サバ―バニズム宣言~ちょうどいい郊外にいっぱい可能性を感じた話
いわゆる脱・東京一極集中が言われている今日この頃ですが、最近都心から15キロ~30キロくらいの郊外、という場所にいろいろ縁をいただき、訪問しています。「いつでもいける距離」の、自分のテリトリーじゃない街で面白さと深さと可能性を感じている日々。遠い所には行きづらい今、あえて郊外に行くというのは結構面白い体験かもしれません。
そんなわけで国立の谷保で友人の坂根千里さんという大学生がゲストハウスを営んでいるというので行ってみました。名前は「ここたまや」。郊外型の体験を提供している面白い宿です。
「居酒屋兆治」を地で行く国立・谷保
国立から少し南に行った谷保という街は国立からバスで10分、立川から南武線でも10分くらいという場所で、中央線のメインストリームな街からは急に変化します。首都圏の駅前の特徴ですが、電車の本数がそれほどない駅でもきちんと駅前が栄えていて、駅前には「小料理 旅路」のレトロな看板が。お酒は地元・多摩のお酒「澤乃井」。これだけでときめく場所ですよ。
後から教えてもらったのですが、昔高倉健さんが主演した映画「居酒屋兆治」のモデルになった居酒屋はこのあたりなのだとか。チェックできなかったのですが、今は「婆娑羅」というお店らしいです。しかもこの話、今年遠藤憲一さん主演でNHKのドラマにもなっていたとか!もっと宣伝してもいいんじゃないの(笑)谷保!
ちゃんと飲みに行けるコミュニティがある街
駅の北側には「富士見台団地」があり、古い団地ではありますが、周囲の商店もにぎわっています。スーパーだけではなく、きちんと精肉店、青果店などが盛り上がっている場所。商店主や学生・市民・行政が一体となっNPO法人を作って活動しているそうで、一橋大学生が運営するカフェもあります。オシャレ!
国立ダイヤ街商店街は不思議なアーケードのある商店街です。上は住宅がついているんでしょうか。ここもレトロな街を生かしつつ、しっかり中のお店はバラエティ豊か。「飲み物セルフサービスで30%割引」なんて居酒屋さんもあったり。シェアハウスもあります。
良さげな居酒屋さんがたくさんある中で、牛タン・もつ焼きが美味しいとすすめられた「志ん宇」さんへ。おそらく地元の方らしい常連さんでにぎわっていました。牛タンは本当に肉厚で、大将も気さくな方です。地元でこういったお店を行きつけに持てる生活は幸せだろうなと思います。
そして坂根さんのバイト先でもある、地元で30年以上お店をやっているベテランママ、せつこさんが経営するスナック「せつこ」さんへ移動。
夜の街関係は色々と言われてもいますが、スタッフの方は全員フェイスシールド、カラオケは人に向かって歌わないなど厳しく管理していらっしゃいました。(もちろんマイクも1回ごとに消毒)
スナックってやはり地元のコミュニティプレイス。家庭のような場所でもあります。お客さんの客層も広く、私も安心して昭和歌謡を歌うことができました(笑)不要不急ということを言われることもありますが、こういう場があることで精神の安定を保てる人は多くいるのだと思います。
いつもと離れた「普通の生活」の意味
宿泊した「ここたまや」は谷保駅の南側、徒歩5分位の閑静な住宅街にあるゲストハウスです。部屋にはトイレ付、水道付き。とても綺麗に掃除された和室が寝室となっています。畳で暮らすこともなくなった今、それだけで十分な非日常。
創作活動のためにこもる・・・なんていうのも良いかもしれません。お風呂は共同シャワーのみですが、国立駅方面に行けば最近リニューアルした「鳩の湯」もありますしね。
1Fにはみんなで集まれるコモンルームが。なぜかレコードプレーヤーも。カーペンターズが流れていました。うちで眠っているレコード、今度持っていこうかな・・・なんて。ゆっくりレコードに針を落とすのは落ち着きますよね。ソファーもあったりします。
畑の朝ごはんがくれた豊かな時間
翌日は「朝から畑で朝食ツアー」のイベントがあり、朝7時には徒歩5分ほどの市民農園「はたけんぼ」へ。ここはその名の通り畑と田んぼがあって、市民のみなさんが土に触れることができる場です。ここで不定期に畑で朝ごはんを食べるイベントが開催されています。
1人の人も家族の人も、ものすごく遠い人はいませんでしたが、近隣の日野、立川といったあたりから参加している方はいっぱいいました。自転車で来られるくらいの距離がちょうどいいようです。
かき氷の前菜(?)でお迎えしていただいた後は畑で野菜の収穫!いろんな種類のトマトやナス、ピーマンなどをそのまま食べたり、ピザトースト用に収穫したり。改めて、野菜ってこうやって育てられているんだなという感謝をすることができます。
持ち込んだパンやピザ生地などに野菜とチーズをたっぷり乗せて、ダッチオーブンへ。すぐにとろけるチーズが美味しいピザトーストになります。そうそう。「加熱用トマト」というのがあったのですが、これが本当に加熱すると美味しい!崩れず、しっかり風味がでるんです。
キーワードは「歴史・文化」と「都会と農村とのつかずはなれず感」
朝ごはんの後は近所のミニツアーへ。谷保天満宮はなんと、「東日本最古の天満宮」なのだそうです。亀戸とか湯島じゃないんですよ!!建設されたのはなんと903年。1000年以上の歴史を誇ります。
菅原道真公をおまつりしてあるので、学業成就はもちろん交通安全を祈る方も多いんだとか。そして境内にはフリーダムに飛び(?)回る美しくうるさいニワトリさんたちが・・・(笑)
というのも、この辺りは非常に歴史と文化があふれる場所。国立市は「国分寺市」と「立川市」の間にあることから名前がついています。国分寺って・・・奈良時代に聖武天皇が全国に「国分寺」を建てたってアレのなごりですよ。そしてお隣の府中市は武蔵の国の国府がおかれていたのです。
今では住宅と田畑に囲まれた地域ですが、街のあちこちに色々な歴史が残っていることを感じられるのは嬉しいですね。
郊外の「振り切らない」美しさ
現代はキャラ立ちすることが求められます。チャラい系、清純派、オタク、ナチュラル・・・。ビジネスでもキャラを確立して、それをしっかり売り込んで生きていきなさいと言われます。でも人間は変わるし、対照的と思われるものが好きだったりもする。
街もそうだったりします。キラキラしすぎない。ナチュラルすぎない。そのちょうどいい所を兼ね備えているのが素敵な郊外。そんな中に、土地なりの歴史や文化とか、ちょっとした個性が光っているのがとても愛しい。
でも、それは一見さんはスルーしてしまいがちなのです。魅力を伝えてくれる人がいて、体験させてくれる人がいてこそ、郊外は宝の山なのだなあ、と感じた滞在だったのでした。
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