小説 人蟲・新説四谷怪談〜九
伊右衛門の目の前に雪に染まった古い庵がある。
伊右衛門は庵の古い扉を開く。
極度の緊張と、雪の中を薄着で歩き続けた疲労で、伊右衛門の意識は朦朧としていた。
身体を庵の中に差し入れる。
ムッとする湿気と独特の黴の臭い。
無数の「何か」が蠢いている。
油断すれば失いそうになる意識を懸命に繋ぎ止め、伊右衛門は闇の中に目を凝らす。
闇の中に…。
白い…。
着物が、
見えた。
「岩…。」
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