犬(愛玩犬)に新型コロナウイルスcovid-19は感染するのかという疑問に対する答えを模索してみたい。
はじめに
私は、ジャックラッセルテリア2頭と暮らしている。新型コロナウイルスが感染拡大をしている昨今、犬に新型コロナウイルスは感染するのかという疑問は、私自身、以前よりも増して興味がひくものとなっています。
加えて、このことについては以前から、時間をかけて調べてみたいと思っていましたが、仕事の都合で、なかなか時間が取れず、調べることが出来ないでいました。しかし、ここにきて、少し時間が取れたので、上記の疑問に対する答えを模索したいと思い、ここに記載するに至った次第です。
疑問の端緒
疑問の端緒は、香港での「新型コロナウイルス感染者の家庭で飼育されていた犬から同ウイルスの弱陽性反応が出た」というニュースです。しかし、この香港の例をよく調べてみると、「体にたまたま付着したウイルスの遺伝子を PCR で検出した可能性が考えられ、犬にウイルスが感染し、犬の体内で増殖して排出されたと確認されていない。」という見解がほとんどです。
その後、ニューヨークの動物園でのネコ科動物への感染や、ベルギーでの猫への感染が報告されています。
また、中国やドイツにおける感染実験では、豚や鶏は非感受性であり、犬も感受性が極めて少ないとしています。
さらに、猫とフェレットは感受性が高く、猫は臨床症状を示さず、または下痢症状を示して、猫から猫への感染が見られると報告されています。
そのほか、オランダでは、毛皮用に飼われていたミンクと農場従業員の間で双方向の感染の疑いが報告されています。
しかし、これまで愛玩動物から人に感染したという事例は報告されておらず、ベルギー当局も「ペットから人に感染する危険性はない。」としています。(http://nichiju.lin.gr.jp/covid-19/covid-19_file10.pdf 参考)
なお、伊バーリ大学の研究チームの報告(対象:ペットの犬540頭・猫277頭)によると、PCR検査で犬猫ともに陽性はゼロでしたが、抗体検査では犬で3.4%、猫で3.9%が陽性とのことです。
また、飼い主が感染している家庭の犬の方が感染していない家庭に比べて陽性率が高かったという報告もあります。
直近では、新型コロナウイルスに感染した方の飼育するペットをお預かりするアニコムグループでのプロジェクト『#StayAnicom』で、お預かりした2世帯の犬2頭において、「陽性」の結果が確認されたことが報告されています。 (https://www.anicom.co.jp/release/2020/200731.html 参考
このように報告例だけから考えると、感染した人から犬の感染は否定できないけれども、感染した犬から犬、感染した犬から人への感染はないと判断したくなります。
新型コロナウイルス(covid-19)とは
そもそも新型コロナウイルスに感染するしないを考える前に、新型コロナウイルスのことを知る必要があります。敵と戦い倒すには敵を知る必要があると思ったので、ここからは新型コロナウイルスについて考察したいと思います。
新型コロナウイルスは、ウイルス
新型コロナウイルスは、ウイルスです。ウイルスとは、感染性のある微生物(肉眼で見ることが出来ない小さな生物)の1つです。
その他、感染性のある微生物といえば、細菌(例、大腸菌)、マイコプラズマ(例、マイコプラズマ ニューモニエ)、原虫(例、クリプトスポリジウム)があります。
ウイルスの大きさ
ウイルスの大きさは、0.1μm(マイクロメートル)です。素人には、聞いたことのない単位ですね。
ウイルスの増殖
ウイルスは、細菌よりもとても小さく、自分自身で細胞を持たないので、他の細胞に入り込んで生きていきます。
ウイルス単独では、増殖できませんし、細胞の外では増殖できませんし、生きた細胞でなければ増殖できません。
例えば、人の体にウイルスが侵入すると、人の細胞の中に入ってウイルスを複製し、人の細胞を破裂して沢山のウイルスが飛び出し、他の細胞に侵入し、増殖していきます。
他方、細菌は、細菌単独で、複数、多分裂して増殖することができます。
ウイルスが感染する方法
では、ウイルスはどのように、細胞に侵入、感染するのであろうか。
(coronavirus_200220lecture.pdf 出典)
ウイルスは自身の表面にあるスパイクタンパク質の「突起」を「鍵」として、細胞の表面にある「鍵穴」(ウイルスレセプター)に、「突起」をはめて 細胞に吸着・侵入、感染します。
ウイルスの性状
ウイルスはエンベロープを持つものと持たないものが存在する。
エンベロープとは、脂質と糖タンパク質から構成される膜です。エンベロープ (脂質) は エタノール (アルコール) などの有機溶媒に溶けます。
エンベロープを持つウイルスの代表格は、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスなどです。
他方、エンベロープを持たないウイルスの代表格はノロウイルス、ロタウイルスなどです。
エンベロープを持つウイルスは、エンベロープが溶けるとウイルスが死滅します。
(coronavirus_200220lecture.pdf 出典)
ウイルスの抵抗性
一般に、ウイルスは高温に弱いとされている。60℃で30分間もしくは100℃で1分間加熱すると、ウイルスは死滅(失活)します。
一方、一般に、ウイルスは低温に強いとされる。4℃で数週間から数ヶ月もしくは-70℃で数年間、ウイルスは死滅(失活)しません。
また、 pHに対する耐性については、pH 5 ~ pH 9 の間では、ウイルスは安定状態にあります。さらに、 基本的に、エンベロープがあるウイルスは、エンベロープがないウイルスに比べて酸に弱いとされます。
加えて、紫外線やX線に対する耐性 については、ウイルスは紫外線やX線で直ちに死滅(失活)します。
注意してほしいのは、実際は、上記のウイルスの抵抗性は、ウイルスと有機物の存在、ウイルスがエアロゾルなのか、または液体中なのか、の条件によって変化するので注意が必要であるとのことです。
(coronavirus_200220lecture.pdf 参照)
コロナウイルスの名前の由来
ウイルス粒子表面の「突起」が太陽の「コロナ」に見えるからということです。「コロナ」は、ラテン語で「王冠」という意味です。また、中国表記は、冠状病毒です。
コロナウイルスの種類(分類)
1.コロナウイルス科 (オルソ)コロナウイルス亜科
1-1.アルファコロナウイルス属
ヒトコロナウイルス229E (風邪)
ヒトコロナウイルスNL63 (風邪)
ブタ伝染性胃腸炎ウイルス (胃腸炎)
ブタ流行性下痢ウイルス (胃腸炎)
イヌコロナウイルス (腸炎)
ネコ伝染性腹膜炎ウイルス (致死性血管炎)
コウモリコロナウイルスHKU6 (不明)
1-2.ベータコロナウイルス属
SARSコロナウイルス (肺炎)
MERSコロナウイルス (肺炎)
ヒトコロナウイルスHKU1 (風邪)
ヒトコロナウイルスOC43 (風邪)
マウス肝炎ウイルス (肝炎)
ウシコロナウイルス (腸炎)
コウモリコロナウイルスHKU4 (不明)
2019新型コロナウイルス (肺炎)
ウマコロナウイルス (腸炎)
1-3.ガンマコロナウイルス属
ニワトリ伝染性気管支炎ウイルス (気管支炎)
シロイルカコロナウイルス (不明)
1-4.デルタコロナウイルス属
ブタデルタコロナウイルス (胃腸炎)
コウモリコロナウイルスHKU16 (不明)
(coronavirus_200220lecture.pdf 参照)
2019新型コロナウイルス (肺炎)は、分類上、コロナウイルス科 (オルソ)コロナウイルス亜科のベータコロナウイルス属に分類されることになる訳ですね。
犬に新型コロナウイルスは感染するのか?
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?