はじめに

【はじめに】
『根本治療』と称しているのに、根本解消を提供できていない治療が多い。

とくに近年、SNSによる個人の情報発信が旺盛となり、関節を一様にバキバキと鳴らして「治療できました」「治りました」感を出している整体治療がやたらと目に留まり、目に余る。

根拠に基づいた施術を提供することが根本治療の要諦であり、根拠が欠如し形骸化した治療が横行し続けている現状は、お客様の利益を置き去りにした医療従事者の怠慢さを反映している。

ここに於いて根本治療の基礎となる『根拠』と『お客様の利益』とをそれぞれ明確にしておく必要がある。

〈根拠〉
⚫︎原因の視認
⚫︎原理メカニズムの説明
⚫︎治療後の効果測定

〈お客様の利益〉
単に痛みや症状が解消されるだけでなく、恒久的に自身のカラダの動きを制御できる自律的自由を手に入れること。


パキパキ治療を敵視するつもりはないが、関節を鳴らして音が鳴ったとして果たしてそれが何だ?というのだろう。逆にパキパキと音が鳴らなくなれば、それで直ったことになるのだろうか?

答えは『否』である。

なぜなら、音が鳴る状態が何度でも再発するからである。パキパキ治療で施術している側は同じお客様に同じ治療を何度も提供している。患部が改善しているのであれば、同じ治療の対応にはならないはずなのに。

学術的にも関節の音が鳴ることは「キャビテーション」として認知され、関節包内の気泡が破裂する状態だということが分かっている。

音が鳴る原理は以下の通りである。骨と骨との間には椎間板と呼ばれるゴムのような緩衝材が挟まっている。この「骨・椎間板・骨」の一個体を関節と呼ぶ。椎間板を構成する主成分は水であり、ここに上下圧が加わることで関節包内の空気が水に溶け込み「炭酸水」状態になる。(体位置が軸ブレを起こすことで上下圧が生じる。詳しくはP45 第2章 カラダ軸のブレを参照)

コーラやサイダーなど、炭酸水のペットボトルのキャップをひねり開けることで、外圧によって水に溶け込んだ空気が一気に解放されて音と泡とが出るのはご存じの通りである。つまり、パキパキ治療は水から空気が弾け抜ける際にポンと音が鳴るのと同じ仕組みで関節をひねって外圧を抜いているだけなのだ。逆に言えば、外圧が加われば何度でも空気が水に溶け込むため、外圧をひねり解除することで何度でもパキパキ治療が成立するのである。

関節が鳴ることでガス抜きができるため、一時的に詰まり感が取れることで症状が緩和するのは事実である。しかし、関節に上下圧が加われば関節の窮屈感は再発するため、再びガス抜きが必要とされてしまう。問題は何故、上下圧が加わるのか?ということで、この問題を解決しない限り関節のパキパキ治療を繰り返すばかりで、どこまでいっても歪んだ骨が正しい位置に戻ることはない。

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