見出し画像

看護実習のポイント【重要な考え方について】

この記事はこれから病院実習をする看護学生さん向けの記事です。

かなり専門的な内容になりますが、「実習でなにやるの?どうすればいいの?」という人、1人にでも刺さればいいなという気持ちで書き残します。


私は大学病院勤務時代に臨床指導者を約3年担当し、新人教育をメンター代表として2年担当しました。

数多くの看護学生さんや新人看護師を教育していて思ったことを書いていきます。



病院で各科を周り実習していくと思いますが、大事なのは机上で勉強してきた看護過程を実際の患者で実践していくということです。

これを現場の看護師は毎日行うことになります。


実習ではほとんどの学生さんが看護診断を立てるまでのアセスメントにかなり苦戦して時間がかかります。

病態が分からない、必要な情報が分からない、どう書き出していいか分からないということが多いです。


ですからまず実習で行く診療科が決まったら事前学習をしましょう。

各科ごとの病名と主に使用する看護診断が書かれている本は探せばいくらでもあります。

病態生理は「病気がみえる」シリーズが特に分かりやすく、現場の看護師も結構使います。

その診療科ではどんな病名がメジャーなのか、どういう治療をするか、どんな看護診断を使うのかを見ておくだけでもかなり役に立ちます。


そして実習先で担当患者を決める際には自分が勉強してきたことを活かせる人を担当させてもらいましょう。

積極的に立候補するほうが良いです。



患者情報を収集する際のポイントです。

・現在の病気の程度、進行度はどうか

実習させてもらえるということは今は病状が安定しているという場合がほとんどです。

どのような治療をして良くなってきたのか、病状が安定しているという根拠(客観的データ、主観的データ)を集めましょう。

・今現在のその人に起こっている問題は何か

このまま病状が安定して退院に向かうにはどのような課題があるか、どういう介入が必要か考えましょう。

・病気につながるような生活習慣があったか、改善点はなにか

今までの社会背景(家族、仕事、社会的役割)はどうか、社会復帰する際に病気が影響することはあるか、退院に向けてどういう介入が必要かを考えましょう。



私が専門としていた循環器内科で具体的な例をあげます。

【心筋梗塞、60歳、男性】だとしたら

心筋梗塞がどの程度で、どういう治療をしたか、今心臓は大丈夫だろうかということをまず書き出します。

大丈夫かどうか判断するためには心筋梗塞の一般的な病態の理解は欠かせないので本で調べます。

また、病態を理解するにはバイタルサインの知識、心臓についての知識、使われている薬剤の知識は必須になってきます。

一般的な病態と患者に起こっている病態の違いを意識して個別性を出すように記録していきます。

毎日自分でバイタルサインを正確に測定する技術が必要ですし、得られた測定値をどう解釈するかが大事です。

心臓の負担を減らすために活動を制限されている場合がほとんどですのでその人の活動レベルはどうか調べ、清拭や排泄介助の看護介入が必要となるでしょう。


60歳であれば仕事をしている可能性もありますし、家族の中で大きな役割を果たしていることが考えられるので、そういった生活背景の情報収集をします。

患者から直接言葉として引き出せなくても、自分がその立場だったらどうだろう、一般的にはどうだろうと考えると理解ができます。

配偶者、子ども、孫、仕事、趣味などその人がどういう人間でどういう生活をしていたのか、

自分の健康をどのようにとらえていたのか、今後どうしていきたいと考えているか、患者自身の考えを知ることはとても重要です。


退院するには心筋梗塞を再発させないことが大事です。

今までの食生活、酒、たばこ、運動習慣の情報を集めます。

良くなるためにやめるべき習慣と、身につけるべき習慣があるかどうかを考えます。

そしてそれがその人の生活の中で実行可能であるか、可能にするにはどういう生活をしたらいいかを具体的に考える視点が大事になってきます。

あげられた改善点の中で自分が看護学生として患者にできること(患者指導)はあるのかを考えて具体的な方法を考えます。


これらをまずざっくり文章として書き出してみて、各看護診断にあてはめていくというイメージで良いかと思います。

実習記録の書き方は人それぞれです。

看護診断を立案するまでのアセスメントは2、3日で終わらせるのがベストです。

最重要と思われる看護診断を2個くらい優先してまずは書いてみることが大事。

そして2個書いたら先生や指導者にこの方向性でいいのかを確認すること。

ここにだらだら時間かけているとプランの実行、評価まで行きつかないまま実習期間が終わってしまいます。

他の優先度の低いアセスメント、診断については後々でいいと思います。


看護診断があがったら今度は具体的な計画の実施、評価です。

血圧を測る、熱を測る、清拭をするなどの看護行為は全て看護診断に基づいて根拠があって初めて実施されることです。

自分が患者にする全ての行為はどこかの看護診断に紐づけて行われる、やったことはデータとして実習記録に残し、毎日評価するということを忘れないでください。

患者の情報は毎日変わりますので、前日評価した結果を次の日の計画に反映させてどんどん良くしていきましょう。

ここまでくれば看護過程(PDCA)の完成です。



中には患者さんとうまく話せないからと実習中に悩む学生さんも多いです。

でも患者さん自身は「看護学生さんだからしょうがないよね」と優しい気持ちで見てくれていることがほとんどです。

毎日来てくれることを楽しみにしている方も多いです。

コミュニケーション能力は後々身につくので大丈夫です。

うまく話せないことでうまく情報を引き出せないこともあるかと思いますが、そういう時は非言語的コミュニケーション、五感をフル活用して向き合ってみてください。

そして先ほども書きましたが「その人の立場になって考えてみる」というくせをつけることはかなり重要です。



実習で1番大事なのは挨拶、態度、学ばせてもらっているから何かを得たい、何かこの人に還元して実習を終えたいという気持ちです。

実習では結構その人の人間性が出ます。

勝手な判断で行動したり、素直に意見を聞き入れなかったり、やれって言われたことをやってこなかったりしたらかなり怒られます。

厳しい現場の中で働いていく上で、学生の甘い気持ちを矯正する場でもあると思います。

鬼みたいな指導者や癖の強い看護師が多いし、記録物に追われるしで実習期間中は気が休まる時間はほぼないに等しいと思います。

帰宅してわーっと集中して記録物を終わらせてあとはよく眠り、休日は思いっきりストレス発散してください。




以上が実習を乗り切るための重要ポイントです。

今書き出してみても、これを限られた期間の中でこなしていくのは精神的身体的ににかなりハードだなと思います。


私は毎日成長していく学生さんを見ているのが好きでしたし、一緒になって悩んだり達成感を味わっていくのが楽しかったです。

学生さんと一緒になって学ぶことも多かったです。

実習で得た知識と技術は現場に行った際に必ず役に立つ一生の財産です。

私自身何年経っても実習で担当した患者さんのことは今でも覚えています。



ここまで長々と書いて来ましたが、今の世の中では病院実習の受け入れがかなり厳しい状況にあるという記事も読みました。

今後看護師になるための学習過程自体が大きく変わるかもしれませんね。

ただ、看護過程の基本原則が変わることはないので、常にそれを意識してやっていけば大丈夫だと思います。

この時代を生き抜いて看護師になる方々は素晴らしい!!

輝かしいナースの卵たちよ頑張れ!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?