浅倉透の今ここ性と時間感覚【シャニマス】
はじめに
当たり前ですがネタバレあります。というかネタバレのない感想にどれだけの価値があるのか。というのは置いておいて。あともし全文読んでくれる人がいるとしたら、透のカード全部読んでいることが前提になっています。また、天塵や海へでるつもりじゃなかったし、そしてもちろん透の共通コミュもです。まぁでも最低限共通コミュ読んでればなんとかなるかもしれない。
というのも、透のカードと共通コミュはどれも全て非常に親和性が高いです。共通コミュとカードの2つを読んでいくことで、GRADやwingでの透の考え方が見えたり、あるいはカードのコミュで言ってたことが見えてきたりします。ので、もしこのnoteを読んで気になったりあれ?って思ったことがあれば、一度共通コミュやカードを読み直してみることをおすすめいたします。
時間の向き
突然ですが、もし時間に向きがあるとしたら、それはどの向き・どの方向に流れるでしょうか?
わからん。でもいいんですが、恐らく一般的に考えるとするならば左から右へ、という時間意識がかなりポピュラーだと思います(なんかしらの裏付けがあるわけではない)。というのも、例えば今このnoteも含めて”時間”が左から右へと流れていますよね。まぁ下の行に続いているので、あるいは上から下と答える人もいるかもしれませんし、前と後ろでもあるかもしれません。まぁこれらはいずれにせよ相対的方向ですが。北に流れるよ!とかなら絶対的な感覚でしょうね。
一方で国語の授業を思い出す必要もなく、日本語は右から左へ、という風に縦書きの場合は流れていきます。もちろん、横書きだったとしてももっと昔は右から左です。ただ欧米ナイズされたというか、左から右の横書き文化圏にすっかり染まってしまった昨今のジャパンでは恐らく左から右へ、という時間感覚がかなり一般的なんじゃないかと思われます。まぁこの左から右は地域差あるみたいです。昔の日本同様に右から左の文字の流れも世界には普通にあるので。関係ないんですが横書きの話で個人的に凄く驚いたのが、確か心くんだったんですけど、テレビで自身の国語のノートみたいなのを見せてたときに横書きだったんですよね。今の時代、国語の授業も横書きなのかー、となんだか微妙な気分になりました。
では肝心の浅倉透はどうでしょうか。きっと、わからん、なんて言うと思います。まぁそれもわからん。ともあれ、透本人がどう考えていたのかとしても、コミュを読んでいる限りでは左から右のような時間の流れではなく、縦方向への流れ、という意識が強く感じられます。
かの有名なジャングルジムを筆頭に、というかそれをモチーフにして「のぼる」ことが描かれています。また「てっぺん……近づいてるみたいな感じがするんだ」という言葉もある通り、浅倉透にとっての時間の先(未来とは敢えて言わない)は、左から右へというような感覚とは違い、縦方向に伸びているものだ、と言ってしまって問題ないでしょう。
しかしこののぼるモチーフは透の時間感覚ではなく、彼女自身の人生への考え方、頑張らないと、いや、精一杯息をする。というようなものの現れという風にも考えられます。というか多分そっちの方が普通に考えれば正解に近いような気もします。ただ、透はwing編で有名人と間違えられて挨拶されているとき、ジャングルジムを念頭に起きながら人生長いよねー、という発言をしています。ので、ジャングルジムをのぼる=人生という風に捉えれば、縦方向への時間の向きというのもそれほどおかしくはないはずです。
まわる時間
一番直近で出た限定PSSR【つづく、】の一番最初のコミュタイトルは「まわる時間」でした。まぁ「ま」は空白になっているんですが。ともあれ、このまわる時間というのはこのコミュ自体を象徴しているようでもあり、また浅倉透が今まで散々コミュ中で述べてきた彼女自身の時間感覚を表しているものでもあります。
というと、さっきお前縦方向に流れるいうたやん、っていう突っ込みが入りそうですが、別に時間の向きが縦方向なことと透の時間感覚が回っていることとはなんら問題がないと思っています。いやむしろ、縦方向の向きで時間が流れているからこそ、透の時間感覚が回っているのだと言えます。それを軸にして周囲が回っている、というようなイメージです。
このまわる時間、あるいは循環する時間感覚はすでに指摘している人もいますし、コミュを読んでいれば【まわるものについて】でそうと気づく人も少なくないと思います。例えばPが追いつかないというと、私が追いかけてるかもしれないと言う場面なんかが象徴的です。あるいは「海へ出るつもりじゃなかったし」なんかでも透の時間感覚が独特なことは描かれていました。
今ここ性。あるいはspace-time
ところでもう一つ、時間の向き、まわる時間の他に、浅倉透には本記事のタイトルにもつけている強烈な今ここ性があります。
【10個、光】では、一生のうちにやりたい10のことは?というインタビュー記事の内容のもとにコミュが進んでいきます。そこで透は
今やりたいこと、今大事にしなきゃ
明日、宇宙人とかが攻めてくるかもしれないし
というように、今を重視する考えを見せています。また、TRUEでは星を追ってきた公園で、ここって誰かのもの?というような発言も見せています。
このここ、ということに関しては透自身も完全に言葉にできていないので解釈の分かれるところではあると思いますが、恐らく時間のことだと思います。あるいは、空間-時間――space-timeというように。
余談ですが、space-timeを時空と言わないのは、時が前にくるのってなんか違くない?って個人的に思ってるからです。空時っていう方がいい気がします。もちろん日常生活では時空って言いますけどね。なんでそう思うかとか言い始めると長くなるので以上余談でした。
透はここって誰かのもの?という問に続けてもっと『ここ』、世界、そしてもう一度ここ、最後に今。世界については透自身違うと思っていましたが、そう言うしかなかった。だから、透にとってクリティカルな言い方は、ここ、そして今。まさにspace-timeです。
最終的にこのTRUEコミュは自分たちが追ってきた星をいつか見つけよう、という風に収まります。もちろん、これは星を本当に見つけようと思ってるわけではありません。先程の今ここ(ここ今の方がいいかもしれないが今ここのが語感が好きなのでそうします)に照らし合わせてみると、今ここがひっついた今ここ、ということになります。トートロジーのようになっていますが、これでいいのです。
カセットテープに今ここを貼り付けられる、と考えていた透とここで繋がります。例えば透は最初にカセットテープを見つけたときに、
一緒じゃん、でも
空気がくっついてるのと
声とか、空気とか
時間とか
という発言をしています。【つづく、】TRUEでは、加えてPも同一の発言をしていました。なぜかその発言を受けて透はおー、なんて言うんですが、なぜこのPの発言におー、なんて言ったのかは透の時間感覚によるものでしょう。
というのも、先程まわる時間、あるいは循環する時間、という風に書きました。ただ、これは正しいけれども正しくない。もっと捉えるならば、透の時間意識はまわる”今”であり、循環する”今”だ、という風に言うべきでしょう。あるいは今ここでもいいかもしれません。
――ふふっ
ヘンな時間だね、なんか。今って
過去みたいな、未来みたいな
前回のnoteでは「ハング・ザ・ノクチル!」という言葉を手がかりにノクチルについてやや書きました。そこで透の考える今と円香の今の違いについて少し触れたのですが、やはり透は強烈な今ここ感覚に貫かれていると言って過言ではないでしょう。【つづく、】コミュではさらに予言というモチーフを使って、過去と未来を今にする。そして、過去と未来も今にする。(なるではないのもポイント)
そう考えてみれば、透が別れ際にいった
おつかれ
また明日
というのも、なかなか強烈な”予言”だと思います。あのカセットテープに込められた言葉がこれかはともかく、直後テープの回っている音が鳴っているので、彼女にとってのこの言葉は予言でもあり、現実です。別にまた明日くらい当たり前のことかもしれないですが、それを予言という風に捉えているのは、これがずっとつづく、というようにも捉えられるので、実は結構すごい爆弾発言してますよね。
TRUEコミュから戻って「リバース」ではドラマをモチーフに時間について言っています。曰く、誰も覚えていなくて、カセットテープの切れ端のような時間と。ただここで彼女がアイドルになる前と違ったのは、ジャングルジムを一緒に登ってくれるPという存在がいることです。言い換えると、今ここ――space-timeの共有です。
じゃあ幼馴染ーズはどうだったんだ、っていうことになりますが、もちろん彼女たちも透にとってかけがえのない存在であることは確かではあるものの、今ここの共有とはちょっと離れたところにいたのかもしれません。理由はわかりませんが、強いて言うなら船を動かすために大切な船員でもあり仲間でもあるが、隣で一緒に船を走らせる人ではなかった。ということなんでしょうかね。
例えばこれも前回のnoteで書きましたが、円香の今は透の考える循環される今ではありませんし、小糸は今のために未来を見ますし、雛菜は透とは違った意味で今を重視します。
wingではジャングルジムをのぼってきたら、プロデューサーがいた。という風に言うので、そういう意味では透にとって必要だったのは他者であったのかもしれません。無意識にあの人だったら言葉がなくても伝わる――これは透と円香の関係性に非常に近いです。また、【pooool】での雛菜との会話を思い出してみても、クラスメイトからはツッコミどころ満載の透の話も、雛菜からすればそれでよかった。小糸は二人ほど透に対して理解みたいなものはありませんが憧れは持っていて、というように。
この中では円香との関係はPと非常に近かったものの、やはり今の断絶というのが大きかったのかもしれません。まぁ、そうはいってもPは最初透のことはわからないですが、ここで円香とやはり違うのは、透に対して示唆を与えられるというところだと思います。
円香は透の考えてることはすごくよく分かるし、透は透で円香のこと色々わかってます。アウトプット苦手なので見えづらいですが。お互いに良き理解者であるものの、円香がよく知っている透は”今”の透です。だから、透がアイドルなんてものにたぶらかされたと知って、非常に敵対する態度できていましたがきっと、いや間違いなく円香にとっては今まで感じたこともないほどの動揺だったのでしょう。じゃなければあんな行動力発揮しません。
もちろんノクチルは、これも前回のnoteで書いたように、既存のアイドル像――頑張るような、トップアイドルを目指すような、遮二無二ではなく、という提示がされているので、仕事中の透が考えていることだって円香にはわかります。でも、GRADで透が考えていたことはどうだったんでしょうか。まぁここはまだコミュでてないのでわかりませんね。
ちなみに、循環する今というのがあったとしても、別に透に未来への感覚がないわけではありません。ただ、彼女の”周り”に循環する今があるのであって、彼女自身はずっとのぼりたいと考えています。これが、一番最初に述べた時間の向きです。
しかし最初に時間の先というような表現をしましたが、この縦方向の時間の向きがあるとしても、それを未来-過去とすぐさま一緒に見てしまうのは危険です。
これもやはり【つづく、】コミュからですが、例えばPが日誌を書いてもらうときに、時間が増える。経験が増える。というような言い方をしています。この言葉遣いから、あるいはTRUEの現実に”する”というような言い方から、Pは少しでも透に近づこうと、あるいは一緒にのぼろうという意識が強く垣間見られる言葉遣いなのですが、ともあれそこでの選択肢でのりものを選ぶと、透がバスと車で流れる時間が違うといいます。
ここでも、過去未来といったわかりやすさはあるものの、透はその言葉を使いません。バスは後ろに流れていき、車(Pと乗っている車)では、言葉とか、色々なものが前に飛ぶ。敢えてここで言及されていないノクチルの面々と一緒だったら?ということに踏み込んで考えてみると、恐らく前にも後ろにも飛ばない。きっと、ノクチルはそういう関係性で、だからこそ美しい。ノクチルは常に一瞬の今、というかけがえのなさがあるのかもしれません。
そう考えると、【思い出にもならない】というカード名は、彼女たちの普段の関係性を見せる上では非常に優秀な一言だと思います。ただ、それでもノクチルになったのだから、きっとそこでは思い出にもならないような関係性だけではないなにかが見えてくるのかもしれません。が、まぁノクチルのコンセプト的にはそれが見えたとしても、別にそこに行く必要もないような気がしますが、はてさて。
終わりに
本当はGRADのミジンコ関連の話なんかもしようと思っていたのですが、例えばあれも強烈な今ここ性に貫かれている透にとって、息してるだけで精一杯生きていることになるミジンコ(プランクトンは自力で泳げない。流れるまま)を見て、心臓がドキドキ動いているのを見て、ミジンコのような生き方――今ここを全力で生きる。というのを見たのかもしれませんね、というようなことをつらつら書きたかったですが、6000文字を越えてしまったのでまた次回にします。
最後にspace-timeなんてカッコつけて使ったな、とか思ってるかもしれませんが、これはこれで一つこじつけでも面白いなと思ったので。空-時である方があくまで僕個人的に好きだっていうのも理由の一つですが、spaceって宇宙って意味もあるんですよね。透の感覚にspace-timeというのはそういう意味でもうってつけであるように感じました。
でも面白いのがそんなノクチルのモチーフは海洋冒険です。透は空を見る。ノクチルは宝島やランサムサーガモチーフ(海へ出るつもりじゃなかったしの船員の役回りはランサムサーガ)ですし、思えば最初のイベントコミュは『天塵』で、次は『海へ出るつもりじゃなかったし』。挙げ句のはてにコミュ中では空を飛べるオウムにノロマと言われてしまう。
ただ、そんなでも海にでてしまった。だから風を探している。いや、風を探さなければいけなくなってしまった。それでも透は、【途方もない午後】ではPと同じく風の話をしているときに、戻らない未来でいいからと言っているので、結果としては宇宙に行っていないけれどアイドルとして帆走準備できているのでしょう。それがたとえPありきのアイドルという選択肢だったとしても、一緒にのぼってくれるだろうと信じて。
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