#0百三色アトリエ「美術学ノート」
ツルの折り方を覚えていますか?
いつ折り方を覚えたのかは定かではありませんが、幼稚園の頃にはよく作って遊んでいたと思います。
その頃でしょうか、折り紙の沢山ある「色」を認識して、その中から好きな色ができました。
そしてクレヨンやクーピー、色鉛筆や絵具などの画材に触れるようになり、様々な色の組み合わせを試し、程なく「色」全てに興味を持つようになりました。
文具屋さんや画材屋さんにずらっと並んでいる色の並びは小学生の僕の心をときめかせました。
色の名前を覚えては試し、分類わけしてみたり並べ替えたり。
中学生になり明度・彩度・色相や三原色などを習い、今度は画用紙の上で混色を試行錯誤して色の持つ奥深さを知ります。
これは僕が色を好きになる原体験で、美術講師となり、「百三色アトリエ」という名前で活動するきっかけにもなりました。
「色彩学」はこのノートで取りあげたい大きなトピックのうちの一つです。
小学生中〜高学年の頃に家で車の模型を描いていた時の話です。
母に遠近感がおかしいと指摘されました。
小学生の僕には「晴天の霹靂」でした。
当時もう絵が得意という自負があり、プライドを傷付けられると同時に別次元(まさに3次元)への階段へ踏み込むきっかけとなりました。
その後、さらに上手くなるために遠近法をはじめ、様々な技法を吸収していきました。
これら「絵画技法」も一つのトピックです。
絵画技法を語るうえで、「画材」について学ぶことも多いように思います。
特に勉強という意識なく、実践的に描き方を高めていくうちに僕の「得意」は美術大学で洋画を専攻させるまでに到りました。
大学生当時、実践と経験に自信を持って絵を描いていましたが、卒業して就職で転機が訪れます。
アルバイトをしていた延長で就職したのが「画材業界」でした。
画材のリサーチ、企画、デザインなどを経験するうちに、すっかり画材好きになったのです。
画材を掘り下げて分かる表現方法に触れ、またそれをワークショップなどで伝える仕事をするうちに「教えること」にやりがいを感じたのが今の仕事に落ち着くきっかけにもなりました。
この「画材知識」も外せないトピックでしょう。
こんな美術人生の中で、もう一つ取りこぼしてしまったのが「美術史」です。
自分の作品にしか興味がいかず、有名な画家や身の周りの名作について無学であるのは驕った学生あるあるかもしれません。
今になって絵を教えるうえで必要と感じ、改めて勉強し直すとこれがとても面白いのです。
断片的だったものがつながって流れが分かり、作者のやりたかった事が伝わり、作品の見え方が変わったりもします。
職人気質の日本において、手を動かして作ることを重視する傾向のために「鑑賞」「観ること」を疎かにしている現状を実感することができました。
勉強中ではありますが僕が面白いと思った「美術史」も紹介していきたいと思います。
美術において、これらの知識は必要不可欠ではないと思っています。
実際、個人の経験と感覚的な実践で語ろうというのも美術の本質でしょう。
しかし、美術に関わるこれらの知識は作品をつくっていく上で「栄養」になることは間違いありません。
研究者や専門家でないにしてもできるだけ体系的に、それでいて親しみやすく美術に関わる知識を(仮に「美術学」という言葉に込めて)共有して一緒に楽しめたらと思います。
ツルの折り方を、もう誰に教わったのか覚えていないように、いつの間にか知っていて誰かの作品作りに役立っているようなそんなノートを書けたら嬉しいです。
百三色アトリエ 富岡広嗣(とみー先生)
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