S24 『翻訳家ゼウス』

ナレーション:天に住む髭を生やした住人
(以下、天ナレ)
「口から出た言葉だけが真実とは限らない。もちろん本当に心のこもった“声”は存在するのだろう。ただ大体の人はその声に化粧をして見栄え良くしたり、想いとは反対の意思を忍ばせたトラップを仕掛けたがる。それらに振り回されるこの世界は・人間たちは、非常に滑稽だが愛くるしい。もはや、本音や真実を語らない側も、それを見破ることのできない側も、すべてひっくるめてどうしようもなくて、人間という性にリードをつけられているのがヒトなのだろうと思える。話が長くなってしまってすまない。つまりまあ、そんなヒトとヒトが出会い、描く人生模様に、たまにはプレゼント、というか茶々を入れようではないかと考え、この地に降り立ったわけだが・・・、あ、早速ヒト同士の邂逅だ」

女 「いま、そんなこと言ってないじゃない」
<字幕(心の声)>まあ、言ってるんだけどね。あんたじゃないって。

男 「いや、そういうふうにしか聞こえなかったよ。そんなにダメか、俺ら」

女 「嫌とかじゃないの、わかって。私たちのために絶対そうするべきよ」
<字>あんたとHしても気持ちよくないもの。本命でもないのに、メリット0でしょ。


男 「君も俺といっしょだったんだね、この関係以上に互いを必要としすぎてしまった」


女 「だとしても、よ。だめよ、一緒になんかなっちゃ。ちゃんとアヤカを大事にしないと」
<字>ってか、アヤカもよくこんなやつと結婚しようなんて思えるわね。ゴリゴリのスポーツマンだから、キモチいいかなと思って、ヤってみたけど、もう飽きたわ。プレーしつこいし。この関係も願い下げレベルで下手だし。

男 「俺、、アヤカと別れようと思う。。俺と一緒になってくれないか。君じゃなきゃだめなんだ」


女 「そんな、よして。私たちは離れ離れになる運命だったのよ。受け入れましょ、運命。楽しかったわ」
<字>うん、運命だから、まじで。離れるディスティニー、バンザイ!なんで、Hして夜を数回過ごしただけでこうもお熱になれるのかしら。性癖だけじゃなくて、オツムもどうかしてるわね、コイツ!!別にいいけど、こんなヤツと一緒になってしまうなんて、そこまでの友達だけどアヤカ可哀想だわ、はじめて同情するわ。


男 「え、待ってよ。俺、本気だよ。今からアヤカ振ってくるよ。俺の本気、見てて」


女 「何言ってるの!私そんなの望んでないわ。アヤカも大切な友達だし、あなたのことは好きなままサヨナラしたいの。だからお願い、待って。そんなことしないで」
<字>いや、無理無理無理無理!!!マジでやめて!キモいし、この自信過剰な感じはナニ?なんでこの過信モード入ってんの、コイツ!?私が好きなわけないじゃん、こんなノーキン。いやー、思わせぶりな態度とりすぎたか~。どうしたもんか、どうにかならんかな、このこじらせ男子。


天ナレ
「なんか不毛なやりとりだが、一方はチャンス、ある一方にはピンチなこの状況。世界の形はまるっきり変えないだろうしょうもないことだが、どれ、少しヒトがもつ本当の窓を開けて、いろいろ見えやすくしてやろう。そ~れ」


(つづく)

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