点は希望が持てる。三振数さえ抑えられれば、メジャーにもたどり着けるだろう。
17. ローガン・デビッドソン
パンデミックの影響でフルシーズンは昨年が初めてだったが、AAでフル出場を記録。シーズン後のAFLにも派遣され、充実した本格デビューイヤーとなった。
ただスタッツはついてこなかった。プロ入り前から懸念されていたヒットツールの拙さがもろに響き、打率は.212と低迷。選球眼は優秀だが、アプローチが慎重になりすぎるあまり打てるカウントを逃している印象を受けた。打撃はAFLで持ち直したため、今季のバウンスバックに期待がかかる。
守備は大柄な体躯にもかかわらず優秀。SSも十分にこなせるだろうが、名手ニック・アレンがいるため強肩を活かして3Bを守るのが適任だろう。
ドラ1だけあってポテンシャルは抜けており、A'sにとっては何としてもモノにしたい逸材のはず。今季は本人にとっても重要なシーズンになる。
18. ジョナ・ブライド
ドラフト23巡目から這い上がり、ついに昨年日の目を見た。AAでブレイクし、AFLに派遣、オフにはルール5プロテクトでのロスター入りを勝ち取った。
ブライド最大の武器はアプローチ。昨年は選球が向上し、BB=Kの成績を残した。コンタクトスキルも優秀で、速球に対して空振りを喫することはほぼない。
パワーツールは目立たないが、AFLでは100mph超の打球も記録。ハードヒットを打てないわけではないようだ。
さらにブライドの価値を高めているのは汎用性。本職は3Bながら、シーズン中は1Bをメインに2Bもこなした。さらにシーズンオフからは捕手にも挑戦しだし、幅を広げた。たとえ捕手でなくとも十分価値のある選手になれるだろうが、もし捕手もこなせるスーパーユーティリティとなればその価値は絶大だろう。
19. デンゼル・クラーク
傘下No.1アスリートと言っても過言ではないかもしれない。クラークはNFLかNBA選手かと見紛うような立派な体躯の持ち主で、底知れぬアップサイドを備えている。
パワー、スピード、アームといった身体能力が直結するツールの評価はべらぼうに高い。懸念は唯一、カナダでプレーしていたためトップレベルとの対戦経験が乏しく、アプローチが未熟である可能性だ。こればかりは蓋を開けてみなければ分からないため、今季には注目したい。
20. ジェフ・クリスウェル
昨年は傘下トップの投手プロスペクトとして期待をかけられて臨んだシーズンだったが、肩の故障で大きく躓いた。シーズン後にAFLに派遣されたが、そこでもピリッとしなかった。
クリスウェルは典型的なピッチングプロスペクトのプロフィールの持ち主である。90mph台半ばの4シームとブレーキングボールのコンビネーション、チェンジアップとコマンドが懸念というどの組織にも一人は必ずいる投手だ。
プロ入り後にチェンジアップは改善させたが、コマンドは相変わらずでリリーフ転向のリスクを否定できない。ファンキーなデリバリーはコマンドの欠如と故障癖の両方に寄与しているとも言われ、デリバリーの改良が必要かもしれない。
今シーズンは再びA+で開幕する見込み。とにかく健康を維持できるかが鍵になる。