【さざなみはいつも凡庸な音がする】ノクチルはどこにいる?
はじめに
いくつか最初に言いたいことがあるんですが、まずは予告のあのセリフがプロデューサーから発せられたものじゃなくて安心しました。ということが一つ。予告を見ていない人もいると思うので、以下抜粋。
本当にファンの人っていうのは あの子たちが何してたって
ただ、立って笑ってるだけだっていいんだと思います
これがどうして安心したのかということは、一旦後回しにしておきたいと思います。まぁでもこのディレクターの人も悪い人ではないですよね。行き先が同じでも向いてる方向が違う感じがひしひしと伝わってきます。また、今までどちらかといえば業界の人たちがあまりよくないような描写をされていたということもあってか、今回のは結構印象が違いましたよね。ともあれ後回しにすると言ったので後回しにします。
チルアウトさざなみ
もう一つ最初に言いたいことが、以下結構長くります。ので最初にと言いつつもはや1見出し分使います。
今回のイベントは小糸ちゃん、そして雛菜のお話でしたね。どちらがメインということでもないとは思うものの、順番としてはやはり小糸、雛菜でしょうか。では今までのノクチルのストイベはどうだったか。というと、今回ほど主役がはっきりしたものではなかったと思います。ただ、今回に比べて明らかに透と円香の心情がはっきりと描写されていました。
また、そこが今回の『さざなみはいつも凡庸な音がする』との最大の相違点だったと思います。今回心情描写なかったですよね。Pの主張の少なさも含めて、今回はノクチルのストイベとしては異質(まだ3つ目だけど)と言ってよいのではないでしょうか。
ところでさざなみとは水面にできる「小さな波」のことを指します。漢字だと漣は某戦艦で有名ですが、小波もさざなみです。あるいは細波とも書くそうです。
今回は円香の戸惑いも、透の眼差しも、Pの気持ちもありません。あるのは彼女たちの「さざなみ」だけ。そんなさざなみを見て、ディレクターは冒頭に引用した感想を持ったのかもしれません。
しかし、そもそも彼女たちは「さざなみ」であるのかもしれません。彼女たちは「ノクチル」かもしれませんが、それ以前に「幼馴染4人組」です。彼女たちの音は廊下をぱたぱたと走るような凡庸な音なんじゃないでしょうか。
ノクチルは今までもこれからも、積極的にいわゆるトップを狙うようなアイドルとしての提示はなされないでしょう。これは既存のアイドル像からの脱却、アイドルマスターが掲げるidolからの脱却ということを意味しているのだと思います。まぁこの話は以前にも何度か似たようなことをさらっと述べているのでこのくらいにしておいて。
そのような凡庸な音である彼女たちのさざなみは、しかしさざなみである以上さらうものでしかないんじゃないでしょうか。って言いつつ、透GRADなんかを思うとあまりにも表面が強すぎるなぁ、とか思ってしまうんですがさておき。
知らない輝き
「かんむり」では小糸と円香が海でゴミ拾いをしていました。普段から掃除をしているからか、ゴミが見つかりません。そこで、キラリと光るものを見つけた小糸が近づくと、そこには「王冠(かんむり)」がありました。明らかに『天塵』ラストのPの独白と被るものがあります。
そのかんむりを見て、小糸は見たことのないロゴといい、一緒にいる円香もそれをわからないといいます。そして、「私たちが知らないだけかも」と。直後に雛菜と透の場面に入れ替わり、雛菜の好きな人は楽しくてしあわせな方がいいから、雛菜と掃除楽しかった?と透に聞きます。透はそこで「おー」とだけ返すと、なんだ知らなかった~って雛菜が返事をするんですよね。いや雛菜汲み取る能力よ。さすが。
とまぁ軽くの流れを書きましたが、彼女たちには彼女たちがまだ知らない光るなにかがあるということの場面でしょう。自分で書いてて思ったんですが、別にそんなに詳しく書かなくてもよかったですねこれ。まぁいいや。
”成長”は誰のもの?
次に成長について。今回が成長をテーマにしていることは言うまでもありません。そして、エンディングではオーキシンという物体がでてきました。浅学非才の身であるので詳しくは知らないのですが、オーキシンは光を避けるように移動します。するとオーキシンは光が当たる部分と当たらない部分とで濃度に差が生じ、濃度が濃い部分がより成長します。すると光が当たらない部分がどんどん成長していくので、光が当たる方向へと結果的に屈曲するそうです。
彼女たちの光が当たらない部分、オーキシンはどこでしょうか。それは幼馴染4人であるときじゃないでしょうか。そして、幼馴染4人が成長すると、不思議と「ノクチル」として光が当たる方向へと屈曲していく。
問題はこれを成長というかどうか。そもそも成長がいいことなのかどうかということすら僕にはわかりませんが、これはまた話が脱線する予感しかないのでよいとします。
成長に関しては、透のスタンスは正直わかりませんが、雛菜に関しては明確です。彼女は彼女自身のことしかわからないという部分に立脚して、仮に成長(変化)するとしても自分がなりたいと思うようになればいいといいます。しかし一方で、小糸ちゃんがどうなりたいかは知らないけどね、なんて付け加えますが、なんかこういうとこ円香っぽいですね。やっぱ幼馴染なのかもしれない。
ただちょっと今回の雛菜は謎が残るんですよね。全部Pカード持ってないんでなんともですが、例えば「雛菜、あんまり楽しくないことって無いから大丈夫だよ~」とか、雛菜そういうスタンスなんだってちょっと驚きました。雛菜のコミュもうちょい読み直した方がいいのかもしれない。というのも、もちろんこれは雛菜が楽しみ方を知ってるという風に捉えることも可能かもしれません。一方で雛菜は自分しかわからないといいつつも、他人をすごく意識しているように思えてなりません。まぁそもそも雛菜の自分しかわからない~とかって他人を意識した末に考えに考えた結果そうなった可能性もあるので、ある意味当然なのかもしれませんが。
立って笑ってるだけ。はよくないと思います
ここで冒頭に戻ります。今回のイベントは、僕は正直そこまで楽しめませんでした。だから、ディレクターの言うファンじゃないのかもしれません。とまぁそれはともかくとして、改めて引用。
本当にファンの人っていうのは あの子たちが何してたって
ただ、立って笑ってるだけだっていいんだと思います
今回、これに関してPの解答はありませんでした。その代わりに伝えた言葉は、もっとわかりたいということ。プロデューサー自身、ノクチルがノクチルであるだけの、幼馴染であるということだけでも美しいということは『天塵』で認識しています。しかし、上に述べられたようなことに対する答えを出すことができませんでした。いや、ほんとは持ってるのかな。いずれにせよ、劇中ではありません。
ここで円香の「画面に映る以上 輝くことは、確定事項なのだと」理解したという発言が効いてきます。この円香見てるとこの間の水着円香のコミュまじでなんだったん?って疑問が消えません。セクハラするような娘には見えない。
ちなみに上の発言に関してもPは今回は為すすべありませんでした。そしてこの輝くっていうのも、やっぱり既存のアイドルが~っていう発言が脳裏をよぎります。まぁでもやっぱビジュアルいいし輝く部分はやっぱあると思いますよね。ビジュアルは正義です。かつ内面も可愛い。致し方ない。
ともあれ、Pは今回見せ場らしい見せ場がなく。最後に仕事をちゃんと取ってきたのはさすがミスター好青年です。真面目すぎるとか言われてましたけど。ただ、上に書いたようにPのとりあえずの解答として、彼女たちをもっとわからないといけないんだ、ということでしょう。
そういう意味では今回全編通して「さざなみ」のようなコミュになっていましたが、ユーザー側にもなんらかわかったことがあったんでしょうか。多分そんなわからないですよね。彼女たちもまだわかっていません。成長というのがメインテーマで、わかる・わからないと言った要素も今回結構大事な裏テーマ的なものになっていると思います。
そういえば冒頭でなんでPが言ってないでよかったかと安心したのか。最初はえ~これもしかしてPのノクチルに対する現在の肯定?これで?とか思っていたんですよね。蓋を開けてみたらちゃんとPの発言じゃなかった。だから多分ディレクターよりはプロデューサーのほうがきっとノクチルわかってますよ。きっとね。
そもそも『海へ出るつもりじゃなかったし』で精一杯生きてほしいとか言っておきながら、ただ立っていればいいだなんて、そんなこと言うはずがないですよね!信じてましたよ僕は!透GRADだってがんばりたい透に寄り添ってたし!まぁノクチルはそのままでいいとか肯定しまくってるからめっちゃ不安に思ったのは事実。よかった。
この時点での時系列はどうだかわかりませんが、P自体はノクチルは確かにそのままでいい美しさがあることはわかっていて、あとはそれを言語化さえできればいいだけなんだと思います。ディレクターはまだ表面のさざなみ、というには大きすぎましたけど、音楽番組のことしか知らず、彼女たちが輝いた誰も見ていない花火会場での大舞台を知りません。そこをどうするかが腕の見せ所だぞ。
輝きはどこにある?
以上になるのですが、予告を改めて見返していたら最後に視聴率0%なんて透が言っていました。今回他にも視聴率が2%だとかサポカのコミュで4%だとかがありました。予告するくらいだからどうなんだろうなぁ、って今ざっと考えたのですが、まだ彼女たちにとってノクチルが身についていないんじゃないかなって思います。もちろん、身につくことがいいことなのかどうかはわかりません。
オーキシンで成長した茎は光に向かって屈曲します。で、これもし間違ってたら恥ずかしいんですが、オーキシンが偏った方がぐんぐんと成長するということは、光のあたっていなかった部分が光に当たるようになるという認識で間違いないですよね。
今のノクチルはディレクターが言うように「ノクチル」として輝くことが確定事項なのでしょう。けれど、かつて『天塵』でプロデューサーが見出したように、彼女たちは彼女たちであるときこそ、本当に美しくなれるのです。
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