S26 『占い師は占えない 3』
優子(以下、優) 「これは、なんですか?この写真の子は早坂さん、なんですか?」
怜子(以下、怜) 「私じゃない」
優 「では、なんなんですか、この写真は。関係あるんですか?写真とわたしが」
怜 「関係あるっっ!!!この子は、伊藤楓」
優 「楓さんですか、、。この子とわたしに何か、ってことですよね」
怜 「そうですね。分かりますか?」
優 「いえ、分からないです」
怜 「この子は、私の妹です。苗字が違うのは私たちが中学のときに両親が離婚して別々に引き取られたから」
優 「・・いじめ、とか、ですか?」
怜 「!!!?」
優 「この色褪せたノートを見る限り、そうなのかな、と」
怜 「・・ほんとうに何も覚えてないんですか?これが誰の、、誰たちの仕業でこんな仕打ちを受けていたのか?!」
優 「・・わたし。。なんですか?」
怜 「・・・そうよ!あなたよ、足立優子!あなたが中心の女子グループにやられたのよ!!このノートの最後のページにも書いてあるし、同じクラスだった他の子たちには聴取済みだしね」
優 「ごめんなさい。。ほんとうにごめんなさい。。誰もそんなこと教えてくれなくて。これまで少しも知りませんでした。。」
怜 「そりゃそうでしょうね。それ知ったらただでさえ、事故のショックに加えて、ショックを与えたくないのと、あなたを守りたい親や周りの大人が色々動いたでしょうから」
優 「・・、いまさら遅いかもしれませんが、、謝りたいです、楓さんに。嫌がるかもしれませんが、どうしても」
怜 「いまさら・・、、遅いわよ」
優 「もちろん遅いし遅すぎることは分かってます。でも、今のわたしがこれはイケナイことだと、酷いことだと感じ、それを償うには会って、色んなことをすべて受け入れるほかないのだろうと思うんです。どうにか楓さんに謝りたいです」
怜 「だから、遅いんだって」
優 「でも、わたしは、」
怜 「もういないの!!この世に。。」
優 「え・・」
怜 「高校卒業してほどなくよ、大学も決まってたのに、ある日刺されて死んだわ」
優 「刺されて死んだ、、」
優子、突然頭を抱えてうずくまる。
********************
(回想:優子の家)
優 「うん、刺していいわよ、後ろからね。刺したら逃げなさいよ、捕まると面倒だから。え?成功したら?分かってる分かってる。付き合うわよ」
優子、卒業アルバムの伊藤楓の顔を黒ペンで塗りつぶす。
優 「伊藤楓、あいつマジでしぶとい」
(回想:桜が満開の大きな公園)
花見客で賑わう公園。
場所取りで人がごった返している。
長身の男性が腕時計を見ている。
視線を外して顔を上げた先で手を振っている女性を確認した。
男性、スマホを取り出し、電話をかける。
男 「もしもし、見つけた!こっちだよ!」
楓 「うん、私も見つけた!ちょっと待ってて、今いk。。」
男 「楓?どうしたの?大丈夫?」
少し離れたところから、花見客の叫ぶ声。
人がどんどん集まって輪を作っている。
気になって、その輪を見に行く男性。
そこには、うつ伏せのまま血を流して倒れている楓。
男 「楓!楓!!ちょっと誰か、病院に連絡してください!!お願いします!!!」
その輪から離れたところで、男が電話をかける。
電話がつながらない。かけた番号は現在使われてないと言われる。
ほどなくして、公園の警備員に抑えられ、刺した男が捕まえられた。
(回想:優子の家)
優 「弘樹があんなやつ選ぶからいけないのよ」
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うずくまっている優子を抱きかかえ、机に座らせる怜子。
優 「すみません。もう大丈夫です。分かりましたから、ようやく」
怜 「・・そうですか」
容赦なく優子にナイフを突き刺す怜子。
怜 「あなたがしたことを、あなたにしてあげただけ、足立優子さん。記憶があるとかないとか、そんなの関係ない。ノウノウと生き過ぎなのよ」
優 「ハァ、ハァハァ、、」
怜 「もう全部思い出したんでしょ?じゃあもう分かるわよね、すべて。罵詈雑言にまみれたこのノートのことも、睡眠薬をたくさん投与されたという診断書があることも、佐藤弘樹くんのことも。だから今、自分がそうなってることも。ちなみにだけど、次の客は来ないし、その次もその次も来ないわよ。だって今日はずっと私が予約したから、この占いの館の。てことだから、死んで」
優 「ま、、っ、、、、て」
怜 「ううん、待たない。そうやってあの子の頼みとか聞いたことないでしょ、あなたも。あ、あと、私の旦那さん、佐藤弘樹だから。別にさすがにもう関係ないか。ごめんごめん。もう十分だから、もうこれで終わりだから、ね?楓」
(優子の走馬灯)
優 「記憶なかったはずなのに、完全に蘇ったわ。そういえば占い師になったのって、事故後に人のオーラとか死相とか少し見えるようになったからだけって思ってたけど、どっかでそのときのひどい私を償って中和したかったのかもしれないな。もう遅いけど、まあ仕方ないね、今の私なら分かるもん、昔の私みたいなヤツ、絶対無理だもんな。でも、分からないな、やっぱり。自分のことは自分が一番分からないんだな、どうしようとも」
血が流れ、うつ伏せのまま倒れている優子。
その周りには誰も集まることはなく、3日後になって黄色いテープで囲われ、数人の刑事たちによって発見された。
(了)
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